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第31章 お土産が優先だからね

222.元気を出すには、美味い飯だろ(1)

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 立ち上がったオレと手を繋いだ少女マロンは、指が絡んだ手を何度も確認している。不思議そうに手を緩めて握り直すから、その度にぎゅっと握り返した。こんな接触も知らないなんて、マロンはよほど主人運が悪いのかな。

 まあ、オレに引っかかる時点で聖獣のくじ運は最悪だと思うけどね。マロンの話は、彼の一方通行だった。でもコウコを始めとして聖獣達は事情を知っている。なら、後の客観的な話を彼らから聞こう。その前に、そろそろお昼ご飯の時間か。

「夕食はマロンの為に黒酢炒め作るけど、お昼は何がいいかな」

『主ぃ、こないだの白いどろっとしたスープ!』

『あれはあたくしも好きよ』

『少し甘いので、僕も飲みやすかったです』

 全員シチュー希望か? どろっとしてて飲みやすい上に、野菜が溶けて甘かったんだろう。聖獣は完全に子供舌だった。カレーとかも好きそう。問題はカレーのスパイス調合が出来ないことか。オレもカレーライス食べたいもんな。

 どこかの国にないか、探してみよう。繋いだ手を揺らしながら歩く。小さな笑い声を立てるマロンが、とても可愛く思えた。

「キヨ様、お話は終わりましたかな?」

「ああ、護衛ありがとう。ベルナルド」

 離れていたベルナルドが合流し、意外なことにコウコがするすると彼の腕に絡み付いた。赤い舌をちらちらと覗かせながら肩まで登ると、くるっとこちらに向き直る。

『主人、このひとの筋肉凄いわ』

 何が凄いのか尋ねるまでもなく、盛り上がった立派な筋肉に頷いた。確かに凄い。コウコはもしかして筋肉フェチか? ベルナルドと契約しちゃえよと考えながら、それも問題あるのかと眉を寄せた。北の国の聖獣だから、兄のシンと契約が継続してるもんな。

『心配しなくても、あたくしは主人一筋よ』

「……ありがと」

 その心配はしてなかった。言ったら泣かれそうだから言わないけど。それにしても、東と南の聖獣契約どうしようか。王族が滅びた国と見捨てられた国……どっちも消えたら困る。オレはまだ特産物の確認が終わってないし、調味料もあれこれ欲しい。種類があるほどいいよね、調味料。

「ひとまず……昼食を作ろう」

 すべてはそれからだ。腹を空かせた傭兵達が待ち受けるテントへ踏み入り、聖獣を整列させた。

「シチューの再現に挑むが、同じ味になる保証はない。まず、ブラウは野菜の細切り。スライスじゃなくてダイスだぞ」

『わかったぁ』

 前回の記憶を頼りに、野菜を取り出す。それを興味深そうに見ている聖獣達へ仕事を言いつけた。

「スノーは野菜の皮剥き。ヒジリは肉の調達してきて。鳥と兎がいいな。コウコはいつも通り火の番を頼む」
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