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第33章 断罪劇、いっちゃう?

260.居心地いいからいいけどね(3)

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 見回した部屋は牢なのに石床に絨毯が敷かれ、ベッドもなかなか柔らかかった。正直に言うなら、うちの官舎よりいい寝具じゃないか? あとで交換して持ち帰ろう。どうせ経費だろ。悪いことを考えながら、オレは部屋に浄化を掛けた。

 ほらぁ、潔癖症だからぁ~。くねくねとブラウの真似ごっこをしながら、部屋の奥にあるベッドに寝転ぶ。囚人用なのに天蓋付いちゃってるの、もう笑えるよな。たぶん、着替えをする目隠しか。まさか自家発電用? いやいや、そんなの……この寝具持ち帰るのやめようかな。浄化したら平気?

「王族なのに、何をやらかしたんだ」

 牢番のおじちゃんがいつの間にか交代してた。さては、もうご注進に走ったな? 単語の使い方おかしいけど、意味は合ってるからいいや。

「さあ?」

 まったく心当たりがないの。困ってるの。そんな無邪気な様子を装ってみる。しょんぼり肩を落とした美形少年、しかも王族というやんごとなき身分とくれば、同情必至でしょ。こっそりシーツの下に収納の出口を作って、薬のキットを取り出した。

 必要なのは、先ほど飲まされた暗殺用の毒の解毒剤。これは複数回飲ませないと殺せないが、わりと入手しやすい材料が使われてて足がつきにくい。ついでに、即死されると困る場合にも使われる。この辺の毒の知識はレイル教官にみっちり教え込まれたから、覚えてますよ。

 何度も毒飲まされて吐いて転げまわって治癒の繰り返しだったもん。耐性作りに苦労した甲斐があったというものだ。味ですぐに種類がわかった。ちなみに、元のスープ自体は大変美味でした。あれだね、ジャガイモ系ポタージュのお味がやや和風になった感じ。オレ好みの味付けだ。

「可哀想になぁ、政権争いか?」

「……皇帝陛下と仲良くなったせいかも」

 俯いて背を向けた手元は忙しく薬を合わせている。こういう劇薬系は薄めて使うんだけど、調合用に持ち歩くのは原液なんだよな。一滴だと死ぬけど、その半分なら蘇生……くらい効果が違う。薄めて調合する余裕がないので、自家製つまようじの先で計量した。

 ぺろっと舐めて解毒剤を吸収し、あまりの不味さに「げっ」と声が漏れた。口元を咄嗟に押さえたが、声は当然聞こえている。牢って音が響くんだよ。でもって重要人物が体調不良を訴えたらどうなるか。当然医者が呼ばれてしまう。

「な、具合が悪いのか?!」

「さっきのスープ飲んでから、胸やけが」

 ここは毒を盛られたアピールの絶好のチャンスだな。頑張る。激マズに嘔吐しかけたおかげで、自然と目は潤んでいる。もう一回えずくと、眦から涙がぽろり……やばい、これって主演男優賞物じゃない?自画自賛しながら、医者の到着を待った。
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