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37.巣のそばでブレスはダメ
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お家はいっぱいの魔族が集まっている。僕は巣の上に下ろされ、そこにベル様は魔法を用意した。魔法陣という丸と模様が組み合わさった絵を描く。空中なのに、ぴたっと固定された。
「治癒の魔法陣だ。可能な限り出ないでくれ」
「うん」
頷いたけど、準備をしている人を見ると羨ましい。僕も行きたかったな。ケガしたから置いていかれる。今度は人間に出会ってもケガしないよう、強くなろう。お母さんに新しいブレスを教えてもらわないと。ぐっと拳を握って気合いを入れる。
右手はまだ曲がってるから、左手でやった。困ったように眉尻を下げて、ベル様が僕の頬と額に口付けをくれた。顔を近づけたまま、ベル様は自分の頬を指で突く。はっとして、僕の口を触れさせた。
「行ってくる、ウェパル」
「頑張ってね、ベル様」
笑顔で左手を振った。こっちの手は無事だから動かしても平気。ベル様は頷いて、魔族をまとめて魔法で移動させた。
「オリアスが嫉妬して大変……ふふっ」
お母さんが変なことを言う。お父さんが嫉妬してるの? お母さんのことが好きなのに、もしかして!
「お父さんはベル様が好きなの?」
ぶほっ、近くにいた数人が飲み物を吹き出した。僕は驚いて目を見開く。変な虫でも入ってたのかな?
「オリアスは、ウェパルが大好きなのよ。魔王様に取られたと思ったんでしょうね」
「僕、取られてないよ。自分で行ったんだもん」
好きだから一緒にいるのは、伴侶だって聞いた。夫婦なんだよ。お父さんも好きだけど、ベル様はもっと特別に好きだ。そう説明したら、近くにいた耳長のおねえさんが笑って頭を撫でた。
「特別な好きは大事にしなさい。きっと幸せになれるわ」
「分かった」
僕は魔法陣の下にいた。ここなら治癒の魔法があるから、ゆっくりだけど傷が治る。それに痛くないんだ。離れていても魔法が消えないなんて、ベル様はすごく強いんだと思う。お母さんは巣をぐるりと点検して、上手に出来たと褒めた。
「立派なお嫁さんね」
「うん……」
本当は奥さんなんだけど。お嫁さんも綺麗な響きだからいいかな。お祖母ちゃんが、縦穴から飛び立った。ご飯を探しに行ったみたい。種族がいっぱいいるから、ここに残った人が手分けして狩りに出かけた。
「みな、どうやって連れていかれたの?」
「私はお散歩していたら捕まったの」
「俺も、網を投げられた」
耳長の子と魔狼の子は、それぞれお母さんに抱っこされて話す。安心できるよね。僕も巣ごとお母さんに包まれて安心だもん。
他の子もほとんどは一人でいたところを攫われ、変な首輪や足輪で力が使えなかったんだって。僕に投げた鎖の先にも小さな輪がついていた。もしあれを足にはめられたら、動けなかったのかも? 嫌だな、全部壊れちゃえばいいのに。
卵は、巣から盗まれたみたい。翼の人が教えてくれた。群れを襲う人間がいて、倒しに皆で向かった。追い払って戻ったら、卵が盗まれていたんだ。酷いことをするよね。卵はお母さん達が温めないと孵らないんだよ。
無事で良かったと猫耳のおにいさんが笑った。ここで話が変わる。
「ところで、もうブレスを使ったんだって? すごいな」
褒められて、嬉しくなった僕は小さなブレスを噴く。お母さんは大喜びだけど、巣の端がちょっと焦げちゃった。巣の近くではブレスはやめよう。
「治癒の魔法陣だ。可能な限り出ないでくれ」
「うん」
頷いたけど、準備をしている人を見ると羨ましい。僕も行きたかったな。ケガしたから置いていかれる。今度は人間に出会ってもケガしないよう、強くなろう。お母さんに新しいブレスを教えてもらわないと。ぐっと拳を握って気合いを入れる。
右手はまだ曲がってるから、左手でやった。困ったように眉尻を下げて、ベル様が僕の頬と額に口付けをくれた。顔を近づけたまま、ベル様は自分の頬を指で突く。はっとして、僕の口を触れさせた。
「行ってくる、ウェパル」
「頑張ってね、ベル様」
笑顔で左手を振った。こっちの手は無事だから動かしても平気。ベル様は頷いて、魔族をまとめて魔法で移動させた。
「オリアスが嫉妬して大変……ふふっ」
お母さんが変なことを言う。お父さんが嫉妬してるの? お母さんのことが好きなのに、もしかして!
「お父さんはベル様が好きなの?」
ぶほっ、近くにいた数人が飲み物を吹き出した。僕は驚いて目を見開く。変な虫でも入ってたのかな?
「オリアスは、ウェパルが大好きなのよ。魔王様に取られたと思ったんでしょうね」
「僕、取られてないよ。自分で行ったんだもん」
好きだから一緒にいるのは、伴侶だって聞いた。夫婦なんだよ。お父さんも好きだけど、ベル様はもっと特別に好きだ。そう説明したら、近くにいた耳長のおねえさんが笑って頭を撫でた。
「特別な好きは大事にしなさい。きっと幸せになれるわ」
「分かった」
僕は魔法陣の下にいた。ここなら治癒の魔法があるから、ゆっくりだけど傷が治る。それに痛くないんだ。離れていても魔法が消えないなんて、ベル様はすごく強いんだと思う。お母さんは巣をぐるりと点検して、上手に出来たと褒めた。
「立派なお嫁さんね」
「うん……」
本当は奥さんなんだけど。お嫁さんも綺麗な響きだからいいかな。お祖母ちゃんが、縦穴から飛び立った。ご飯を探しに行ったみたい。種族がいっぱいいるから、ここに残った人が手分けして狩りに出かけた。
「みな、どうやって連れていかれたの?」
「私はお散歩していたら捕まったの」
「俺も、網を投げられた」
耳長の子と魔狼の子は、それぞれお母さんに抱っこされて話す。安心できるよね。僕も巣ごとお母さんに包まれて安心だもん。
他の子もほとんどは一人でいたところを攫われ、変な首輪や足輪で力が使えなかったんだって。僕に投げた鎖の先にも小さな輪がついていた。もしあれを足にはめられたら、動けなかったのかも? 嫌だな、全部壊れちゃえばいいのに。
卵は、巣から盗まれたみたい。翼の人が教えてくれた。群れを襲う人間がいて、倒しに皆で向かった。追い払って戻ったら、卵が盗まれていたんだ。酷いことをするよね。卵はお母さん達が温めないと孵らないんだよ。
無事で良かったと猫耳のおにいさんが笑った。ここで話が変わる。
「ところで、もうブレスを使ったんだって? すごいな」
褒められて、嬉しくなった僕は小さなブレスを噴く。お母さんは大喜びだけど、巣の端がちょっと焦げちゃった。巣の近くではブレスはやめよう。
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