上 下
213 / 1,100
第9章 戦の準備

39.大量のピアスで魔力封じ(3)

しおりを挟む
「ただの御守りだ」

 御守り……神を信じる宗教がないのだから、本当は違う意味なのだろう。御守りと自動翻訳するカミサマの与えた能力に疑問を持ちながら、鏡で移したチェーンに小さな青い石が付いていた。透き通った小ぶりの石を透明の膜が覆う形でチェーンにぶら下がっている。

「ありがとう。リアムがくれるなら効果ありそうだ」

 ふと、貰いっぱなしだと気付く。だが残念なことに女の子にプレゼントできるような小物はないし、準備しようにも間に合わないだろう。

「うーん」

「どうしました?」

「あのさ、リアムに何かあげようと思うんだけど……」

 手持ちがないと両手のひらを上にあげてお手上げを示すと、シフェルがにやりと笑った。怖い、何か嫌な感じがする。彼が口を開く前に止めないと! 

「簡単ですよ。戦争に勝って、西の国から領地を奪って献上すればいいでしょう」

「え……それ、簡単なの?」

「頑張りなさい」

「期待しているぞ、セイ」

 シフェルの重すぎる期待と、リアムの可愛いお強請りに、オレは頷くしかなかった。




 大量の食料を収納したリストをポケットに入れて、ベルト部に投げナイフを装着する。レイルに貰った銃を手早く分解して確認してから組み立てた。おそらく暗闇でも出来ると思うくらいには練習させられた。最初は手を挟んだりしたけど。

 ホルダーに銃をしまって上着を羽織る。

「気をつけるんだぞ、セイ」

「無事に戻るからな」

 手を繋いで集合場所に向かいながら、後ろのシフェルを無視した会話を楽しむ。そういえば、彼は出発前の時間を奥さんのクリスと過ごさなくていいんだろうか。

 集合場所につくと、クリスをはじめとしてジャック達傭兵も準備を整えて待っていた。騎士服姿のクリスが武器を装備した姿に眉をひそめて振り返った。

「もしかして?」

「言いませんでしたか? 我々騎士団も出ます。陛下の護衛は兄に任せました」

 聞いてない。が、ちょっと安心する。クリスもシフェルも出払ったら、誰がリアムの傍に残るのかな? と思ったから。手合わせしたスレヴィの腕前なら安心だった。

 西の自治領から戻った際に使った魔法陣とよく似た模様の絨毯が敷かれる。地面に敷いた魔法陣の出口は、戦場近くにもう運ばれているだろう。ひとつ息を吸って、リアムの手を離す。ジャック達の前まで歩いて、拳を軽くあわせた。

 さて、二度目の戦場へ行きますか。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

魔王

覧都
ファンタジー
勇者は、もう一人の勇者と、教団の策略により人間の世界では不遇だった。 不遇の勇者は、人生のリセットすることを選び、魔王となる。 魔王になったあとは、静かに家族と暮らします。 静かに暮らす魔王に、再び教団の魔の手が伸びます。 家族として暮らしていた娘を、教団に拉致されたのです。 魔王はその救出を決意し……。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...