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第33章 断罪劇、いっちゃう?

285.返済したら断罪、これ常識(1)

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「か……数えてみないと返済を終えたかどうか……」

「分からない、と申すか。ならばこれを足そう」

 リアムが収納から取り出した金貨をさらに追加した。明らかに返済額を超える量だ。

「リアム?」

「セイを婿に貰い受けるのだから、中央の国から婚礼金を出すのは礼儀だぞ」

 あ、そういう名目ね。確かに王家の資産になる金貨だから、返済に使うのも自由だな。オレが身請けされる金額に見えるのは気の所為……そう、気の所為だ。シフェルが満面の笑みを浮かべ、ベルナルドはドン引きしてるけど、気の所為に決まってるさ。

 それより重要なのは……。

「リアム、口調が戻ってる」

 皇帝陛下に戻ってるぞ。間違いじゃないけど、可愛いリア姫でいて欲しいんだけど。首を傾げると、焦った様子で赤くなった頬を両手で包んだ。これは目の毒……いやご褒美です。頑張るからね。

「さっさと数えろ」

 シンが吐き捨てるように告げた先で、公爵が金貨の前に膝をついた。え? 偉い人が自分で数えるのか? 驚いたオレをよそに、ヴィオラが何か筒状の物を投げた。

「貸して差し上げてよ」

 上から目線で義姉が笑う。なんか悪い笑顔してるので、見なかったことにした。お姉ちゃん、怖いぞ。悪の総帥の傍にいそう。ところで今の何?

 尋ねていいか分からず見ていると、アホラ公爵が筒に金貨を入れた。満タンになると麻袋に移していく。ああ、数える道具なのか。満タンで50枚とか、そんな感じで数えるらしい。思ったより早く数え終えたアホラ公爵が立ち上がる。こっそりポケットに入れた分は、利息ってことで見逃してやるよ。

 残った金貨の方が、数えた金額より多かった。まあリアムの追加が大きかったけどね。あれがないとこんなに残らなかったし。

「借金の返済は終了、この場で書類にサインしてもらおうか」

 借用証がないと聞いて、なんで踏み倒さなかったんだと義父を心で罵った。誠実なお人柄は、政では悪い方に働くことが多い。そのいい例だった。オレなら確実に翌日に踏み倒す案件だ。日本の正式な書類形式で、じいやに書類を整えてもらった。穏やかな物腰でじいやが渡した書類をじっくり読み、アホラ公爵が手を出す。後ろの侍従か執事のような人がペンを手渡した。

 彼がサインするまで、基本的にオレ以外は言葉を我慢している。署名が終わり、慣れた様子で指輪を押し付けた。紙に指輪の紋様が移る。これって印鑑に似た習慣だな。受け取ったじいやが運んだ署名を、後ろからレイルが確認して頷く。

「さて、返済が終わったし……断罪に入ろうか」

 怪訝そうな顔をするアホラ公爵の後ろで、貴族がざわつく。どちらに味方するか判断するには、遅すぎるぞ。もうお前らは敵認定したからな。ぎろりと睨んで黙らせる。

「断罪だと? 貴様、何様のつもりだ」

「そっくりお返ししようか。オレは聖獣達の主人様で、北の国の第二王子、皇帝陛下の婚約者で皇族だよ。たかだか北の国の公爵程度が、オレに話しかけるなんて無礼すぎるんじゃないか?」

 にやりと笑って現実を突きつける。お前の地位や立場なんて、いつでも剥奪できるだけの権力者だぞ。貸した金でいい気になってたが、もうそれは通用しない。きっちり責任取らせてやるからな。
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