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22.優しい子ね
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土足禁止はいいことがたくさん。掃除は楽になるし、幼子が遊ぶのに硬い靴は危険よ。歩き方が不安定なレオンは、素足で歩く練習から始めるの。
ほんのりとだけど、私は別の世界の記憶がある。文明が発達した世界で、ごく普通に生きてきた。その経験と知識が、今の私を作っている。ひけらかすつもりはないけれどね。
素足で歩くことは、足の指の使い方を覚える方法の一つだった。きちんと大地を踏み締めて蹴る、当たり前の所作を身につけるには素足が一番! 外で芝の上を歩いてみるのも楽しそうだけれど、万が一にも何かを踏んでケガしたら痛いもの。
まずはふらつかずに歩けるよう、練習あるのみよ。きちんと順番立てて説明すれば、フランクやベルントは納得した。侍女長のイルゼに選ばれた侍女二人が、私の専属となった。マーヤとリリーよ。二人とも男爵家の三女や次女で、礼儀作法も問題ないと推薦された。
「奥様、果物はどうなさいますか」
食後のデザートとして用意された果物は、大皿に盛ってある。取り分けて食べるように小皿やフォークも運ばれた。
「こちらへ置いて」
テーブルに並べてもらう。ソファー用のローテーブルに手をつき、レオンは嬉しそうに笑った。色とりどりの果物が、綺麗に飾り付けられている。
お礼を言ってから、ガラスの取り皿をレオンの前に置いた。
「欲しいのを取っていいわよ、レオン」
「おかしゃまは?」
何が欲しい? 尋ねるレオンにふふっと頬が緩む。優しい子ね。エルヴィンも双子も、笑顔だった。小さい子から先に選ぶのは、我が家のルールだ。双子は今まで優先して選べる立場だったが、兄や姉として待つ気だろう。本当は叔父と叔母なんだけれど。
「そうね、レオンが美味しかった物を頂戴」
「おいちぃ……これ!」
お洒落にカットされた苺を選ぶ。自分の前に置かれたガラスのお皿に載せるため、右手にフォークを握り……左手で掴んだ。そっと潰さないよう注意しながら、お皿に並べる。隣に緑の葡萄も置いた。
「どうじょ!」
「ありがとう、レオン」
二人で一緒に手をつける。絨毯の上に座り、膝に半分乗り上げたレオンと食べた。レオンが選んだのを確かめ、妹のユリアーナ、続いてユリアン、エルヴィンの順番でお皿に果物を載せた。お父様が一番最後にカトラリーで取り分ける。
仲良く味わい、ここでお父様がようやく口を開いた。
「結婚式の扱いを見て心配だったが、屋敷の使用人に認められているようで安心したよ。ところで、公爵閣下は本当に帰らないのかい?」
ある程度、手紙で知らせておいたので、お父様は事情を知っている。隠すような内容でもないので、肯定した。
「ええ、不在なので自由にさせていただいてるわ」
お父様の視線が、部屋の扉の脇で控える執事ベルントへ向かう。あっさりと頷かれ、複雑そうな顔になった。
「私はレオンがいますから、旦那様はずっと留守で構いません」
強がりではない本音だ。声の調子から正確に判断した父は溜め息をつき、ベルントは苦笑いを浮かべた。
ほんのりとだけど、私は別の世界の記憶がある。文明が発達した世界で、ごく普通に生きてきた。その経験と知識が、今の私を作っている。ひけらかすつもりはないけれどね。
素足で歩くことは、足の指の使い方を覚える方法の一つだった。きちんと大地を踏み締めて蹴る、当たり前の所作を身につけるには素足が一番! 外で芝の上を歩いてみるのも楽しそうだけれど、万が一にも何かを踏んでケガしたら痛いもの。
まずはふらつかずに歩けるよう、練習あるのみよ。きちんと順番立てて説明すれば、フランクやベルントは納得した。侍女長のイルゼに選ばれた侍女二人が、私の専属となった。マーヤとリリーよ。二人とも男爵家の三女や次女で、礼儀作法も問題ないと推薦された。
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食後のデザートとして用意された果物は、大皿に盛ってある。取り分けて食べるように小皿やフォークも運ばれた。
「こちらへ置いて」
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お礼を言ってから、ガラスの取り皿をレオンの前に置いた。
「欲しいのを取っていいわよ、レオン」
「おかしゃまは?」
何が欲しい? 尋ねるレオンにふふっと頬が緩む。優しい子ね。エルヴィンも双子も、笑顔だった。小さい子から先に選ぶのは、我が家のルールだ。双子は今まで優先して選べる立場だったが、兄や姉として待つ気だろう。本当は叔父と叔母なんだけれど。
「そうね、レオンが美味しかった物を頂戴」
「おいちぃ……これ!」
お洒落にカットされた苺を選ぶ。自分の前に置かれたガラスのお皿に載せるため、右手にフォークを握り……左手で掴んだ。そっと潰さないよう注意しながら、お皿に並べる。隣に緑の葡萄も置いた。
「どうじょ!」
「ありがとう、レオン」
二人で一緒に手をつける。絨毯の上に座り、膝に半分乗り上げたレオンと食べた。レオンが選んだのを確かめ、妹のユリアーナ、続いてユリアン、エルヴィンの順番でお皿に果物を載せた。お父様が一番最後にカトラリーで取り分ける。
仲良く味わい、ここでお父様がようやく口を開いた。
「結婚式の扱いを見て心配だったが、屋敷の使用人に認められているようで安心したよ。ところで、公爵閣下は本当に帰らないのかい?」
ある程度、手紙で知らせておいたので、お父様は事情を知っている。隠すような内容でもないので、肯定した。
「ええ、不在なので自由にさせていただいてるわ」
お父様の視線が、部屋の扉の脇で控える執事ベルントへ向かう。あっさりと頷かれ、複雑そうな顔になった。
「私はレオンがいますから、旦那様はずっと留守で構いません」
強がりではない本音だ。声の調子から正確に判断した父は溜め息をつき、ベルントは苦笑いを浮かべた。
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