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第8章 初恋の予感

34.夢オチが怖いので抓ってみた(1)

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 動かなくなったオレはしばらく意識を飛ばしていたらしい。

「セイ、大丈夫か? セイ」

 必死に呼び戻そうとするリアムの声に、「いっそこのまま亡き者に」と物騒なシフェルの呟きが被る。目を開いたまま気絶していたらしく、最初に視界に飛び込んだのは黒髪だった。

「っ、なんだろう、奇妙な夢を……」

 夢オチで片付けようとしたオレを膝枕した美人は、満面の笑みで「夢ではないぞ」と逃げ道を塞いだ。ぼんやりしながら頭を動かすと、左側でシフェルが呪いの本を開き、ぶつぶつ何かを呟いている。

 やばい、呪い殺される。視線をそらして反対側へ目をやると、ヒジリが寝転がっていた。背中がかゆいようで、背を絨毯にこすり付ける姿は、我関せずでマイペースだ。

「あのね、さっき『リアムが女性だ』って聞こえたんだけど」

「そうだ」

「そうだよね。こんなに美人さんだもん」

 思わず納得してしまった。最初にみたときに「女の子だ」と呟いた自分の直感は当たっていたらしい。何か理由があって、男のフリをしてきたのだろう。

 ラノベだと『皇位継承権が直系男子のみ』だったり『唯一の皇族が孕まされると大変なので男のフリを』の理由で男装するよな。

「死ねばいいのに、もげればいいのに」

「シフェル、聞こえてる……怖いから止めて」

 普段のクールな顔が嘘のように、呪いの言霊をむけてくるシフェルにお願いしてから起き上がった。ヒジリが擦り寄ってきたので、頭をなでてから喉をくすぐってやる。

 膝が軽くなったリアムは残念そうにしながらも、いそいそと隣に座りなおしていた。可愛いな、まじで。こんな美人で、中身が可愛い嫁さん……あれ? つがいって嫁さんで合ってる??

「リアムが女性なのはわかった。オレのいた世界だと『番』じゃなくて『お嫁さん』っていうんだけど、つまり、リアムはオレと結婚する話で合ってる?」

「お嫁さん……///////」

 ダメだ。照れちゃって話が先に行かない。仕方なく、怖ろしい視線を向けてくるシフェルを振り返る。彼から感じるオーラは『大事に育てている娘に、どこかの馬の骨が手をつけた』という、おどろおどろしいものだった。

「シ、シフェル、さん?」

『主殿、もう番を得たのか。すこし早いのではないか?』

 確かに12歳前後の外見で、嫁が決まるのは早いと思う。皇族の基準はわからないけど。

「はぁ……もう仕方ありません。正式な発表は後日ということにして、とりあえず説明をいたします」
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