上 下
970 / 1,100
第33章 断罪劇、いっちゃう?

286.正当防衛か、過剰防衛か(1)

しおりを挟む
「幼児にも分かるように説明してあげて、レイル」

「おれに振るな。頼んだ、シン」

 下請けに出したら、孫請けに出された。面倒臭がりもあるけど、参加したくてうずうずしている従兄弟に譲ったんだろう。目を輝かせて身を乗り出す。シンやヴィオラは王族として尊重されずに育った世代だからね。しっかりやり返したらいいよ。

「王族と貴族の一番の違いは、替えがきくかどうか。聖獣様との契約を維持できるのは王族のみ。お前達などいくらでも交換がきく」

「そうよ。貴族と違い、王族は替えがいない。聖獣様と新しい契約を結べるほど、あなた方が有能だとは思えないわ」

 ヴィオラも口を挟んだ。

「その点は理解できていたのであろう。だからこそ、ヴィオラの血を取り込もうと、婚約を無理やり取り付けたのだからな」

 国王陛下が口を出した時点で、お前ら貴族は詰んでるからな? 青ざめる程度じゃ済まさん。つうか、お姉様……婚約話なんて知らないんですけど?

「え? お姉ちゃん、婚約してたの?」

「あ、あらぁ……照れるわ。一応ね、アホラ公爵の馬鹿息子を宛てがわれたんだけど、顔が悪いし体臭がキツくて……何より性格が最低だったの。女は大人しく足開いてガキを産めと言われたから、黙って足で蹴り上げて玉を潰してやったわ! きっちり2回よ」

 ピースサインで過去の戦績を誇るヴィオラに、男性陣は一斉に股を押さえた。実際は何もされてないのに、痛い気がする。つうか、多分痛い。間違いなく痛い。2回も蹴られたら、殺る気満々じゃん?!

「お、お姉ちゃん……怖い」

「やぁね。可愛い義弟にそんなことするわけないじゃない」

 にっこり笑う赤い紅が、より恐怖を煽った。北の国で逆らってはいけない人の順位が確定する。ヴィオラ、シン、国王だ。監禁ヤンデレより玉蹴りの恐怖が勝った。

 シフェルもさりげなく隠してるし、ベルナルドは青ざめていた。痛みが想像できるだけに、怖い。レイルは引き攣った顔で笑いながら距離を取り、シンは蹲りそう。なんかダメージでかいけど、もしかして幼少時にケンカして蹴られた、とか?

 オレはもちろんリアムを盾にして隠したさ。ちらりと視線を向けた先で、じいやすら背中を見せていた。そうだろ、怖い告白だった。

「あ、その……えっと。なんの話だっけ」

 断罪中だったのに、貴族も王族も含め股間を隠しながら青ざめる状況だ。さっきまでの会話が頭から吹き飛んでしまった。

『もう、男ってダメね。ヴィオラが犯されて子を孕まされそうになったところまででしょ?』

「え? そんな話だった?」

 蹴飛ばして、それも念を入れて2回もトドメを差したところしか覚えてない。だけど、隣でリアムとパウラが「非道いわ、女性は子を産む道具じゃないのに」と憤慨しているので、尻馬に乗った。

「そ、そうだよな、女性は神聖な存在だ。大切な子をお腹で育てて産んでくれる。どんな奴も母親の腹から生まれたんだから、女性は大切にしなくちゃ」

 狡い! そんな男性陣の罵りの眼差しを受けながら、オレは媚びるように笑った。ここで価値がでる、美形スマイル! 

「さすがはセイだ。信じていた」

 リアムの硬い口調に「リア姫、言葉を柔らかくね」と囁いて誤魔化す。なんとか無礼者の謗りを免れたぞ。

「あ、アホラ公爵の嫡男が療養しておられたのは……」

 療養と称して、治療に専念したんだと思います。ご愁傷様でした。さすがにここは気の毒という意識が先に立ち、オレは追い討ちをかけられなかった。絶対に使い物にならないと思う。

『安心して、ヴィオラ。次はないわ。いえ……一度でも許したらダメよ。消し炭にしてやるわ』

 コウコは容赦なく追い討ちをかけた。この時点で男性陣のライフがゼロに近づいている。それ以上は黙っててくれ。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

私はただ自由に空を飛びたいだけなのに!

hennmiasako
ファンタジー
異世界の田舎の孤児院でごく普通の平民の孤児の女の子として生きていたルリエラは、5歳のときに木から落ちて頭を打ち前世の記憶を見てしまった。 ルリエラの前世の彼女は日本人で、病弱でベッドから降りて自由に動き回る事すら出来ず、ただ窓の向こうの空ばかりの見ていた。そんな彼女の願いは「自由に空を飛びたい」だった。でも、魔法も超能力も無い世界ではそんな願いは叶わず、彼女は事故で転落死した。 魔法も超能力も無い世界だけど、それに似た「理術」という不思議な能力が存在する世界。専門知識が必要だけど、前世の彼女の記憶を使って、独学で「理術」を使い、空を自由に飛ぶ夢を叶えようと人知れず努力することにしたルリエラ。 ただの個人的な趣味として空を自由に飛びたいだけなのに、なぜかいろいろと問題が発生して、なかなか自由に空を飛べない主人公が空を自由に飛ぶためにいろいろがんばるお話です。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

処理中です...