上 下
62 / 82

62.久しぶりのお家と家族

しおりを挟む
 お家に帰ると、お父さんもお母さんも待っていた。少ししたらお祖父ちゃんも飛んで来る。夕方になったら、お祖母ちゃんもご飯を捕まえてきた。大きいイノシシを皆で丸焼きにする。お父さんが張り切ってブレスを放ったら、イノシシの毛皮が全部消えた。

「馬鹿もん! 干し草に燃え移ったらどうするんじゃ」

 お祖父ちゃんに、お父さんが叱られた。いい匂いがするお肉を、僕とお母さんが剥いていく。焦げた皮はぱりぱりと落ちた。お祖母ちゃんが用意してくれた薪を並べて、そこにベル様が火をつける。ゆらゆら燃える火はお肉の表面を炙り始めた。

 いい匂いが洞窟に漂い、近くを散歩中の耳長のおねえさんが立ち寄る。一緒に食べることになった。おねえさんはハーブとお塩を混ぜた粉を取り出す。凄く美味しくなるんだって。わくわくしながら覗いていたら、目に粉が入って痛くなった。

「ベル様、ベル様! 痛い」

「おいで」

 抱き上げて、生温かいもので拭われる。涙目になったけど、ようやく開けた。海の水が入った時と同じだ。海には塩が溶けていると聞いたけど、本当に塩で同じ痛さになった。鼻を啜る僕を、ベル様がべろりと舐める。柔らかくて生温かくて優しいの、ベル様の舌だった!

 舐めたら痛くなくなるのかな。試しに腕を舐めてみたけど、よく分からなかった。ベル様が笑い、おねえさんも大笑いする。さっきまで僕に塩が掛かって慌ててたのに。おかしくなって僕も声を上げて笑う。

「焼けてきたよ」

 お祖母ちゃんの言葉で、慌ててお肉の方へ目を向けた。ベル様は僕を抱っこしたまま座り、お父さんがぶつくさ文句を言う。それをお母さんがぺちんと尻尾で叩いた。お祖母ちゃんとお祖父ちゃんは昨日たくさんご飯を食べたので、今日は少なめ。

 耳長のおねえさんがお肉の一部を切り分け、葉っぱに包んで口元へ運んだ。僕は爪で裂いたお肉をベル様に差し出す。ここはお塩が掛かって、いい匂いがするよ。ハーブという香りのする草が入っている。一番おいしい場所だと思う。そう伝えたら、半分は僕の口に戻ってきた。

「どうだ?」

「美味しい」

 両頬を手で押さえて食べた。ベル様と食べるともっと美味しいよ。にこにことご飯を食べ終え、おねえさんは帰っていった。洞窟の横穴の先まで送っていく。縦穴を上るのは大変だからね。横穴は崖にあるけど、おねえさんは風を利用してふわりと飛んだ。下にある森に着地したみたい。

「僕も出来るかな」

「魔法で風を操れるようになったら、飛んでいいぞ」

「うん」

 じゃあ、まだ先の話だね。僕が魔法で風を動かすと、凄い大きい竜巻が出来ちゃうの。下に下りるんじゃなくて、空へ巻き上げられちゃう。すでに失敗したので、ベル様がいる時に注意しながら練習する約束だった。

 久しぶりにお家のお風呂に入って、湖で口を濯いだ。それから雨の降りそうにない空を見上げ、干し草を引っ張り出す。ベル様がお風呂の片づけをしている間に、干し草を詰んでくるくると丸めた。これは奥さんのお仕事だ。

 巣が出来上がったところで、ベル様が戻ってきて褒めてくれる。家族はそれぞれにお家へ帰って、明日また一緒に過ごす予定だ。縦穴に陽が差し込んでいる時間に、お祖母ちゃんやお祖父ちゃんとお昼寝して。お父さんと狩りに行く。それとお母さんが大事なお話があるって言ってた。わくわくするね。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

【完結】僕はキミ専属の魔力付与能力者

みやこ嬢
BL
【2025/01/24 完結、ファンタジーBL】 リアンはウラガヌス伯爵家の養い子。魔力がないという理由で貴族教育を受けさせてもらえないまま18の成人を迎えた。伯爵家の兄妹に良いように使われてきたリアンにとって唯一安らげる場所は月に数度訪れる孤児院だけ。その孤児院でたまに会う友人『サイ』と一緒に子どもたちと遊んでいる間は嫌なことを全て忘れられた。 ある日、リアンに魔力付与能力があることが判明する。能力を見抜いた魔法省職員ドロテアがウラガヌス伯爵家にリアンの今後について話に行くが、何故か軟禁されてしまう。ウラガヌス伯爵はリアンの能力を利用して高位貴族に娘を嫁がせようと画策していた。 そして見合いの日、リアンは初めて孤児院以外の場所で友人『サイ』に出会う。彼はレイディエーレ侯爵家の跡取り息子サイラスだったのだ。明らかな身分の違いや彼を騙す片棒を担いだ負い目からサイラスを拒絶してしまうリアン。 「君とは対等な友人だと思っていた」 素直になれない魔力付与能力者リアンと、無自覚なままリアンをそばに置こうとするサイラス。両片想い状態の二人が様々な障害を乗り越えて幸せを掴むまでの物語です。 【独占欲強め侯爵家跡取り×ワケあり魔力付与能力者】 * * * 2024/11/15 一瞬ホトラン入ってました。感謝!

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中

きよひ
BL
 ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。  カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。  家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。  そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。  この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。 ※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳) ※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。 ※同性婚が認められている世界観です。

【完結】ただの狼です?神の使いです??

野々宮なつの
BL
気が付いたら高い山の上にいた白狼のディン。気ままに狼暮らしを満喫かと思いきや、どうやら白い生き物は神の使いらしい? 司祭×白狼(人間の姿になります) 神の使いなんて壮大な話と思いきや、好きな人を救いに来ただけのお話です。 全15話+おまけ+番外編 !地震と津波表現がさらっとですがあります。ご注意ください! 番外編更新中です。土日に更新します。

【完結】元魔王、今世では想い人を愛で倒したい!

N2O
BL
元魔王×元勇者一行の魔法使い 拗らせてる人と、猫かぶってる人のはなし。 Special thanks illustration by ろ(x(旧Twitter) @OwfSHqfs9P56560) ※独自設定です。 ※視点が変わる場合には、タイトルに◎を付けます。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

【完結】うたかたの夢

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
 ホストとして生計を立てるサリエルは、女を手玉に取る高嶺の花。どれだけ金を積まれても、美女として名高い女性相手であろうと落ちないことで有名だった。冷たく残酷な男は、ある夜1人の青年と再会を果たす。運命の歯車が軋んだ音で回り始めた。  ホスト×拾われた青年、R-15表現あり、BL、残酷描写・流血あり  ※印は性的表現あり 【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう 全33話、2019/11/27完

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

処理中です...