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23.素敵な騎士様からいただきましたの
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馬車が一番足が遅いため、周囲を伯父様の軍が守る形で移動します。その分だけ荷物が積めるので、大所帯の野営も問題なく過ごせました。野生の兎が遊ぶ原っぱで食事をして、伯父様の領地であるメーダ伯爵家に入ります。
アロルド伯父様は結婚しておられません。そのため、メーダ伯爵家の家督は分家の中から選ぶ予定になっています。現時点で3人ほどの少年が候補に挙がっており、伯父様の厳しい教育に耐えているそうです。お迎えに出てくれた彼らに微笑みかけて一礼し、私はお父様と一緒に与えられた部屋で寛ぎました。
ここでランベルト達が到着するのを待つつもりです。家の一切を取り仕切る執事が最後に家を出る。彼は馬に乗ってこちらに向かっているでしょう。その間にゆっくり休むつもりでした。伯父様はなぜかピリピリして、釣られたのか屋敷内も緊張感が漂っています。
「お父様、伯父様はどうなさったのでしょうか」
「心配なのだろう。ようやく本家の大切な娘が戻ったのだから、安全に過ごして欲しいのではないか?」
お父様、何か隠しておられますね。厳しかった王子妃教育で身に着けた教養以外に、こういった交渉面での経験や勘は自信がありました。じっと見つめますが、お父様は笑顔で私の目を見つめ返します。そこまでして隠したいのなら、尋ねることはございません。お任せします。
目を逸らした私は、運ばれたドレスの中から紫の濃淡が美しいものを選びました。体に当てて、裾を翻してくるりと回ります。
「今夜はこれを着ようと思いますの」
「瞳の色に合わせたドレスだね、よく似合っている。誰がプレゼントしたのかな?」
元婚約者は私にドレスを贈りませんでした。ですから私が持っているドレスは、お父様が贈ってくださったものばかりです。直接顔を合わせず仕立てた服であっても、お父様は色や形を把握しているようでした。執事のランベルトが知らせたのでしょう。
着用した私の肖像画を贈り返したこともありました。そのお父様の記憶にないドレスですもの。気になるでしょう? うふふ……笑みが零れます。
「素敵な騎士様からいただきましたの」
「騎士!? どこの誰だ? いや、家柄など関係ない。すぐに連れてきなさい!」
お父様が慌てた様子で立ち上がったところに、侍女が茶菓子をテーブルに置きました。左側の扉が開き、紫のドレスを贈った素敵な騎士様が登場です。まるでタイミングを合わせたみたいで、くすくすと笑ってしまいました。
「こちらの騎士様ですわ」
「……あ、兄上!?」
「なんだ。どうした……ああ、そのドレスを着てくれるのか。嬉しいことだ、レディ。ぜひエスコートの栄誉もいただきたいな」
「お父様がお許しくだされば、ぜひ」
後ろで合図を貰った侍女が足早に出ていく。きっと厨房に夕食の食材変更ね。だって伯父様は上機嫌な日は鴨肉を好むから、今夜は鴨肉のローストだわ。
着替えて降りたテーブルで、軽くワインに口を付けてオードブルを終える。スープやサラダを挟んで、メインはやっぱり鴨のロースト。それも立派な丸ごとだった。切り分ける伯父様の手際の良さに微笑む私の横で、お父様が少し笑顔を引きつらせる。
大丈夫よ、伯父様の腕は折り紙付きですもの。誰より上手に捌いてくださるわ。
アロルド伯父様は結婚しておられません。そのため、メーダ伯爵家の家督は分家の中から選ぶ予定になっています。現時点で3人ほどの少年が候補に挙がっており、伯父様の厳しい教育に耐えているそうです。お迎えに出てくれた彼らに微笑みかけて一礼し、私はお父様と一緒に与えられた部屋で寛ぎました。
ここでランベルト達が到着するのを待つつもりです。家の一切を取り仕切る執事が最後に家を出る。彼は馬に乗ってこちらに向かっているでしょう。その間にゆっくり休むつもりでした。伯父様はなぜかピリピリして、釣られたのか屋敷内も緊張感が漂っています。
「お父様、伯父様はどうなさったのでしょうか」
「心配なのだろう。ようやく本家の大切な娘が戻ったのだから、安全に過ごして欲しいのではないか?」
お父様、何か隠しておられますね。厳しかった王子妃教育で身に着けた教養以外に、こういった交渉面での経験や勘は自信がありました。じっと見つめますが、お父様は笑顔で私の目を見つめ返します。そこまでして隠したいのなら、尋ねることはございません。お任せします。
目を逸らした私は、運ばれたドレスの中から紫の濃淡が美しいものを選びました。体に当てて、裾を翻してくるりと回ります。
「今夜はこれを着ようと思いますの」
「瞳の色に合わせたドレスだね、よく似合っている。誰がプレゼントしたのかな?」
元婚約者は私にドレスを贈りませんでした。ですから私が持っているドレスは、お父様が贈ってくださったものばかりです。直接顔を合わせず仕立てた服であっても、お父様は色や形を把握しているようでした。執事のランベルトが知らせたのでしょう。
着用した私の肖像画を贈り返したこともありました。そのお父様の記憶にないドレスですもの。気になるでしょう? うふふ……笑みが零れます。
「素敵な騎士様からいただきましたの」
「騎士!? どこの誰だ? いや、家柄など関係ない。すぐに連れてきなさい!」
お父様が慌てた様子で立ち上がったところに、侍女が茶菓子をテーブルに置きました。左側の扉が開き、紫のドレスを贈った素敵な騎士様が登場です。まるでタイミングを合わせたみたいで、くすくすと笑ってしまいました。
「こちらの騎士様ですわ」
「……あ、兄上!?」
「なんだ。どうした……ああ、そのドレスを着てくれるのか。嬉しいことだ、レディ。ぜひエスコートの栄誉もいただきたいな」
「お父様がお許しくだされば、ぜひ」
後ろで合図を貰った侍女が足早に出ていく。きっと厨房に夕食の食材変更ね。だって伯父様は上機嫌な日は鴨肉を好むから、今夜は鴨肉のローストだわ。
着替えて降りたテーブルで、軽くワインに口を付けてオードブルを終える。スープやサラダを挟んで、メインはやっぱり鴨のロースト。それも立派な丸ごとだった。切り分ける伯父様の手際の良さに微笑む私の横で、お父様が少し笑顔を引きつらせる。
大丈夫よ、伯父様の腕は折り紙付きですもの。誰より上手に捌いてくださるわ。
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