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12.子供は同じが大好き
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「ぼく、これにする」
選んだのは、オレンジが入ったスコーンだった。匂いを嗅いだり、隣と比べたりして、一番小さいのを選んだのね。
「わかったわ。これね」
レオンが指で示したスコーンを取り出し、指先にグッと力を入れる。弟妹と食べる林檎も砕く指の力を見よ! って、そこまでしたら粉々だけど。侍女が用意したお皿に置く時に、ぱっくり二つに割れた。見事なタイミングだわ。
侍女も心得た様子で、もう一枚のお皿を差し出す。割れた半分をレオンへ、残りを私の前に置いた。その間に用意されたジャムやお茶を一緒に差し出す。
「ふたっつ」
「ええ、割れてしまったみたい。お母様の失敗だわ、こっちを貰ってもいいかしら? レオンと同じのが食べたいの」
「おなじ!」
目を輝かせて、同じを連発する。幼い子って、同じとか一緒が好きよね。大人になっても、恋人や伴侶とお揃いにしたがるから、変わらないけど。ふふっと笑い、二人でジャムを前に悩んだ。
ミルクジャムをたっぷり塗るレオンは、垂れるたびにスコーンそっちのけで首を傾ける。手に垂れた分を舐めとるけれど、今度は傾けたせいで反対側に垂れた。苦戦している姿も可愛いわ。
こういう失敗もいい経験になる。一つ目は好きにさせた。両手がベトベトになって、困ったような顔で舐める。子猫みたいだった。私は蜂蜜を少し垂らし、二口で終わらせる。
侍女から受け取ったナプキンで、丁寧に指と口の周りを拭いた。綺麗になったと喜ぶレオンは、まだ食べると笑顔をみせる。籠を覗いて、今度はベリーを選んだ。
色の鮮やかな方が好きなのかしら。オレンジは蜂蜜漬けの皮が見えていたし、ベリーはほんのり赤紫に染まっている。紅茶は見た目が黒い粒だから、倦厭されちゃったかな。
いろいろ推測しながら、ベリーを取り出して、お皿の上に置いた。
「半分、欲しいの」
お願いする形を取ると、拭いたばかりの小さな手がスコーンを両手で掴んだ。ぐっと力を入れる。さほど硬くない焼き菓子は、ほろりと割れた。ただ、大きさがかなり違う。レオンの左手は二割ほど、右手は大きかった。三角形の先端が折れてしまった感じだ。
「こっち、どぉぞ」
大きい方を差し出すので、お皿に受け取ってから尋ねる。
「大きい方じゃなくていいの?」
「うん、おかあさまはおおきいから」
私の方が体も口も大きいから、たくさん食べてと気遣う。こういうのに弱いのよ。ほろりと来ちゃうじゃない。目が潤みそうなのを瞬きで誤魔化していると、レオンの後ろの侍女はそっと涙を拭っていた。
「ありがとう」
お礼を言って、またジャムを眺める幼子の頭を撫でた。嬉しそうに笑い、今度は苺の赤いジャムを選ぶ。やっぱり鮮やかな色が好きみたいね。今度、お絵描きに誘ってみよう。そう思いながら、ベリーのスコーンに苺のジャムを載せるレオンを見守った。
ところで、ベリー同士って美味しいのかしら。反発はしないと思うけれど……美味しそうに頬張るレオンに好奇心を刺激され、私は一口目を苺ジャム載せにした。
「おなじ!」
同じに食べたと喜ぶレオンに、キュンとしながらしっかり味わう。うん、苺の味しかしないわ。
選んだのは、オレンジが入ったスコーンだった。匂いを嗅いだり、隣と比べたりして、一番小さいのを選んだのね。
「わかったわ。これね」
レオンが指で示したスコーンを取り出し、指先にグッと力を入れる。弟妹と食べる林檎も砕く指の力を見よ! って、そこまでしたら粉々だけど。侍女が用意したお皿に置く時に、ぱっくり二つに割れた。見事なタイミングだわ。
侍女も心得た様子で、もう一枚のお皿を差し出す。割れた半分をレオンへ、残りを私の前に置いた。その間に用意されたジャムやお茶を一緒に差し出す。
「ふたっつ」
「ええ、割れてしまったみたい。お母様の失敗だわ、こっちを貰ってもいいかしら? レオンと同じのが食べたいの」
「おなじ!」
目を輝かせて、同じを連発する。幼い子って、同じとか一緒が好きよね。大人になっても、恋人や伴侶とお揃いにしたがるから、変わらないけど。ふふっと笑い、二人でジャムを前に悩んだ。
ミルクジャムをたっぷり塗るレオンは、垂れるたびにスコーンそっちのけで首を傾ける。手に垂れた分を舐めとるけれど、今度は傾けたせいで反対側に垂れた。苦戦している姿も可愛いわ。
こういう失敗もいい経験になる。一つ目は好きにさせた。両手がベトベトになって、困ったような顔で舐める。子猫みたいだった。私は蜂蜜を少し垂らし、二口で終わらせる。
侍女から受け取ったナプキンで、丁寧に指と口の周りを拭いた。綺麗になったと喜ぶレオンは、まだ食べると笑顔をみせる。籠を覗いて、今度はベリーを選んだ。
色の鮮やかな方が好きなのかしら。オレンジは蜂蜜漬けの皮が見えていたし、ベリーはほんのり赤紫に染まっている。紅茶は見た目が黒い粒だから、倦厭されちゃったかな。
いろいろ推測しながら、ベリーを取り出して、お皿の上に置いた。
「半分、欲しいの」
お願いする形を取ると、拭いたばかりの小さな手がスコーンを両手で掴んだ。ぐっと力を入れる。さほど硬くない焼き菓子は、ほろりと割れた。ただ、大きさがかなり違う。レオンの左手は二割ほど、右手は大きかった。三角形の先端が折れてしまった感じだ。
「こっち、どぉぞ」
大きい方を差し出すので、お皿に受け取ってから尋ねる。
「大きい方じゃなくていいの?」
「うん、おかあさまはおおきいから」
私の方が体も口も大きいから、たくさん食べてと気遣う。こういうのに弱いのよ。ほろりと来ちゃうじゃない。目が潤みそうなのを瞬きで誤魔化していると、レオンの後ろの侍女はそっと涙を拭っていた。
「ありがとう」
お礼を言って、またジャムを眺める幼子の頭を撫でた。嬉しそうに笑い、今度は苺の赤いジャムを選ぶ。やっぱり鮮やかな色が好きみたいね。今度、お絵描きに誘ってみよう。そう思いながら、ベリーのスコーンに苺のジャムを載せるレオンを見守った。
ところで、ベリー同士って美味しいのかしら。反発はしないと思うけれど……美味しそうに頬張るレオンに好奇心を刺激され、私は一口目を苺ジャム載せにした。
「おなじ!」
同じに食べたと喜ぶレオンに、キュンとしながらしっかり味わう。うん、苺の味しかしないわ。
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