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55.弾ける火山を楽しんだ

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 お風呂で、ベル様は服を脱ぐ。僕はドラゴンで鱗だから脱がない。もしかしたら、毛皮を着た生き物は、毛皮を脱いで入るのかな。そう質問したら、違うみたい。

 毛皮は僕の鱗と同じで、脱いだり着たりしない。ベル様みたいに人間に似た形で、つるつるした皮膚があると服で隠すんだって。温かいから着ているんじゃないの? 何を隠しているんだろう。

「皮膚は弱い。傷になったり虫に刺されたりする。だから服で覆う」

「ベル様も?」

 吸血鬼のおじさんも服を着ていたし、耳長のおねえさんも胸や腰に何か巻いていた。顔や手は外に出ているけど、虫に襲われないの? いっぱい疑問が出てきて、たくさん質問した。答えてもらったんだけど、僕はほとんど覚えていない。

 のぼせちゃったんだ。お風呂に長く入りすぎて、頭がぼおっとした。そのまま寝ちゃったみたい。ベル様は驚いたって言ってた。そうだよね、お風呂の中で寝たら沈んじゃう。気をつけなくちゃ。

 お風呂を出て、温かい風で体を乾かす。服を着たベル様に抱っこされた僕は、山頂の大きな穴を覗き込んでいた。お父さんの住む火山は、天辺に穴がない。代わりに横から熱い赤い川が流れていく。ここは、その赤い熱いマグマが、穴の底に溜まっていた。

 ぼこぼこと沸く音がして、腐った臭いが強い。鼻を押さえて覗き込んだ。落ちないように、ベル様の首に手を回すのは忘れない。だって、落ちたら怖い。僕は熱くても平気だけど、泳ぐのは上手じゃなかった。

「折角だ、面白いものを見せてやろう」

 ベル様はそう言って、雷の魔法を穴の底へ放った。綺麗な金色の光がギザギザしながら吸い込まれ、ぶわっと溶岩の表面が膨らむ。大きく丸くなったら、いきなり弾けた。

 周囲に小さな光がいっぱい飛ぶ。大きな音がして、目の前が明るくなった。興奮して手を伸ばし、飛んできた小さな光を掴む。でも消えちゃった。手のひらには黒い跡が残る。これは光の死体?

「ウェパルは詩人になれるぞ」

「詩人……ならないよ。ベル様の奥さんだもん」

 僕の将来は奥さんだ。詩人をしている時間はないの。弾けた光を目で追いかけて、たくさん見送った。一回弾けると、周囲にいっぱい降り注ぐ。それがまた集まって弾けた。片手くらいの回数を繰り返したら、小さくなる。もう見えない。

「凄いね、綺麗だった」

「喜んでくれてよかった」

 ベル様の頬にお礼の口付けをする。好きが大きくなったら、口付けをしてベル様にあげるの。ベル様にいっぱい気持ちをあげたら、早く奥さんになれる気がした。あげた分だけ、ベル様も僕を好きになればいいのにな。

 次は大きな海の底、見たことがないお魚がいる場所に行くんだ。最後に海にある島でゆっくりして、黄金の畑を見る。僕は旅の予定にわくわくした。
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