55 / 82
55.弾ける火山を楽しんだ
しおりを挟む
お風呂で、ベル様は服を脱ぐ。僕はドラゴンで鱗だから脱がない。もしかしたら、毛皮を着た生き物は、毛皮を脱いで入るのかな。そう質問したら、違うみたい。
毛皮は僕の鱗と同じで、脱いだり着たりしない。ベル様みたいに人間に似た形で、つるつるした皮膚があると服で隠すんだって。温かいから着ているんじゃないの? 何を隠しているんだろう。
「皮膚は弱い。傷になったり虫に刺されたりする。だから服で覆う」
「ベル様も?」
吸血鬼のおじさんも服を着ていたし、耳長のおねえさんも胸や腰に何か巻いていた。顔や手は外に出ているけど、虫に襲われないの? いっぱい疑問が出てきて、たくさん質問した。答えてもらったんだけど、僕はほとんど覚えていない。
のぼせちゃったんだ。お風呂に長く入りすぎて、頭がぼおっとした。そのまま寝ちゃったみたい。ベル様は驚いたって言ってた。そうだよね、お風呂の中で寝たら沈んじゃう。気をつけなくちゃ。
お風呂を出て、温かい風で体を乾かす。服を着たベル様に抱っこされた僕は、山頂の大きな穴を覗き込んでいた。お父さんの住む火山は、天辺に穴がない。代わりに横から熱い赤い川が流れていく。ここは、その赤い熱いマグマが、穴の底に溜まっていた。
ぼこぼこと沸く音がして、腐った臭いが強い。鼻を押さえて覗き込んだ。落ちないように、ベル様の首に手を回すのは忘れない。だって、落ちたら怖い。僕は熱くても平気だけど、泳ぐのは上手じゃなかった。
「折角だ、面白いものを見せてやろう」
ベル様はそう言って、雷の魔法を穴の底へ放った。綺麗な金色の光がギザギザしながら吸い込まれ、ぶわっと溶岩の表面が膨らむ。大きく丸くなったら、いきなり弾けた。
周囲に小さな光がいっぱい飛ぶ。大きな音がして、目の前が明るくなった。興奮して手を伸ばし、飛んできた小さな光を掴む。でも消えちゃった。手のひらには黒い跡が残る。これは光の死体?
「ウェパルは詩人になれるぞ」
「詩人……ならないよ。ベル様の奥さんだもん」
僕の将来は奥さんだ。詩人をしている時間はないの。弾けた光を目で追いかけて、たくさん見送った。一回弾けると、周囲にいっぱい降り注ぐ。それがまた集まって弾けた。片手くらいの回数を繰り返したら、小さくなる。もう見えない。
「凄いね、綺麗だった」
「喜んでくれてよかった」
ベル様の頬にお礼の口付けをする。好きが大きくなったら、口付けをしてベル様にあげるの。ベル様にいっぱい気持ちをあげたら、早く奥さんになれる気がした。あげた分だけ、ベル様も僕を好きになればいいのにな。
次は大きな海の底、見たことがないお魚がいる場所に行くんだ。最後に海にある島でゆっくりして、黄金の畑を見る。僕は旅の予定にわくわくした。
毛皮は僕の鱗と同じで、脱いだり着たりしない。ベル様みたいに人間に似た形で、つるつるした皮膚があると服で隠すんだって。温かいから着ているんじゃないの? 何を隠しているんだろう。
「皮膚は弱い。傷になったり虫に刺されたりする。だから服で覆う」
「ベル様も?」
吸血鬼のおじさんも服を着ていたし、耳長のおねえさんも胸や腰に何か巻いていた。顔や手は外に出ているけど、虫に襲われないの? いっぱい疑問が出てきて、たくさん質問した。答えてもらったんだけど、僕はほとんど覚えていない。
のぼせちゃったんだ。お風呂に長く入りすぎて、頭がぼおっとした。そのまま寝ちゃったみたい。ベル様は驚いたって言ってた。そうだよね、お風呂の中で寝たら沈んじゃう。気をつけなくちゃ。
お風呂を出て、温かい風で体を乾かす。服を着たベル様に抱っこされた僕は、山頂の大きな穴を覗き込んでいた。お父さんの住む火山は、天辺に穴がない。代わりに横から熱い赤い川が流れていく。ここは、その赤い熱いマグマが、穴の底に溜まっていた。
ぼこぼこと沸く音がして、腐った臭いが強い。鼻を押さえて覗き込んだ。落ちないように、ベル様の首に手を回すのは忘れない。だって、落ちたら怖い。僕は熱くても平気だけど、泳ぐのは上手じゃなかった。
「折角だ、面白いものを見せてやろう」
ベル様はそう言って、雷の魔法を穴の底へ放った。綺麗な金色の光がギザギザしながら吸い込まれ、ぶわっと溶岩の表面が膨らむ。大きく丸くなったら、いきなり弾けた。
周囲に小さな光がいっぱい飛ぶ。大きな音がして、目の前が明るくなった。興奮して手を伸ばし、飛んできた小さな光を掴む。でも消えちゃった。手のひらには黒い跡が残る。これは光の死体?
「ウェパルは詩人になれるぞ」
「詩人……ならないよ。ベル様の奥さんだもん」
僕の将来は奥さんだ。詩人をしている時間はないの。弾けた光を目で追いかけて、たくさん見送った。一回弾けると、周囲にいっぱい降り注ぐ。それがまた集まって弾けた。片手くらいの回数を繰り返したら、小さくなる。もう見えない。
「凄いね、綺麗だった」
「喜んでくれてよかった」
ベル様の頬にお礼の口付けをする。好きが大きくなったら、口付けをしてベル様にあげるの。ベル様にいっぱい気持ちをあげたら、早く奥さんになれる気がした。あげた分だけ、ベル様も僕を好きになればいいのにな。
次は大きな海の底、見たことがないお魚がいる場所に行くんだ。最後に海にある島でゆっくりして、黄金の畑を見る。僕は旅の予定にわくわくした。
29
お気に入りに追加
475
あなたにおすすめの小説
異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。
やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。
昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと?
前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。
*ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。
*フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。
*男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
侯爵令息、はじめての婚約破棄
muku
BL
侯爵家三男のエヴァンは、家庭教師で魔術師のフィアリスと恋仲であった。
身分違いでありながらも両想いで楽しい日々を送っていた中、男爵令嬢ティリシアが、エヴァンと自分は婚約する予定だと言い始める。
ごたごたの末にティリシアは相思相愛のエヴァンとフィアリスを応援し始めるが、今度は尻込みしたフィアリスがエヴァンとティリシアが結婚するべきではと迷い始めてしまう。
両想い師弟の、両想いを確かめるための面倒くさい戦いが、ここに幕を開ける。
※全年齢向け作品です。
人生に脇役はいないと言うけれど。
月芝
BL
剣? そんなのただの街娘に必要なし。
魔法? 天性の才能に恵まれたごく一部の人だけしか使えないよ、こんちくしょー。
モンスター? 王都生まれの王都育ちの塀の中だから見たことない。
冒険者? あんなの気力体力精神力がズバ抜けた奇人変人マゾ超人のやる職業だ!
女神さま? 愛さえあれば同性異性なんでもござれ。おかげで世界に愛はいっぱいさ。
なのにこれっぽっちも回ってこないとは、これいかに?
剣と魔法のファンタジーなのに、それらに縁遠い宿屋の小娘が、姉が結婚したので
実家を半ば強制的に放出され、住み込みにて王城勤めになっちゃった。
でも煌びやかなイメージとは裏腹に色々あるある城の中。
わりとブラックな職場、わりと過激な上司、わりとしたたかな同僚らに囲まれて、
モミモミ揉まれまくって、さあ、たいへん!
やたらとイケメン揃いの騎士たち相手の食堂でお仕事に精を出していると、聞えてくるのは
あんなことやこんなこと……、おかげで微妙に仕事に集中できやしねえ。
ここにはヒロインもヒーローもいやしない。
それでもどっこい生きている。
噂話にまみれつつ毎日をエンジョイする女の子の伝聞恋愛ファンタジー。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
音楽の神と呼ばれた俺。なんか殺されて気づいたら転生してたんだけど⁉(完)
柿の妖精
BL
俺、牧原甲はもうすぐ二年生になる予定の大学一年生。牧原家は代々超音楽家系で、小さいころからずっと音楽をさせられ、今まで音楽の道を進んできた。そのおかげで楽器でも歌でも音楽に関することは何でもできるようになり、まわりからは、音楽の神と呼ばれていた。そんなある日、大学の友達からバンドのスケットを頼まれてライブハウスへとつながる階段を下りていたら後ろから背中を思いっきり押されて死んでしまった。そして気づいたら代々超芸術家系のメローディア公爵家のリトモに転生していた!?まぁ音楽が出来るなら別にいっか!
そんな音楽の神リトモと呪いにかけられた第二王子クオレの恋のお話。
完全処女作です。温かく見守っていただけると嬉しいです。<(_ _)>
悪役令息に誘拐されるなんて聞いてない!
晴森 詩悠
BL
ハヴィことハヴィエスは若くして第二騎士団の副団長をしていた。
今日はこの国王太子と幼馴染である親友の婚約式。
従兄弟のオルトと共に警備をしていたが、どうやら婚約式での会場の様子がおかしい。
不穏な空気を感じつつ会場に入ると、そこにはアンセルが無理やり床に押し付けられていたーー。
物語は完結済みで、毎日10時更新で最後まで読めます。(全29話+閉話)
(1話が大体3000字↑あります。なるべく2000文字で抑えたい所ではありますが、あんこたっぷりのあんぱんみたいな感じなので、短い章が好きな人には先に謝っておきます、ゴメンネ。)
ここでは初投稿になりますので、気になったり苦手な部分がありましたら速やかにソッ閉じの方向で!(土下座
性的描写はありませんが、嗜好描写があります。その時は▷がついてそうな感じです。
好き勝手描きたいので、作品の内容の苦情や批判は受け付けておりませんので、ご了承下されば幸いです。
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる