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36.見せしめはどこの店が閉まるのか

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 お家に着いた僕達を、皆が取り囲んだ。お祖父ちゃんとお祖母ちゃんも来ている。吸血鬼のおじさん、翼の手のおねえさんと耳長のおにいさん。他にも魔狼や獣人の人もいた。

「これで揃ったか?」

 卵を二つ、差し出したベル様が確認する。一番初めのお部屋で会った子も、ここにいた。吸血鬼のおじさんが連れてきたの。ベル様に抱っこされた僕に近づいたお母さんが悲鳴をあげた。

「きゃああああぁ! ウェパルの背中……傷がっ!」

 まだ塞がってないから、びっくりさせちゃった。慌ててお母さんに手を伸ばそうとしたけど、傷が引っ張られたから我慢する。

「お母さん、いまは痛くないの。ベル様が治してくれるから平気だよ」

 泣きながら頷くお母さんを、お父さんがそっと抱き寄せた。尻尾で優しく包んで、ぽんぽんと背中を叩く。仲良ししていたら、お母さんも落ち着いたみたい。

「ケガは俺のミスだ」

 すまなかったとベル様が詫びる。でも違うんだよ、僕は人間にやられたの! そう訴えた。背中の傷が深いし、まだ右手は全部治ってないけど。左手を振り回して精一杯伝えた。

「僕はちゃんと戦ったよ、強いドラゴンの子だもん。人間もブレス……! あ、僕、ブレスができたんだ。火のブレスがぶわって出て、人間をやっつけたの」

 お父さんが目を輝かせて「よくやった」と褒めてくれた。ブレスができれば、一人前の竜なんだ。人間を二匹やっつけて、あと一匹はベル様が小さく切った。説明する間に、助かった子が近づてくる。

「ありがとう、ございました……魔王様」

 耳長の子がお礼を言ったら、他の子も頭を下げた。ベル様は素っ気なく、「ああ」と答える。でも嬉しそうだった。僕はベル様の代わりに尻尾を大きく振る。まだ背中が引き連れて変な感じするけど、痛みがないだけで楽だった。

「人間は子どもを攫って何をするんだ?」

 ベル様の疑問に、吸血鬼のおじさんが答える。魔族はこういうとき、子どもをのけ者にしない。一緒に聞くのは同族の証なんだ。嫌なら耳を塞いだらいいんだから。

「酷い場合は実験材料などで殺されます。生きていても奴隷扱いだったり、皮を剥がれた者も」

「……見せしめが必要だ」

 ベル様はそれ以上酷い部分を察して、遮った。皮を取るなんて、痛いし苦しい。その後も困るのに、どうして人間は悪いことをするんだろう。

 ベル様は厳しい顔で店を閉めると言った。どこのお店? 首を傾げる僕にベル様は変な顔をする。尋ねない方がいいかな。なんとなく、そう感じた。

「人間の城を俺が叩く」

 一人で行くと宣言したら、せっかくだから大勢で行こうと決まった。吸血鬼のおじさんが希望者を募る。お祖父さんとお父さんは参加を決めたけど、お母さんはお留守番。僕も置いていかれる。

「一緒がいいな」

 ベル様に笑顔でお願いしたけど、今回はケガをしているからダメだった。ゆっくり治しているのは、成長した後でまた痛くならないようにだって。心配だと言われたら、僕も分かる。待ってるのも奥さんの仕事なんでしょ? 気をつけて、早く帰ってきてね。
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