90 / 1,100
第4章 やらなきゃやられる!
17.教育は情熱だ!!(7)
しおりを挟む
「ごめん、わかんない」
素直に尋ね直したところで、3本足の椅子が傾いた。さすがの反射神経でそれぞれがコップを掴み、乾パンだけが床に零れ落ちる。硬い音を立てた乾パンを拾い「3秒ルール、3秒ルール」と呟いて埃をはたく。
子供の頃、親とやらなかったか? 落ちて3秒以内に拾ったら食べてもOK! という、何の科学的根拠もない迷信みたいなの。多少地方色はあるけど、近所の子も普通にやってたな。
机代わりの椅子がなくなったので、右手のコップを床に置いた。キレイ好きなサシャが渋い顔をするが、さすがに注意まではしない。代わりになる台が手元にないのだから、仕方ないだろう。
「3秒ルールって、何だ?」
「いや、先に読み書きの説明して」
「キヨが呟いたくせに」
埃をはらった乾パンを口に放り、唾液を吸われながらミルクで喉へ流した。ごくんと無理やり飲み込んだら、喉の奥で違和感がある。変な咳をしながら、残ったミルクを飲み干した。
「順番にいこう。まずは『話せると読める』の説明から。そしたら、『3秒ルール』の説明する」
混乱してきた状況で、強引に話を分割する。納得したのか、ノアが説明役を買って出た。
「話せる言葉は読める。これは世界のすべての言語に適用される。2ヶ国語話せれば、2ヶ国語読めるという意味だ。逆に話せない言葉は読めない」
端的に事実を語るノアは、サシャが引き裂いた干し肉をつまんで口に放り込んだ。咀嚼する回数が少ない。うん、次からはオレも裂いて食べよう。
「異世界人はすべての言語が話せるんだっけ?」
「そうだ」
「じゃあ、オレはすべての言語を読めるのか」
さっきのルールによれば、そういう意味だろう。これは便利だ。すごいチートだった。だって、過去のオレは英語読めなくて話せなくて書けなかったんだぞ? 世界共通語なのに。大半の日本人が同じだろうけど、やっぱり話せたらいいなと思う部分はあったわけで。
「ああ、あと異世界人は書ける奴も多い」
「ん?」
書ける奴が多いってことは、この世界では文盲が多いってことか? いや、文盲は読めて書けない人にも使えるのかな? 読めるのに書けない、の状況がわからない。
「読めたら、そっくり同じ形を書けばいいんだから書ける、よな?」
ジャックが首を横に振った。ライアンがサシャの干し肉に手を伸ばし、大量に掴みすぎて手を叩かれている。なんか欲張りだな、ライアン。
「普通は読めても書けない」
「オレのいた世界だと、読めれば書ける人が多いから理解しがたいけど……そういうものか」
素直に尋ね直したところで、3本足の椅子が傾いた。さすがの反射神経でそれぞれがコップを掴み、乾パンだけが床に零れ落ちる。硬い音を立てた乾パンを拾い「3秒ルール、3秒ルール」と呟いて埃をはたく。
子供の頃、親とやらなかったか? 落ちて3秒以内に拾ったら食べてもOK! という、何の科学的根拠もない迷信みたいなの。多少地方色はあるけど、近所の子も普通にやってたな。
机代わりの椅子がなくなったので、右手のコップを床に置いた。キレイ好きなサシャが渋い顔をするが、さすがに注意まではしない。代わりになる台が手元にないのだから、仕方ないだろう。
「3秒ルールって、何だ?」
「いや、先に読み書きの説明して」
「キヨが呟いたくせに」
埃をはらった乾パンを口に放り、唾液を吸われながらミルクで喉へ流した。ごくんと無理やり飲み込んだら、喉の奥で違和感がある。変な咳をしながら、残ったミルクを飲み干した。
「順番にいこう。まずは『話せると読める』の説明から。そしたら、『3秒ルール』の説明する」
混乱してきた状況で、強引に話を分割する。納得したのか、ノアが説明役を買って出た。
「話せる言葉は読める。これは世界のすべての言語に適用される。2ヶ国語話せれば、2ヶ国語読めるという意味だ。逆に話せない言葉は読めない」
端的に事実を語るノアは、サシャが引き裂いた干し肉をつまんで口に放り込んだ。咀嚼する回数が少ない。うん、次からはオレも裂いて食べよう。
「異世界人はすべての言語が話せるんだっけ?」
「そうだ」
「じゃあ、オレはすべての言語を読めるのか」
さっきのルールによれば、そういう意味だろう。これは便利だ。すごいチートだった。だって、過去のオレは英語読めなくて話せなくて書けなかったんだぞ? 世界共通語なのに。大半の日本人が同じだろうけど、やっぱり話せたらいいなと思う部分はあったわけで。
「ああ、あと異世界人は書ける奴も多い」
「ん?」
書ける奴が多いってことは、この世界では文盲が多いってことか? いや、文盲は読めて書けない人にも使えるのかな? 読めるのに書けない、の状況がわからない。
「読めたら、そっくり同じ形を書けばいいんだから書ける、よな?」
ジャックが首を横に振った。ライアンがサシャの干し肉に手を伸ばし、大量に掴みすぎて手を叩かれている。なんか欲張りだな、ライアン。
「普通は読めても書けない」
「オレのいた世界だと、読めれば書ける人が多いから理解しがたいけど……そういうものか」
32
お気に入りに追加
551
あなたにおすすめの小説
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
金眼のサクセサー[完結]
秋雨薫
ファンタジー
魔物の森に住む不死の青年とお城脱走が趣味のお転婆王女さまの出会いから始まる物語。
遥か昔、マカニシア大陸を混沌に陥れた魔獣リィスクレウムはとある英雄によって討伐された。
――しかし、五百年後。
魔物の森で発見された人間の赤ん坊の右目は魔獣と同じ色だった――
最悪の魔獣リィスクレウムの右目を持ち、不死の力を持ってしまい、村人から忌み子と呼ばれながら生きる青年リィと、好奇心旺盛のお転婆王女アメルシアことアメリーの出会いから、マカニシア大陸を大きく揺るがす事態が起きるーー!!
リィは何故500年前に討伐されたはずのリィスクレウムの瞳を持っているのか。
マカニシア大陸に潜む500年前の秘密が明らかにーー
※流血や残酷なシーンがあります※
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
私はただ自由に空を飛びたいだけなのに!
hennmiasako
ファンタジー
異世界の田舎の孤児院でごく普通の平民の孤児の女の子として生きていたルリエラは、5歳のときに木から落ちて頭を打ち前世の記憶を見てしまった。
ルリエラの前世の彼女は日本人で、病弱でベッドから降りて自由に動き回る事すら出来ず、ただ窓の向こうの空ばかりの見ていた。そんな彼女の願いは「自由に空を飛びたい」だった。でも、魔法も超能力も無い世界ではそんな願いは叶わず、彼女は事故で転落死した。
魔法も超能力も無い世界だけど、それに似た「理術」という不思議な能力が存在する世界。専門知識が必要だけど、前世の彼女の記憶を使って、独学で「理術」を使い、空を自由に飛ぶ夢を叶えようと人知れず努力することにしたルリエラ。
ただの個人的な趣味として空を自由に飛びたいだけなのに、なぜかいろいろと問題が発生して、なかなか自由に空を飛べない主人公が空を自由に飛ぶためにいろいろがんばるお話です。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる