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第22章 まさかのヤンデレ属性

137.チート無効じゃん(2)

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 ほっとした顔で身を起こすシフェルが銃の安全装置をかける。レイルは慣れた手つきで銃を民族衣装の胸元に隠した。王族がそんな場所に武器もってるの、おかしいぞ。夜会の入口で取り上げられちまえ。

「しょうがないだろ。忘れてたんだから」

 言い返しながら、ヒジリの背中をチェックする。黒い毛皮が濡れているが、どこをケガしたのか見えなかった。ごそごそ撫でまわしていると、ヒジリがぺたんとお座りした。いわゆる犬のお座りの姿勢だが、ころんと金属音がする。

「ん?」

『主殿、もう銃弾は抜けたゆえ傷も塞がる』

「うん? めっちゃ強いな」

 よくわからないんだが、今の金属音は抜けた銃弾が落ちた音か。きょろきょろと床を探すオレの前に、ブラウが銃弾を転がしてくれた。あれだ、ほら……猫が爪の先でちょいちょいとネジを遊ぶみたいな感じ。拾うとまだ少し温かく、ひしゃげた形に眉をひそめた。

 こんなに曲がるなんて、めちゃくちゃ痛かっただろう。同情しながらヒジリを撫でると、ぐるぐると喉を鳴らして満足気だった。

「キヨ、結界について説明してくれ」

「え? レイルに聞いて」

 シンの言葉を聞き流しながら、暇そうなレイルに役割を振った。魔力感知の範囲が一番広いのは、この場だとオレだ。ひとつ深呼吸してから意識を集中した。普段展開する直径は20m前後だが、宮殿内は人の動きが多くて疲れるので10mに絞っている。それが裏目に出たのだろう。

 まずは放射状の網を放つイメージで探る。僅かに左後ろに反応したぴりぴりする魔力へ向けて、水の波紋を放った。網目だと穴が多くて見落としが出るが、広範囲が調べられる。波紋に切り替えると近距離のみだが、見落としなく確認が出来た。

 状況に応じて使いわける魔力感知だが、最近になって波紋も方向や範囲を絞れば結構遠くまで探れることが分かった。左後方に感じた距離はおよそ60m……意外と近い。目を閉じて集中するオレに話し掛けられず、シンはレイルに詰め寄った。答える友人の声を聞きながら、掴んだ場所を確かめるために目を開ける。

「見つけましたか?」

「あっち、距離60mだけど……」

 指さした方角にあるのは建物だった。オレの魔力感知だと高さが出ない。もっと詳細に感知する方法は模索中だが、戦場だと平面で用が足りるんだよな。複数階の建物だと屋上と1階部分の判断がつかず、困惑してしまった。

「十分です。あとはこちらでやります」

 シフェルは襟につけた記章に話しかけた。方角と距離を指示して、流した魔力を断つ。話しかけるときだけ魔力を込めるのは、通信機能の電源が自らの魔力なのだろう。初めて見る魔道具にオレは興味を惹かれた。あとで教えてもらおう。

『主、僕が捕まえちゃった』

 いつの間にか姿を消したブラウは、とんでもない発言とともに影から顔を見せる。巨大な元のサイズでのそりと部屋に現れ、両手で抱えきれない尻尾を左右に振った。
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