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52.あれよあれよと決まる重要事項

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 王女様が引っ越した数日後、私はようやく散歩の許可を取り付けた。安静にと何度も言われ、我慢していたが限界がある。強く押さなければ痛くないし、もう血が出たりもしないんだから。そう説得したのだ。

 許可する代わりに、ルーカス様が同行することになった。まだ照れてしまうが、考えてみたら元々ルーカス様のお姿は好きだ。手の届かない人という意味で憧れていたし、ドキドキするのはそのせいだろう。自分を誤魔化している自覚はあるけど、そうしないと顔が見られない。

「さあ、行こうか」

 お昼前の暖かい日差しが降り注ぐ庭を歩いた。噴水がある庭って素敵だ。見ていても動きがあるから楽しめる。ただ、子爵家には無理かなと思った。庭の葉が落ちて汚れるだろうし、掃除の手間を想像してしまう。

 プルシアイネン侯爵家はお金があるから、気にしたことないよね。今はそこそこ稼いでいるが、子どもの頃は貧乏な方だった。平民の商家の方が豊かな生活していたかも。食事は足りたけれど、甘いお菓子や豪華な食材はなかった。

 貧乏根性が染み付いた私は、どうしても贅沢に抵抗がある。そんなお金があるなら、後のために残したほうが……と考えてしまうのだ。さりげなく手を繋ぐルーカス様を見上げ、頬を染める。

「手が赤い」

「日に当たったせいじゃないかと」

 ぎこちなく誤魔化した。顔は相変わらずのヴェールで隠している。そういえば、国王陛下の許可でイーリスとリンネアが嫁ぐ形になると聞いたけれど、どうなったんだろう。両方の名前で署名したのが、ちょっと恥ずかしい。

「結婚式だが、二ヶ月後にしようと思う」

 二ヶ月はかなり早い。ドレスとか間に合う?

「ドレスも衣装も発注済みだ。間に合わせる」

 宰相家の威光とお金が唸るようだ。王女様の結婚はまず籍を入れてしまい、私達のすぐ後でお披露目の式をするらしい。この辺は政のあれこれが絡んで、難しい話のようだった。

「リンネアの結婚披露は、来年くらいですか?」

 宮廷占い師を娶って新婚になるのだし、さすがに二人目は一年くらい後よね。そんな確認に、ルーカス様は首を横に振った。

「いや、ついでにリンネアとイーリスが同一人物だと明かすことにした」

「はい?」

「陛下の許可も出ている」

「はぁ……」

 間抜けな声が漏れる。私が宮廷占い師だとバレたら、大変なことにならないかな? ただでさえよく狙われるし、子爵とバレたら高位貴族が黙っていない。横から嘴を突っ込む連中が湧いて出そう。

「安心してくれ。君を守り抜くくらいの権力と地位はある。それに、王妃殿下がリンネアの後見を申し出られた」

「……王妃様が」

 繰り返しながら、これは私の手に負えない状況だと悟る。国王陛下の許可があって、王妃様が後見に入る。つまり宮廷占い師の顔を表に出す必要があるんだよね。代替わりまで三年近くあるから、その間は狙われる回数が増えそう。

 まあ、なるようになるでしょ。ルーカス様と結婚できるんだもん。そのプラス分だけ、マイナスを引き寄せるのは仕方ない。カードの正位置と逆位置みたいなもんよ。
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