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62.久しぶりのお家と家族
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お家に帰ると、お父さんもお母さんも待っていた。少ししたらお祖父ちゃんも飛んで来る。夕方になったら、お祖母ちゃんもご飯を捕まえてきた。大きいイノシシを皆で丸焼きにする。お父さんが張り切ってブレスを放ったら、イノシシの毛皮が全部消えた。
「馬鹿もん! 干し草に燃え移ったらどうするんじゃ」
お祖父ちゃんに、お父さんが叱られた。いい匂いがするお肉を、僕とお母さんが剥いていく。焦げた皮はぱりぱりと落ちた。お祖母ちゃんが用意してくれた薪を並べて、そこにベル様が火をつける。ゆらゆら燃える火はお肉の表面を炙り始めた。
いい匂いが洞窟に漂い、近くを散歩中の耳長のおねえさんが立ち寄る。一緒に食べることになった。おねえさんはハーブとお塩を混ぜた粉を取り出す。凄く美味しくなるんだって。わくわくしながら覗いていたら、目に粉が入って痛くなった。
「ベル様、ベル様! 痛い」
「おいで」
抱き上げて、生温かいもので拭われる。涙目になったけど、ようやく開けた。海の水が入った時と同じだ。海には塩が溶けていると聞いたけど、本当に塩で同じ痛さになった。鼻を啜る僕を、ベル様がべろりと舐める。柔らかくて生温かくて優しいの、ベル様の舌だった!
舐めたら痛くなくなるのかな。試しに腕を舐めてみたけど、よく分からなかった。ベル様が笑い、おねえさんも大笑いする。さっきまで僕に塩が掛かって慌ててたのに。おかしくなって僕も声を上げて笑う。
「焼けてきたよ」
お祖母ちゃんの言葉で、慌ててお肉の方へ目を向けた。ベル様は僕を抱っこしたまま座り、お父さんがぶつくさ文句を言う。それをお母さんがぺちんと尻尾で叩いた。お祖母ちゃんとお祖父ちゃんは昨日たくさんご飯を食べたので、今日は少なめ。
耳長のおねえさんがお肉の一部を切り分け、葉っぱに包んで口元へ運んだ。僕は爪で裂いたお肉をベル様に差し出す。ここはお塩が掛かって、いい匂いがするよ。ハーブという香りのする草が入っている。一番おいしい場所だと思う。そう伝えたら、半分は僕の口に戻ってきた。
「どうだ?」
「美味しい」
両頬を手で押さえて食べた。ベル様と食べるともっと美味しいよ。にこにことご飯を食べ終え、おねえさんは帰っていった。洞窟の横穴の先まで送っていく。縦穴を上るのは大変だからね。横穴は崖にあるけど、おねえさんは風を利用してふわりと飛んだ。下にある森に着地したみたい。
「僕も出来るかな」
「魔法で風を操れるようになったら、飛んでいいぞ」
「うん」
じゃあ、まだ先の話だね。僕が魔法で風を動かすと、凄い大きい竜巻が出来ちゃうの。下に下りるんじゃなくて、空へ巻き上げられちゃう。すでに失敗したので、ベル様がいる時に注意しながら練習する約束だった。
久しぶりにお家のお風呂に入って、湖で口を濯いだ。それから雨の降りそうにない空を見上げ、干し草を引っ張り出す。ベル様がお風呂の片づけをしている間に、干し草を詰んでくるくると丸めた。これは奥さんのお仕事だ。
巣が出来上がったところで、ベル様が戻ってきて褒めてくれる。家族はそれぞれにお家へ帰って、明日また一緒に過ごす予定だ。縦穴に陽が差し込んでいる時間に、お祖母ちゃんやお祖父ちゃんとお昼寝して。お父さんと狩りに行く。それとお母さんが大事なお話があるって言ってた。わくわくするね。
「馬鹿もん! 干し草に燃え移ったらどうするんじゃ」
お祖父ちゃんに、お父さんが叱られた。いい匂いがするお肉を、僕とお母さんが剥いていく。焦げた皮はぱりぱりと落ちた。お祖母ちゃんが用意してくれた薪を並べて、そこにベル様が火をつける。ゆらゆら燃える火はお肉の表面を炙り始めた。
いい匂いが洞窟に漂い、近くを散歩中の耳長のおねえさんが立ち寄る。一緒に食べることになった。おねえさんはハーブとお塩を混ぜた粉を取り出す。凄く美味しくなるんだって。わくわくしながら覗いていたら、目に粉が入って痛くなった。
「ベル様、ベル様! 痛い」
「おいで」
抱き上げて、生温かいもので拭われる。涙目になったけど、ようやく開けた。海の水が入った時と同じだ。海には塩が溶けていると聞いたけど、本当に塩で同じ痛さになった。鼻を啜る僕を、ベル様がべろりと舐める。柔らかくて生温かくて優しいの、ベル様の舌だった!
舐めたら痛くなくなるのかな。試しに腕を舐めてみたけど、よく分からなかった。ベル様が笑い、おねえさんも大笑いする。さっきまで僕に塩が掛かって慌ててたのに。おかしくなって僕も声を上げて笑う。
「焼けてきたよ」
お祖母ちゃんの言葉で、慌ててお肉の方へ目を向けた。ベル様は僕を抱っこしたまま座り、お父さんがぶつくさ文句を言う。それをお母さんがぺちんと尻尾で叩いた。お祖母ちゃんとお祖父ちゃんは昨日たくさんご飯を食べたので、今日は少なめ。
耳長のおねえさんがお肉の一部を切り分け、葉っぱに包んで口元へ運んだ。僕は爪で裂いたお肉をベル様に差し出す。ここはお塩が掛かって、いい匂いがするよ。ハーブという香りのする草が入っている。一番おいしい場所だと思う。そう伝えたら、半分は僕の口に戻ってきた。
「どうだ?」
「美味しい」
両頬を手で押さえて食べた。ベル様と食べるともっと美味しいよ。にこにことご飯を食べ終え、おねえさんは帰っていった。洞窟の横穴の先まで送っていく。縦穴を上るのは大変だからね。横穴は崖にあるけど、おねえさんは風を利用してふわりと飛んだ。下にある森に着地したみたい。
「僕も出来るかな」
「魔法で風を操れるようになったら、飛んでいいぞ」
「うん」
じゃあ、まだ先の話だね。僕が魔法で風を動かすと、凄い大きい竜巻が出来ちゃうの。下に下りるんじゃなくて、空へ巻き上げられちゃう。すでに失敗したので、ベル様がいる時に注意しながら練習する約束だった。
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