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28.僕も黒い竜ならよかったのに
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ベル様を魔族の人がいっぱい訪ねてくる。だから前の日にちゃんと誰が来るか聞いて、準備をしないといけないの。お母さんやお祖母ちゃんに教えてもらったんだ。巨人のおねえさんが来るから、今朝は狩りに出かけた。大きい牛を捕まえたの。黒くて艶のある毛だった。
ベル様は黒い。肌は艶がある黒だし、髪の毛は長くて足元まであった。全部黒いのに、服も黒が好きなの。だから上から下まで真っ黒だった。僕は鱗が銀だから、ベル様に抱っこされると目立つみたい。その話をされて、僕はちょっとだけ不満に思った。
黒かったらよかったのに。同じ色になりたいな。そう呟いたら、ベル様は笑って頭を撫でる。別の色がいいんだって。皆、違うからお互いを好きになる。優しい声で教えてもらった。
魔族は種族の枠が小さくて、いっぱい種類がある。ドラゴンだって、火と水と土がいるし。風の魔法は全員使うけど、それぞれ得意な魔法が違う。吸血鬼も三種類いるんだ。巨人は大きいけど、やや小さい種類もいるんだよ。少しずつ、皆が違ってて普通みたい。
「下処理はするのか?」
「ううん、このままなの。巨人はお持ち帰りなんだよ」
お祖母ちゃんに聞いた話を、ベル様に教える。吸血鬼のおじさんは目の前で食べたけど、巨人のおねえさんはいつも持ち帰った。人前で齧るのが恥ずかしいみたい。僕はあまり知らないけど、人によって恥ずかしいが違うのは分かるよ。
「ならば繋いでおくか」
生きたまま連れてきたので、首に紐を付けて逃げないように木に繋いだ。大人しく草を食べている。僕から見ると大きな牛だけど、巨人のおねえさんが持つと小さい。足りなかったら困るな。
「来たぞ」
ベル様に促され、縦穴の上を見上げる。巨人のおねえさんは、身軽に飛び降りた。どしんと地面が揺れて、牛がびっくりして騒ぎ出す。お土産用と説明したら喜んでくれた。僕が捕まえたんだ! 運ぶのはベル様だったけど。
訪ねてくる人がたくさんいるのは、ベル様が頼られている証拠だった。お母さんが言ってたから、間違いないよ。僕のベル様は皆に信頼されている。嬉しいけど、ちょっとだけ……本当にちょっとだけね。僕の旦那さんなのに、と思う。でも言わない。僕はいい奥さんになるんだから。
難しい話の間、僕はベル様のお膝に座る。今日は縦抱っこだった。ベル様の肩に顎を乗せて、抱き着いたままで眠る。背中を叩くベル様の手が気持ちよくて、尻尾がゆらりと動いた。
お話が終わったおねえさんが帰るのを見送る。牛をひょいっと担いだおねえさんは、僕に「愛されて、幸せになりなさい」と笑う。大きく頷いて、帰っていくおねえさんに大きく手を振った。縦穴をよじ登って帰ったけど……少し壁が壊れたみたい。
「安心しろ、すぐに直る」
ベル様が事前にかけた魔法で、元の姿に戻るんだ。明日の朝までかかるけど、直るならいいよね。今日は雨が降りそうだから、洞窟の中で眠ることにした。巣が二つもあるなんて、贅沢で幸せなこと。僕はベル様にくっついて目を閉じる。
夜中にふと目が覚めて、ベル様の黒い顔をじっくり眺めた。今なら届く。そう思ったら我慢できなくて、ゆっくり顔を寄せる。唇にちゅっと音をさせて口を押し付けた。ベル様が起きないか確認してもう一回。満足した僕は、ベル様の首の横に顔を埋めた。
ベル様は黒い。肌は艶がある黒だし、髪の毛は長くて足元まであった。全部黒いのに、服も黒が好きなの。だから上から下まで真っ黒だった。僕は鱗が銀だから、ベル様に抱っこされると目立つみたい。その話をされて、僕はちょっとだけ不満に思った。
黒かったらよかったのに。同じ色になりたいな。そう呟いたら、ベル様は笑って頭を撫でる。別の色がいいんだって。皆、違うからお互いを好きになる。優しい声で教えてもらった。
魔族は種族の枠が小さくて、いっぱい種類がある。ドラゴンだって、火と水と土がいるし。風の魔法は全員使うけど、それぞれ得意な魔法が違う。吸血鬼も三種類いるんだ。巨人は大きいけど、やや小さい種類もいるんだよ。少しずつ、皆が違ってて普通みたい。
「下処理はするのか?」
「ううん、このままなの。巨人はお持ち帰りなんだよ」
お祖母ちゃんに聞いた話を、ベル様に教える。吸血鬼のおじさんは目の前で食べたけど、巨人のおねえさんはいつも持ち帰った。人前で齧るのが恥ずかしいみたい。僕はあまり知らないけど、人によって恥ずかしいが違うのは分かるよ。
「ならば繋いでおくか」
生きたまま連れてきたので、首に紐を付けて逃げないように木に繋いだ。大人しく草を食べている。僕から見ると大きな牛だけど、巨人のおねえさんが持つと小さい。足りなかったら困るな。
「来たぞ」
ベル様に促され、縦穴の上を見上げる。巨人のおねえさんは、身軽に飛び降りた。どしんと地面が揺れて、牛がびっくりして騒ぎ出す。お土産用と説明したら喜んでくれた。僕が捕まえたんだ! 運ぶのはベル様だったけど。
訪ねてくる人がたくさんいるのは、ベル様が頼られている証拠だった。お母さんが言ってたから、間違いないよ。僕のベル様は皆に信頼されている。嬉しいけど、ちょっとだけ……本当にちょっとだけね。僕の旦那さんなのに、と思う。でも言わない。僕はいい奥さんになるんだから。
難しい話の間、僕はベル様のお膝に座る。今日は縦抱っこだった。ベル様の肩に顎を乗せて、抱き着いたままで眠る。背中を叩くベル様の手が気持ちよくて、尻尾がゆらりと動いた。
お話が終わったおねえさんが帰るのを見送る。牛をひょいっと担いだおねえさんは、僕に「愛されて、幸せになりなさい」と笑う。大きく頷いて、帰っていくおねえさんに大きく手を振った。縦穴をよじ登って帰ったけど……少し壁が壊れたみたい。
「安心しろ、すぐに直る」
ベル様が事前にかけた魔法で、元の姿に戻るんだ。明日の朝までかかるけど、直るならいいよね。今日は雨が降りそうだから、洞窟の中で眠ることにした。巣が二つもあるなんて、贅沢で幸せなこと。僕はベル様にくっついて目を閉じる。
夜中にふと目が覚めて、ベル様の黒い顔をじっくり眺めた。今なら届く。そう思ったら我慢できなくて、ゆっくり顔を寄せる。唇にちゅっと音をさせて口を押し付けた。ベル様が起きないか確認してもう一回。満足した僕は、ベル様の首の横に顔を埋めた。
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