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94.不法侵入者、発見よ
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無礼講の宴会は盛り上がった。あまりの盛況ぶりに、国王ご夫妻を見失う。上質だが目立ちにくい服をお召しの二人は、平民が集まる庭の会場へ飛び込んだ。
騎士団長のソイニネン伯爵が追いかけたものの、きょろきょろと忙しない。手伝ってあげることにして、二階のテラスへ向かった。建物の一階部分にある大広間といくつかの客間は解放したが、それ以外は立ち入り禁止だ。使用人も宴会に参加したため、屋敷の二階は静かだった。
私の結婚式で手を振ったテラスから眺め、手で指示を出す。左側の一際大きな集団に埋もれているのが国王陛下。王妃様はムスコネン公爵夫人と一緒に、噴水近くで寛いでいた。方向を指し示して騎士達を誘導する。
すぐ捕まえる必要はないけれど、居場所は把握しておかないとね。護衛のお仕事も兼ねて参加しているんだもの。お二人ももう少し考えて動いてくださればいいのに。それぞれが護衛対象を見つけたのを確かめ、下で手を振るルーカス様に気づく。
「ルーカス様」
離れたテーブルでリーコネン子爵夫妻、ハンナ達を発見して笑う。降りようか、そう思った直後……奇妙な動きをする男達を見つけた。凝視する私の様子に、ハンナが夫の腕を叩く。それを目の端に捉えながら、私はきらりと光った彼らの手元に釘付けだった。
あれって、刃物? こんな場所で! お祝いの日に! なんてことなの? 占って調べておけばよかった。元王女様の結婚だもの。横槍が入る可能性があったのに。
自分を罵りながら階段を駆け降りる。階段下で手を広げるルーカス様、数段を飛ばして宙を舞った。怖さは感じている。もし間に合わなかったら……と。
「ルーカス様、侵入者です。あちらの窓、っ?!」
食事を用意した広間を指差した私の耳に、花瓶の倒れる音が聞こえた。あれって、私が動かした花瓶? おおよその場所を説明しながら、スカートを摘んで走る。同じように駆けつけたハンナが、夫エサイアス様に「頑張って!」と声をかけた。
笑顔で頷いた美形は、すぐさま剣の柄に手を載せた。触れる柄をしっかり握るが、まだ抜かない。後ろの窓を施錠したはずなのに、揺れるはずのないカーテンが動いた。
「曲者だ!」
叫んだエサイアス様の抜いた剣が、カーテンに刺さる。呻き声がして、カーテンが引き裂かれた。転がって倒れた男の腰に赤い血が滲む。用意した花は床に散らばるし、前日から用意した料理も台無しじゃないの!
怒りが突き抜け、私は近くのテーブルにあった燭台を掴んだ。火を消した蝋燭をすべて抜き、前に構える。と、後ろから腕を掴まれた。
「宰相夫人、それは我々の仕事だ」
外にいると思っていたソイニネン伯爵だ。警護対象の王族を放って駆けつけたの? と思ったら、陛下がご一緒だった。いえ、腕を掴んで無理やり連れてきたみたい。駆けつけるために、警護対象を走らせるなんて。
おかしくなって吹き出した私を、ルーカス様が抱き締める。動けなくなった上、武器にしようとした燭台も奪われた。まあ、私が燭台を振り回したところで……相手に届かなかったのは間違いないけれど。
騎士団長のソイニネン伯爵が追いかけたものの、きょろきょろと忙しない。手伝ってあげることにして、二階のテラスへ向かった。建物の一階部分にある大広間といくつかの客間は解放したが、それ以外は立ち入り禁止だ。使用人も宴会に参加したため、屋敷の二階は静かだった。
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すぐ捕まえる必要はないけれど、居場所は把握しておかないとね。護衛のお仕事も兼ねて参加しているんだもの。お二人ももう少し考えて動いてくださればいいのに。それぞれが護衛対象を見つけたのを確かめ、下で手を振るルーカス様に気づく。
「ルーカス様」
離れたテーブルでリーコネン子爵夫妻、ハンナ達を発見して笑う。降りようか、そう思った直後……奇妙な動きをする男達を見つけた。凝視する私の様子に、ハンナが夫の腕を叩く。それを目の端に捉えながら、私はきらりと光った彼らの手元に釘付けだった。
あれって、刃物? こんな場所で! お祝いの日に! なんてことなの? 占って調べておけばよかった。元王女様の結婚だもの。横槍が入る可能性があったのに。
自分を罵りながら階段を駆け降りる。階段下で手を広げるルーカス様、数段を飛ばして宙を舞った。怖さは感じている。もし間に合わなかったら……と。
「ルーカス様、侵入者です。あちらの窓、っ?!」
食事を用意した広間を指差した私の耳に、花瓶の倒れる音が聞こえた。あれって、私が動かした花瓶? おおよその場所を説明しながら、スカートを摘んで走る。同じように駆けつけたハンナが、夫エサイアス様に「頑張って!」と声をかけた。
笑顔で頷いた美形は、すぐさま剣の柄に手を載せた。触れる柄をしっかり握るが、まだ抜かない。後ろの窓を施錠したはずなのに、揺れるはずのないカーテンが動いた。
「曲者だ!」
叫んだエサイアス様の抜いた剣が、カーテンに刺さる。呻き声がして、カーテンが引き裂かれた。転がって倒れた男の腰に赤い血が滲む。用意した花は床に散らばるし、前日から用意した料理も台無しじゃないの!
怒りが突き抜け、私は近くのテーブルにあった燭台を掴んだ。火を消した蝋燭をすべて抜き、前に構える。と、後ろから腕を掴まれた。
「宰相夫人、それは我々の仕事だ」
外にいると思っていたソイニネン伯爵だ。警護対象の王族を放って駆けつけたの? と思ったら、陛下がご一緒だった。いえ、腕を掴んで無理やり連れてきたみたい。駆けつけるために、警護対象を走らせるなんて。
おかしくなって吹き出した私を、ルーカス様が抱き締める。動けなくなった上、武器にしようとした燭台も奪われた。まあ、私が燭台を振り回したところで……相手に届かなかったのは間違いないけれど。
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