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第21章 ざまぁラノベで見た展開

129.不用品は処分して(2)

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 最上位の人間が「許す、手を出すな」と命じたら、それに従うのが階級社会のはずだろ。オレは階級社会自体を否定したりしない。これは必要悪なのだ。国のトップが明確で、その人物にきちんとした理念や能力があり、支える貴族や官僚がしっかり働くなら……最高の国づくりができる。

 ラノベだと階級制度自体が悪だと断じてる場合もあるけど、この世界だとかなり昔から当たり前に存在した制度だった。それを外から来た奴がルール無視して、数年で無理やり方向転換したら、世界という船はひっくり返る。ここで必要なのは現状を活用して、全員が幸せになれる方法を考えることだった。

 授業で習った失敗談がある。小作人だった奴に良かれと思って土地を与えて放り出した結果が、有名な農地改革だ。土地をもらい農作物をすべて自分達の手取りに出来る。一見素晴らしい施策に思えたが、種をまいて刈り取るまでの1年間に食べる物がない。小作人ならば食事も住居もすべて地主負担だったが、面倒を見る者がいなくなった小作人はその日から困窮した。

 この世界でも同じことが起こりうるのだ。貴族を排除して皇帝も王族もなくしたら、誰が世界の悪を取り締まり、誰が農民や平民の生活環境を保証する? 税を納めて道路を整備してもらい、危険な魔物や敵国の侵略を防いでもらう。彼らはそうやって生きてきた。

 何もない荒野に「明日から自由です」と身分制度を排除して放り出される改革など、国どころか世界が亡びるだろう。

『主殿、手をこちらへ』

 イケメン聖獣のヒジリがぺろりと指先を舐める。少し指先がしびれてるから、もしかして護身用に痺れ薬でも塗ってやがったか? まあ問題なさそうなので、ヒジリに左手を咥えさせた。

「いてっ」

 もぐもぐする口の中で噛まれるのは理解できん。いや、噛むかな? と思ったよ。コイツ、噛むの好きだから。でも本当に噛む必要ないだろ。傷の上に牙刺さったぞ、それ、かなり痛いからと心の中で文句を並べる間に、聖獣の唾液塗れの手は治癒された。

「もう終わったのか?」

 残念そうな声で近づいた赤毛の青年が2人。オレの想定では駆け付け役は1人だったんだけど。顔を上げた先に、情報屋レイルと北の王太子シン。こうやって正装して並ぶと、どこか似てる。

「うん、シンの服カッコいいな」

「ありがとう」

 落ち着いた所作で会釈するシンは、北の王太子だけのことはある。注目されることに慣れているし、見られる立場だったから立ち姿に隙が無い。北の王族であると示す民族衣装での正装は、どこか中国っぽい感じだった。日本と中国が混じった感じで、着物に近いが……ちょっと違う。

 同郷の奴なら一発で伝わる『孔明の服』が使えないのは痛い。もしかして……転がる青猫を手招きすると、嫌そうに近づいてきた。ほんと、お前は何でオレと契約したんだよ。

「ブラウ、孔明わかるか? 諸葛孔明……」

『……げぇむにいた子なら』
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