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81.お祝いの日にやめてよね
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朝食の席で確認したら、あっさり教えてもらえた。ラッピングも洗濯もアイロンも、侯爵家の侍女さんの手によるもの。ルーカス様は眠った私からハンカチを回収し、彼女達に渡しただけだと笑った。
ずっと徹夜続きなので、侍女さん達に心配させていたようだ。気づいて彼女らに任せる辺り、優秀な宰相閣下だ。やっぱり部下がたくさんいる人は、気配りが上手なのだろう。感心しながら食事を済ませる。
今日の主役は花嫁のハンナ、花婿のエサイアス様だ。私達は場所を提供したり、ドレス代を支払ったりしただけ。協力者という立ち位置だった。エサイアス様の実家であるニスカネン侯爵家も参加する。ハンナの実家からも家族が駆けつけた。
私も万全の手配をしている。事前に執事アルベルトに、細かな指示を出した。準備は完璧なはず。驚かせちゃうんだからね。
「マイラやアルベルトは到着した?」
食後の果物を口に入れる。美しく切られた柑橘を口に入れ、甘さより酸っぱさに顔を歪めた。うっ、酸っぱい。口直しに、隣の甘い葡萄を放り込む。百面相をする私を興味深そうに見つめながら、ルーカス様は柑橘に蜂蜜を垂らした。ずるい……。
「今朝早く到着したので、休ませている」
「ありがとうございます」
完璧かな。花嫁の着替えの手伝いを申し出たら「不器用なんですから、諦めてください」とハンナ自身に止められた。自覚はあるけど、手伝いくらいできると思ったのに。
仕方なく、私は自分の着替えに専念となった。花嫁ではないので、肌磨きからスタートしないのは助かる。軽く汗を流して着替え、お化粧と髪結い、お飾りの装着くらい?
「着替えてきます」
「ああ、そろそろ僕も準備しよう」
どうしたって、女性の方が準備に時間がかかる。先に立ち上がって、食堂を退室した。ようやく案内なしで迷わなくなった屋敷だが、侍女達と合流して賑やかに自室へ引き上げた。
結婚後は、中央に寝室を挟んだ続き部屋を使用している。部屋に入って左の扉を開ければ、お風呂やクローゼットに繋がる。逆に右の扉を開けたら、ルーカス様と一緒の寝室だった。彼の私室は、寝室を挟んだ向こう側にある。
いつも通りにドレスを用意していた侍女が「きゃー」と悲鳴をあげた。衣装室の中だ。
「どうしたの? きゃぁあ!」
「え?!」
虫でもいたのかと様子を見に行った侍女も悲鳴をあげ、ここで別の侍女が扉の外へ声をかけた。
「誰か! 来て」
叫んだ侍女と二人で、じりじりと後ろへ下がる。ルーカス様の寝室へ逃げるべき? でも……迷う私の視線が左右に忙しなく向けられる。決める前に、廊下の扉が開いた。
緊急事態なので、騎士でも開けられるけれど……ルーカス様が飛び込む。後ろに騎士が二人もいた。震える侍女の手を引いて、そちらへ駆け寄る。ここが一番安全だわ。
剣の柄に手をかける騎士二人が、ルーカス様の前に出た。身支度の途中だったルーカス様は、シャツの前をはだけている。色っぽいな……うん、私より美人だ。
「っ! 貴様、どこから忍び込んだ?!」
叫ぶ騎士が鞘ごと抜いた剣で、侵入者を叩く。祝いの日なので、切り捨てるのはやめたようだ。いい選択よね、後で褒めてあげなくちゃ。
ずっと徹夜続きなので、侍女さん達に心配させていたようだ。気づいて彼女らに任せる辺り、優秀な宰相閣下だ。やっぱり部下がたくさんいる人は、気配りが上手なのだろう。感心しながら食事を済ませる。
今日の主役は花嫁のハンナ、花婿のエサイアス様だ。私達は場所を提供したり、ドレス代を支払ったりしただけ。協力者という立ち位置だった。エサイアス様の実家であるニスカネン侯爵家も参加する。ハンナの実家からも家族が駆けつけた。
私も万全の手配をしている。事前に執事アルベルトに、細かな指示を出した。準備は完璧なはず。驚かせちゃうんだからね。
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食後の果物を口に入れる。美しく切られた柑橘を口に入れ、甘さより酸っぱさに顔を歪めた。うっ、酸っぱい。口直しに、隣の甘い葡萄を放り込む。百面相をする私を興味深そうに見つめながら、ルーカス様は柑橘に蜂蜜を垂らした。ずるい……。
「今朝早く到着したので、休ませている」
「ありがとうございます」
完璧かな。花嫁の着替えの手伝いを申し出たら「不器用なんですから、諦めてください」とハンナ自身に止められた。自覚はあるけど、手伝いくらいできると思ったのに。
仕方なく、私は自分の着替えに専念となった。花嫁ではないので、肌磨きからスタートしないのは助かる。軽く汗を流して着替え、お化粧と髪結い、お飾りの装着くらい?
「着替えてきます」
「ああ、そろそろ僕も準備しよう」
どうしたって、女性の方が準備に時間がかかる。先に立ち上がって、食堂を退室した。ようやく案内なしで迷わなくなった屋敷だが、侍女達と合流して賑やかに自室へ引き上げた。
結婚後は、中央に寝室を挟んだ続き部屋を使用している。部屋に入って左の扉を開ければ、お風呂やクローゼットに繋がる。逆に右の扉を開けたら、ルーカス様と一緒の寝室だった。彼の私室は、寝室を挟んだ向こう側にある。
いつも通りにドレスを用意していた侍女が「きゃー」と悲鳴をあげた。衣装室の中だ。
「どうしたの? きゃぁあ!」
「え?!」
虫でもいたのかと様子を見に行った侍女も悲鳴をあげ、ここで別の侍女が扉の外へ声をかけた。
「誰か! 来て」
叫んだ侍女と二人で、じりじりと後ろへ下がる。ルーカス様の寝室へ逃げるべき? でも……迷う私の視線が左右に忙しなく向けられる。決める前に、廊下の扉が開いた。
緊急事態なので、騎士でも開けられるけれど……ルーカス様が飛び込む。後ろに騎士が二人もいた。震える侍女の手を引いて、そちらへ駆け寄る。ここが一番安全だわ。
剣の柄に手をかける騎士二人が、ルーカス様の前に出た。身支度の途中だったルーカス様は、シャツの前をはだけている。色っぽいな……うん、私より美人だ。
「っ! 貴様、どこから忍び込んだ?!」
叫ぶ騎士が鞘ごと抜いた剣で、侵入者を叩く。祝いの日なので、切り捨てるのはやめたようだ。いい選択よね、後で褒めてあげなくちゃ。
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