1,043 / 1,100
第35章 ざまぁは熱いうちに打て
321.ゲスの処分は容赦無く(1)
しおりを挟む
「以上、各貴族家の資産の差し押さえと、爵位の返上を以って王家への償いとする。ここからは陳情があった民からの訴えについてだ」
木槌片手に宣言した国王ハオの隣に、すたんと降り立つ。黒豹に跨がる美少年様のお出ましだ!! ここで貴族がざわめいたのは、オレの存在ではなく黒豹である聖獣ヒジリの方だった。だよね、わかるぅ……けど、腹立つな。
貴族家の名を公爵から順番に読み上げた宰相閣下は、後ろを向いて水をがぶ飲みし始めた。のど飴ってこの世界にあるのかな? 今度作ってみるか。確か生姜の搾り汁を垂らした蜂蜜を固めるお仕事だった気がする。あれならクッキーと違ってオーブン使わないから、爆発しないだろ。
焼き菓子の時は、厨房を吹き飛ばして料理人に泣かれたからな。英雄の報奨金を使って、立派な厨房を作り直したけど。さすがに悪いことをしたと思うわけ。あのあと、オレ専用の台所が作られたが、最初からそうすりゃよかったんだよな。
ちょっと横道に逸れた考えは、目の前で文句を並べる貴族達の様子に呆れたからだ。好き勝手言わせて、言質を取ろうと思ったけど……そのレベルですらなかった。お前の母ちゃんデベソ級の低次元だ。もう黙らせた方がいい。
「国王陛下……パパ」
公式の場なので「国王陛下」と呼んだら無視されたので「パパ」に変更する。機嫌よく振り向くのもどうかと思う。そんなふうに公私混同してるから、舐められるんだぞ。逆に舐めてるところを、ぎゃふんと言わしてやんよ。やばい、古い言葉を使ったら自分が恥ずかしくなった。
赤くなった耳を誤魔化すように指で摘む。くそ、顔や首まで赤くなった気がする。
「パパにお願いがあるなら言ってごらん?」
整った顔のロマンスグレーが台無しのセリフを吐く国王陛下を睨みつけた。ところが、何かお強請りがあると思われて、嬉しそうにハオが微笑む。後ろに尻尾があったら、千切れんばかりに振られてるだろう。
「裁判が終わったら」
ここで言葉を濁す。その後何を望むとも言わないが、北の王様のやる気は一気に増大した。ちょろすぎて逆に申し訳ない。
「裁判を進めるぞ! 申請した順番通りに申し出るがいい」
崩れた威厳を立て直した国王陛下のお言葉だ。貴族達の爵位が返上になった今、同じ平民同士怖いものはなかった。金も権力もなくなれば、それを振りかざした連中が仕返しされるのは、正常な世の中だよ。
「ハールス侯爵家の嫡男に、娘は凌辱されました。その後、仲間に下げ渡されボロボロにされ……自殺しました」
泣きながら告発した父親の隣で、姉妹らしき女性が膝から崩れた。胸糞悪い話だが、こういうのが沢山あったと思う。王家の威信が落ちるってのは、国が腐るのと同意義だった。国の要が揺らげば、周囲も一緒に揺らぐ。腐った根から生える茎も葉も花も、すべて腐臭を放つのだ。
「どんな罰を望むの?」
「あの男が生きていることも許せない! 娘は死んだんだ、殺されたんだぞ! 殺してくれと懇願するほど酷い目に遭わせてやりたい」
「いいよ、オレが許可する。でも順番が違うな」
にっこり笑って告げる。こういうのはね、娯楽が多い日本だと逆なんだよ。
「ひどい目に遭わせるのは賛成、そこで殺してくれと懇願するまで痛めつける。でもね、最後に希望が必要なんだよ。死にたくないと懇願する男を殺してこそ、娘さんの無念が晴れるんじゃない?」
笑顔でそう告げたオレの隣で、ヒジリがにたりと笑った。
『さすがは主殿だ』
『僕も賛成だな、そういう奴って生き汚いじゃん。助かるかも? って希望を持ったところで断ち切るのは、いいと思う』
ヒジリとブラウ、2匹の聖獣の賛成が得られたんだ。ちらっと視線を送った先で、やや青褪めた顔色のハオが頷く。
「よかろう、その願いを叶える。ハールス侯爵家嫡男マルコの処刑は、竜殺しの英雄にお任せする」
「ありがとう、パパ」
そう言って笑ったオレは、マルコという侯爵子息にとって悪魔だったと思う。だけど、家族を失った親子にとって救世主だろう。外見が金髪の美少年だから、天使かな?
木槌片手に宣言した国王ハオの隣に、すたんと降り立つ。黒豹に跨がる美少年様のお出ましだ!! ここで貴族がざわめいたのは、オレの存在ではなく黒豹である聖獣ヒジリの方だった。だよね、わかるぅ……けど、腹立つな。
貴族家の名を公爵から順番に読み上げた宰相閣下は、後ろを向いて水をがぶ飲みし始めた。のど飴ってこの世界にあるのかな? 今度作ってみるか。確か生姜の搾り汁を垂らした蜂蜜を固めるお仕事だった気がする。あれならクッキーと違ってオーブン使わないから、爆発しないだろ。
焼き菓子の時は、厨房を吹き飛ばして料理人に泣かれたからな。英雄の報奨金を使って、立派な厨房を作り直したけど。さすがに悪いことをしたと思うわけ。あのあと、オレ専用の台所が作られたが、最初からそうすりゃよかったんだよな。
ちょっと横道に逸れた考えは、目の前で文句を並べる貴族達の様子に呆れたからだ。好き勝手言わせて、言質を取ろうと思ったけど……そのレベルですらなかった。お前の母ちゃんデベソ級の低次元だ。もう黙らせた方がいい。
「国王陛下……パパ」
公式の場なので「国王陛下」と呼んだら無視されたので「パパ」に変更する。機嫌よく振り向くのもどうかと思う。そんなふうに公私混同してるから、舐められるんだぞ。逆に舐めてるところを、ぎゃふんと言わしてやんよ。やばい、古い言葉を使ったら自分が恥ずかしくなった。
赤くなった耳を誤魔化すように指で摘む。くそ、顔や首まで赤くなった気がする。
「パパにお願いがあるなら言ってごらん?」
整った顔のロマンスグレーが台無しのセリフを吐く国王陛下を睨みつけた。ところが、何かお強請りがあると思われて、嬉しそうにハオが微笑む。後ろに尻尾があったら、千切れんばかりに振られてるだろう。
「裁判が終わったら」
ここで言葉を濁す。その後何を望むとも言わないが、北の王様のやる気は一気に増大した。ちょろすぎて逆に申し訳ない。
「裁判を進めるぞ! 申請した順番通りに申し出るがいい」
崩れた威厳を立て直した国王陛下のお言葉だ。貴族達の爵位が返上になった今、同じ平民同士怖いものはなかった。金も権力もなくなれば、それを振りかざした連中が仕返しされるのは、正常な世の中だよ。
「ハールス侯爵家の嫡男に、娘は凌辱されました。その後、仲間に下げ渡されボロボロにされ……自殺しました」
泣きながら告発した父親の隣で、姉妹らしき女性が膝から崩れた。胸糞悪い話だが、こういうのが沢山あったと思う。王家の威信が落ちるってのは、国が腐るのと同意義だった。国の要が揺らげば、周囲も一緒に揺らぐ。腐った根から生える茎も葉も花も、すべて腐臭を放つのだ。
「どんな罰を望むの?」
「あの男が生きていることも許せない! 娘は死んだんだ、殺されたんだぞ! 殺してくれと懇願するほど酷い目に遭わせてやりたい」
「いいよ、オレが許可する。でも順番が違うな」
にっこり笑って告げる。こういうのはね、娯楽が多い日本だと逆なんだよ。
「ひどい目に遭わせるのは賛成、そこで殺してくれと懇願するまで痛めつける。でもね、最後に希望が必要なんだよ。死にたくないと懇願する男を殺してこそ、娘さんの無念が晴れるんじゃない?」
笑顔でそう告げたオレの隣で、ヒジリがにたりと笑った。
『さすがは主殿だ』
『僕も賛成だな、そういう奴って生き汚いじゃん。助かるかも? って希望を持ったところで断ち切るのは、いいと思う』
ヒジリとブラウ、2匹の聖獣の賛成が得られたんだ。ちらっと視線を送った先で、やや青褪めた顔色のハオが頷く。
「よかろう、その願いを叶える。ハールス侯爵家嫡男マルコの処刑は、竜殺しの英雄にお任せする」
「ありがとう、パパ」
そう言って笑ったオレは、マルコという侯爵子息にとって悪魔だったと思う。だけど、家族を失った親子にとって救世主だろう。外見が金髪の美少年だから、天使かな?
22
お気に入りに追加
551
あなたにおすすめの小説
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
私はただ自由に空を飛びたいだけなのに!
hennmiasako
ファンタジー
異世界の田舎の孤児院でごく普通の平民の孤児の女の子として生きていたルリエラは、5歳のときに木から落ちて頭を打ち前世の記憶を見てしまった。
ルリエラの前世の彼女は日本人で、病弱でベッドから降りて自由に動き回る事すら出来ず、ただ窓の向こうの空ばかりの見ていた。そんな彼女の願いは「自由に空を飛びたい」だった。でも、魔法も超能力も無い世界ではそんな願いは叶わず、彼女は事故で転落死した。
魔法も超能力も無い世界だけど、それに似た「理術」という不思議な能力が存在する世界。専門知識が必要だけど、前世の彼女の記憶を使って、独学で「理術」を使い、空を自由に飛ぶ夢を叶えようと人知れず努力することにしたルリエラ。
ただの個人的な趣味として空を自由に飛びたいだけなのに、なぜかいろいろと問題が発生して、なかなか自由に空を飛べない主人公が空を自由に飛ぶためにいろいろがんばるお話です。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる