【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
31 / 274

31.優しい子ね、無事でよかった

しおりを挟む
 朝起きたら準備して食事、勉強部屋に移動してお絵描きなどで机の前に座る。お昼は軽く、お昼寝をしたら、目一杯遊ぶ。散歩をしたり、絵本を読んだり、一緒に何かを作ったりした。

 毎日新しいことに目を輝かせ、成長するレオンを見守る日々は平和で、これ以上ないほど幸せだ。あの無表情の旦那様が父親とは思えないわ。にこにこと笑顔で積み木を手にするレオンは、出来上がった細長い塔を自慢げに見せた。

「あら、素敵ね。お母様に説明してちょうだい」

 おおよそ何か見当がついていても、必ず説明を頼む。レオンはまだ言葉が上手ではないし、単語も知らないわ。少しずつ覚えているところだった。話す行為は、言葉を覚えるのに最適なの。聞いた言葉を繰り返すのも大事な教育よ。

 文字の読み書きや計算を覚えるのも、歴史を学ぶのもまだ先だった。今は学ぶことが楽しいと思ってもらう時期だわ。レオンは嬉しそうに積み木の塔を指差した。

「あっ……」

 レオンの指が触れた場所が、ぐらりと傾いた。倒れそうになった塔に手を伸ばしたレオンに、三角の積み木が落ちる。まだ痛みを想像できないのか、きょとんとした顔のレオン。咄嗟に積み木の塔を倒して、レオンに覆い被さった。

「お姉様?!」

 気づいたユリアーナが叫ぶ。いくつか背中に当たったが、大した痛みはなかった。それよりレオンが心配よ。

「レオン、どこか痛くない?」

「うぁ……ああぁ」

 ぽろぽろと涙を溢すレオンが、声をあげて抱きつく。しっかり抱きしめて、体を確認した。血が出ていないか、痣はないか。綺麗な黒髪を撫でながら探すも、見つからなかった。

「どこが痛いのか、お母様に教えて」

「うっ、……っく。こ、こ」

 しゃくりあげながら、レオンが指さしたのは私だった。目を見開いた私の背中へ手を伸ばそうとする。

「ありがとう。レオンはぶつかってないの?」

 こくんと縦に振られた首に、ほっとした。積み木は小さいが、子供の柔らかい手足や顔に当たれば、痣が出来たりする。私なら一日二日痛む程度だもの。天使に傷が付かなくてよかったわ。でも泣かせちゃったわね。

「レオンは優しい子ね。お母様は痛くないから、もう泣かないで」

 まだ涙で潤んでいる目の近くに、キスをする。音を立てて左右の目尻に口付けた。

「お姉様、痛くなかった?」

「大丈夫よ」

 ユリアーナが叫んだ声に、廊下を走る音が重なった。扉を開けたエルヴィン、後ろからユリアン。最後に一礼してベルントが顔を覗かせた。

「何かございましたか」

 崩れた積み木の前で、大泣きするレオンを抱きしめる私に困惑の表情を向ける。

「積み木が崩れたの。レオンは無事よ」

「奥様もご無事ですか」

「ええ」

 微笑んだ私に安心したのか、ベルントは表情を和らげた。

「この積み木の角をもう少し丸くして、それから色を塗ってもらえるかしら」

「はい。そのように手配いたします」

 積み木は箱に納められ、外へ運ばれた。困ったのはこの後よ。レオンが私から離れなくなったの。わずかな時間でも触れていないと泣き出す。そんなに怖がらせてしまったのかしら。

「安心して、レオン。ずっと一緒にいるわ」

 今はレオンを安心させるのが先ね。抱いたまま移動し、ぽんぽんと背中を叩いて眠らせ、起きるまで隣にいる。いえ、起きても一緒だった。

 数日で落ち着くと思うわ。好きにさせてあげましょう。私の言葉で、執事も侍女も協力してくれた。






*********************
祝!コミカライズ(=´∇`=)にゃん
【要らない悪役令嬢、我が国で引き取りますわ ~優秀なご令嬢方を追放だなんて愚かな真似、国を滅ぼしましてよ?~】
Renta!様で先行配信開始!!ε-(´∀`*)ホッ 
蛇足様の漫画で息を吹き込まれたブリュンヒルト様をご覧あれ!
しおりを挟む
感想 640

あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

皇太女の暇つぶし

Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。 「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」 *よくある婚約破棄ものです *初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ

青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。 今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。 婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。 その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。 実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

美しい容姿の義妹は、私の婚約者を奪おうとしました。だったら、貴方には絶望してもらいましょう。

久遠りも
恋愛
美しい容姿の義妹は、私の婚約者を奪おうとしました。だったら、貴方には絶望してもらいましょう。 ※一話完結です。 ゆるゆる設定です。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

国境に捨てられたら隣国の若き公爵に拾われました

宵闇 月
恋愛
ゲームの悪役令嬢に転生し、国境に捨てられたら隣国の公爵にお持ち帰りされました。

処理中です...