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63.僕はお兄ちゃんになるから

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 朝になって、日差しが顔に降り注ぐ。眩しいからベル様に抱き着いて、胸に顔を埋めた。これなら眩しくないかも。

「ウェパル、凄く可愛いが……オリアスが睨んでるぞ」

「う、ん?」

 オリアスはお父さんの名前だ。火竜の長をしてるの。将来はドラゴンの長であるお祖父ちゃんの跡を継ぎたいって言ってた。もそもそと顔を覗かせるも、眩しくてまた目を閉じる。無理……両手で目を覆って、隙間からちらっと確認した。

 大きな体を盾にして日差しを防ぐお父さんは、赤い鱗をしている。眩しさが薄れて、ぱちぱちと瞬きした。お父さんだ! 後ろにお母さんも来ている。

「おはよう、お父さん、お母さん」

 挨拶してから、待っているベル様の口に僕の口を寄せる。ちゅっと軽く触れた。

「ベル様もおはよう」

「ああ、おはよう。顔を洗っておいで」

 ベル様に下ろしてもらい、ぺたぺたと歩いて湖を覗き込む。僕は水竜のお母さんの子だから、冷たいのは平気。もちろんお父さんが火竜だから、熱いのもヘッチャラだった。お水に手を浸して、濡れた手で顔を拭く。それからお水を顔に掛けた。いきなり冷たいのは良くないと聞いた。

 何度も顔を洗って、振り返った僕をベル様が布で拭いてくれる。びっしょり濡れた手や顎も、全部だよ。優しい手に目を閉じて、いいと許可が出るまで我慢だった。顔も拭いてもらって、ようやく眩しいのも慣れた。

「ウェパル、こちらへ来て」

 お母さんに呼ばれて、歩いて近づく。ぺたりとお腹に張り付くと、ひんやりした。お父さんだとぽかぽかする。どっちも好きだ。すりすりと青い鱗に頬をすり寄せて、ご挨拶をする。ドラゴンの愛情表現で、頬を鱗に当てる。これは家族とか、親しい人だけだって。

 僕はお母さんの子どもだから、頬をすり寄せても構わない。お父さんがそわそわしながら待っているので、お母さんへの挨拶が終わってから抱き着いた。やっぱり大きい。鱗に頬をすり寄せたら、僕の背中でお父さんとお母さんがぶつかった。

 二人一緒に頬を寄せるのは無理だと思う。僕はまだ小さくて、すりすりする面積がないから。お母さんに睨まれて、お母さんが先に挨拶してくれた。お父さんは僕のご挨拶が終わった頃、ようやく頬を当てる順番がくる。ここにお祖父ちゃん達がいると、さらにケンカになるんだ。

「ウェパル、大事なお話よ。あなたに弟か妹が出来たわ」

「……僕の、弟? 妹……どっち?」

 弟と妹、両方じゃないよね。首を傾げる僕に、お母さんは丁寧に教えてくれた。卵がお腹にいて、もうすぐ出てくる。それを温めて孵せば、中にドラゴンの赤ちゃんがいる。女の子なら妹、男の子なら弟だった。

「よかったな」

「うん!」

 ベル様に頷いて、なぜか照れているお父さんに首を傾げる。嬉しそうだからいいか。卵を孵す場所は、僕がお母さんと暮らしていた洞窟だ。僕、お兄ちゃんになるから干し草をいっぱい運ぶよ。柔らかくて細くて温かい干し草がいいな。

「絨毯も贈ろうか」

「いいの? ありがとう」

 ベル様からのお祝いということで、絨毯も貰えた。お母さんと赤ちゃん、温かく過ごせるといいな。
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