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165.もっと愛してくださいね(SIDEベアトリス)
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*****SIDE ベアトリス
先日読んだ恋愛小説の中に、気になる一文がありました。主人公とは直接関係ない方ですが、妊娠中は夫との触れ合いがないので浮気されても泣き寝入りするお話です。その部分を読んだ直後は特に気にしませんでしたが、少しして横になっている時に思い出しました。
エリクは毎晩私を抱いて、とても大切にしてくれました。もちろん抱けない日も、一緒のベッドで寝ています。座学では「若い殿方は気力と精力が溢れている」と習いましたが、その通りです。なのに赤子ができたと知った途端、キス以外の接触が途絶えました。
大切そうに腹部を撫でてくれるだけ。安定するまで性交渉できないのは知っていますが、あんなに求めていたエリクは我慢できるのでしょうか。不安に揺らいで、思わず尋ねていました。側妃を迎えるのですか、と。
見る間に顔色の変わったエリクに詰め寄られ、どんな美女相手でも反応しないと断言されました。それはそれで問題だと思いますけれど。その後悲しそうに俯いてしまい、ひどく悪いことを口にしたのだと反省しましたわ。愛する人を疑うなんて、私は罪深いですね。
謝罪した私に、エリクは「溺れるほど愛するから覚悟して」と嬉しくも恐ろしい予言をしました。断言された夜から、エリクの行動が変わったのです。熱いキスをかわし、腹部を撫でて抱き締めて眠る――その習慣が一変しました。
キスまでは同じです。するりと脱がせ、胸に赤い痕を刻み、腹部を愛おしそうに撫でて口付けるのです。逃げようとした足の間に指が入り込み、高めて熱を吐き出させました。我慢できずに達した私の足で挟んだエリクは硬く、逞しく……彼が熱を吐き出すまで私は抱き合う。こんな触れ合いがあるのだと、初めて知りました。これは座学で学んでおりません。
私の体に体重をかけないよう気遣うエリクの姿に、深い愛情を感じました。こんな風に妻となった女性を愛してくれる男性もいるのですね。恋愛小説のヒロインより愛されている自信が付きました。
「おはよう、トリシャ」
毎朝、そう微笑んで私の銀髪に唇を寄せるあなた。柔らかく何度も頬を撫で、腹部の我が子にも気遣う人。かつての婚約者では得られなかった幸せを一身に浴びて、私は穏やかな気持ちで微笑むことが出来ます。
「おはようございます、エリク。起きるのを手伝っていただけますか?」
だいぶ大きくなってきた腹部を撫でて、甘えてみた。本当は自分で起きられるのですが、エリクに抱き締めて欲しかったのです。
「もちろんだよ、僕の大切な小鳥。首に手を回して」
言われるまま首に触れ、抱き起こしてもらいました。そろそろソフィが顔を見せる時間ですね。慣れた様子で私の夜着を直すエリクの姿は、きっと私しか知らない。大陸のほとんどの国を支配下に置く皇帝陛下が、こんなに妻を大切にして、我が子を待ち望んでいるなんて――私しか知らなくていいですわ。
愛されすぎて息も出来なくなるほど……もっと私を愛してくださいね。
先日読んだ恋愛小説の中に、気になる一文がありました。主人公とは直接関係ない方ですが、妊娠中は夫との触れ合いがないので浮気されても泣き寝入りするお話です。その部分を読んだ直後は特に気にしませんでしたが、少しして横になっている時に思い出しました。
エリクは毎晩私を抱いて、とても大切にしてくれました。もちろん抱けない日も、一緒のベッドで寝ています。座学では「若い殿方は気力と精力が溢れている」と習いましたが、その通りです。なのに赤子ができたと知った途端、キス以外の接触が途絶えました。
大切そうに腹部を撫でてくれるだけ。安定するまで性交渉できないのは知っていますが、あんなに求めていたエリクは我慢できるのでしょうか。不安に揺らいで、思わず尋ねていました。側妃を迎えるのですか、と。
見る間に顔色の変わったエリクに詰め寄られ、どんな美女相手でも反応しないと断言されました。それはそれで問題だと思いますけれど。その後悲しそうに俯いてしまい、ひどく悪いことを口にしたのだと反省しましたわ。愛する人を疑うなんて、私は罪深いですね。
謝罪した私に、エリクは「溺れるほど愛するから覚悟して」と嬉しくも恐ろしい予言をしました。断言された夜から、エリクの行動が変わったのです。熱いキスをかわし、腹部を撫でて抱き締めて眠る――その習慣が一変しました。
キスまでは同じです。するりと脱がせ、胸に赤い痕を刻み、腹部を愛おしそうに撫でて口付けるのです。逃げようとした足の間に指が入り込み、高めて熱を吐き出させました。我慢できずに達した私の足で挟んだエリクは硬く、逞しく……彼が熱を吐き出すまで私は抱き合う。こんな触れ合いがあるのだと、初めて知りました。これは座学で学んでおりません。
私の体に体重をかけないよう気遣うエリクの姿に、深い愛情を感じました。こんな風に妻となった女性を愛してくれる男性もいるのですね。恋愛小説のヒロインより愛されている自信が付きました。
「おはよう、トリシャ」
毎朝、そう微笑んで私の銀髪に唇を寄せるあなた。柔らかく何度も頬を撫で、腹部の我が子にも気遣う人。かつての婚約者では得られなかった幸せを一身に浴びて、私は穏やかな気持ちで微笑むことが出来ます。
「おはようございます、エリク。起きるのを手伝っていただけますか?」
だいぶ大きくなってきた腹部を撫でて、甘えてみた。本当は自分で起きられるのですが、エリクに抱き締めて欲しかったのです。
「もちろんだよ、僕の大切な小鳥。首に手を回して」
言われるまま首に触れ、抱き起こしてもらいました。そろそろソフィが顔を見せる時間ですね。慣れた様子で私の夜着を直すエリクの姿は、きっと私しか知らない。大陸のほとんどの国を支配下に置く皇帝陛下が、こんなに妻を大切にして、我が子を待ち望んでいるなんて――私しか知らなくていいですわ。
愛されすぎて息も出来なくなるほど……もっと私を愛してくださいね。
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