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77.美味しいお肉をお腹いっぱい

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 ベル様と僕は二人でお肉を焼いた。僕はブレスの調整が出来るようになったから、お祖父ちゃん達に見てもらいたかったの。

 強火で表面を炙って、でも中まで火を通さない。意外と難しいんだから。ぽたぽたと脂が溢れ、いい匂いがし始めた。周囲に別のドラゴン達が集まり、じっと様子を見ている。

 僕の焼いたお肉を、ベル様が確かめてから切る。薄くスライスして、口に入れてもらった。溶けるような柔らかさ、生肉の味も残ってる。ぺろりと平げ、ベル様に僕が食べさせた。やり方を覚えたドラゴンが、あちこちで真似し始める。

「ウェパル、あーんだ」

 口に運ばれたお肉を食べ、笑う僕の口の周りをベル様が拭く。いつもの光景なのに、ざわっと周囲がうるさかった。何だろう? 僕がそっちを向くと、皆が笑顔だった。悪いことじゃなさそう。

 僕達が焼いたお肉を食べ終わり、同じのが欲しいと強請る妹レラジェのためにまた焼く。焼いたお肉をお願いして切ってもらった。ベル様は「仕方ない」って言いながら、嫌そうじゃない。本当に優しい人だよね。

 レラジェとキマリスは、取り合うようにして食べた。まだ切り分けていないお肉も齧るくらい、気に入ったみたい。

「こりゃうまい」

 吸血鬼のおじさんが、血の味が残っていると大喜びだった。普段はあまり食べないお肉を、お代わりしている。よかった。ベル様のお膝で手を拭いてもらいながら、笑顔の僕は尻尾を振る。ご飯が美味しいのも、楽しそうな姿を見るのも、嬉しい。

「お披露目は済んだわけだが……このまま宴会か?」

「ええ、恒例です」

 ベル様の疑問にお母さんが頷く。大人の会話は時々聞き取れない。むすっと尖らせた口の脇も、優しく拭かれた。一緒に不機嫌も飛んでしまう。

「あらあら、あの子達より甘えん坊ね」

 お母さんはからりと笑った。明るい声で楽しそう。レラジェやキマリスより、甘えてるかな? 首を傾げた僕の前で、お母さんが二人の顔をべろんと舐めた。口に肉の血が付いていたみたい。なんだ、僕と同じじゃん。

 ほっとしてベル様に「ありがとう」とお礼を言った。こういうところも、僕の方がお兄ちゃんだ。

 本当は魔法でえいっ! と綺麗に出来るベル様だけど、ここにはいろんな魔族がいる。吸血鬼のおじさんは、綺麗にする魔法は苦手なんだって。いつもきちんとしているから、お風呂に入りたい人なのかも。

 お祭りは夜まで続く。お腹がいっぱいになった僕は、ベル様のお膝で少し眠る。ぽんぽんと背中を叩くベル様の優しい手に、口元が緩んだ。僕は大事にされて愛されている。だからベル様に同じだけ返したい。返せるように、頑張ろう……そう思いながら、目を閉じた。

 起きたらまた頑張るから、それまで僕が休むのを許してね。
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