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09.ベル様の肌に模様があるよ
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お祖父ちゃんが「いいよ」と決めたから、僕はベル様の伴侶になった。でもベル様は不思議なことを言う。
「ウェパルが大きくなるまで、両親と一緒に過ごせばいい」
「うん……ベル様も一緒?」
「そうだな。一緒にいるさ」
一緒に暮らすのは家族だよ。伴侶は家族なのかな? 僕は首を傾げながら、ベル様の腕にしがみついた。見上げると、すごく綺麗な顔がある。黒い肌はカッコいいし、よく見たら模様もあった。気になって手を伸ばす。ベル様は避けなかった。
「どうした」
「この模様なぁに? 僕にも出てくる?」
お揃いだといいな。カッコいい。そう思いながら尋ねたら、ベル様が首を傾げた。あれ? 自分のことなのに知らないのかも。お祖父ちゃんの洞窟は氷がある。奥に宝物を凍らせてるんだよ。時々勝手に入った泥棒が一緒に凍るの。お祖父ちゃんは文句を言いながら削って捨てていた。
その氷は表面が艶々で、僕の顔が映るんだ。だからベル様も見えると思う。行こうと促して、奥の部屋に入った。洞窟の奥の奥、一番奥の宝物のお部屋の手前へ案内する。
「もう少し……この辺。ベル様のほら、ここのところ」
先が丸いトカゲみたいな指先で示す。分かりにくいかと心配したけど、ベル様はすぐに気付いたみたい。自分でも指でなぞって、不思議そうな顔をした。
「こんな模様、なかったと思うが……」
ベル様が言うには、自分の顔が好きじゃないんだって。だからあまり鏡や湖で見たことがなくて、元から模様があったか分からない。森にある蔓がたくさん絡まったような模様は、肌より黒く浮き出ていた。
「僕もこの模様ほしい」
「……そうか」
なぜか、ベル様は安心した顔をする。この模様、たくさん撫でたら僕に移動しないかな。でもベル様から模様が消えるのも嫌だし、撫でて僕の顔に擦ったら同じ模様になるかも! いい考えのような気がして、ぺたぺたと触った。
お祖父ちゃん達がいる部屋に戻る間、ずっとぺたぺたする。ベル様はダメだと言わなかったけど、お母さんに「人さまのお顔に勝手に触れてはいけません」と叱られた。お父さんも困った顔をしている。
「ベル様、ダメ?」
「俺ならいいが、他の奴はダメだ」
難しい。ベル様はいい。でも他の人はダメ……他の人にお母さん達は含まれるの? 尋ねたら、家族は別だって。えっと、家族とベル様はいい。でも別の人には勝手に触らない。ちゃんと覚えたよ。
「この子は……本当にわかっているのか」
お父さんががくりと肩を落とす。大丈夫だよ、僕のそばにはベル様がいるから。間違う前に直してくれると思う。ぶんぶんと尻尾を振ったら、お祖父ちゃんが「仲が良くて何よりだ」と笑った。
「お祖母ちゃんのお家にもご挨拶いく?」
僕は場所を知ってるから、ちゃんとご案内出来る。胸を張ってそう主張したら、ベル様が頷いた。お母さんのお母さんだよ。緑色と茶色のドラゴンなの。お祖父ちゃんと同じくらい大きくて、立派なんだ。説明しながら、僕はベル様に抱っこされて洞窟を出た。
「どっちだ?」
「あっち」
指さしたのは大きな山、あの山がお祖母ちゃんの家なんだ。中は全部大きな洞窟になっていて、お祖母ちゃんと同じ緑や茶色のドラゴンがたくさん住んでいる。説明する間に、ベル様がふわりと飛び降りた。まだ一人で飛べない僕はぎゅっとしがみ付いた。
ベル様……背中に翼がある。鳥みたいだけど青く光る黒い翼だよ。その翼を傾けると方角が変わる。下から吹いて来る風に乗って、僕を抱いたベル様はお祖母ちゃん家の方へ向かった。
お祖母ちゃん、元気かな!
「ウェパルが大きくなるまで、両親と一緒に過ごせばいい」
「うん……ベル様も一緒?」
「そうだな。一緒にいるさ」
一緒に暮らすのは家族だよ。伴侶は家族なのかな? 僕は首を傾げながら、ベル様の腕にしがみついた。見上げると、すごく綺麗な顔がある。黒い肌はカッコいいし、よく見たら模様もあった。気になって手を伸ばす。ベル様は避けなかった。
「どうした」
「この模様なぁに? 僕にも出てくる?」
お揃いだといいな。カッコいい。そう思いながら尋ねたら、ベル様が首を傾げた。あれ? 自分のことなのに知らないのかも。お祖父ちゃんの洞窟は氷がある。奥に宝物を凍らせてるんだよ。時々勝手に入った泥棒が一緒に凍るの。お祖父ちゃんは文句を言いながら削って捨てていた。
その氷は表面が艶々で、僕の顔が映るんだ。だからベル様も見えると思う。行こうと促して、奥の部屋に入った。洞窟の奥の奥、一番奥の宝物のお部屋の手前へ案内する。
「もう少し……この辺。ベル様のほら、ここのところ」
先が丸いトカゲみたいな指先で示す。分かりにくいかと心配したけど、ベル様はすぐに気付いたみたい。自分でも指でなぞって、不思議そうな顔をした。
「こんな模様、なかったと思うが……」
ベル様が言うには、自分の顔が好きじゃないんだって。だからあまり鏡や湖で見たことがなくて、元から模様があったか分からない。森にある蔓がたくさん絡まったような模様は、肌より黒く浮き出ていた。
「僕もこの模様ほしい」
「……そうか」
なぜか、ベル様は安心した顔をする。この模様、たくさん撫でたら僕に移動しないかな。でもベル様から模様が消えるのも嫌だし、撫でて僕の顔に擦ったら同じ模様になるかも! いい考えのような気がして、ぺたぺたと触った。
お祖父ちゃん達がいる部屋に戻る間、ずっとぺたぺたする。ベル様はダメだと言わなかったけど、お母さんに「人さまのお顔に勝手に触れてはいけません」と叱られた。お父さんも困った顔をしている。
「ベル様、ダメ?」
「俺ならいいが、他の奴はダメだ」
難しい。ベル様はいい。でも他の人はダメ……他の人にお母さん達は含まれるの? 尋ねたら、家族は別だって。えっと、家族とベル様はいい。でも別の人には勝手に触らない。ちゃんと覚えたよ。
「この子は……本当にわかっているのか」
お父さんががくりと肩を落とす。大丈夫だよ、僕のそばにはベル様がいるから。間違う前に直してくれると思う。ぶんぶんと尻尾を振ったら、お祖父ちゃんが「仲が良くて何よりだ」と笑った。
「お祖母ちゃんのお家にもご挨拶いく?」
僕は場所を知ってるから、ちゃんとご案内出来る。胸を張ってそう主張したら、ベル様が頷いた。お母さんのお母さんだよ。緑色と茶色のドラゴンなの。お祖父ちゃんと同じくらい大きくて、立派なんだ。説明しながら、僕はベル様に抱っこされて洞窟を出た。
「どっちだ?」
「あっち」
指さしたのは大きな山、あの山がお祖母ちゃんの家なんだ。中は全部大きな洞窟になっていて、お祖母ちゃんと同じ緑や茶色のドラゴンがたくさん住んでいる。説明する間に、ベル様がふわりと飛び降りた。まだ一人で飛べない僕はぎゅっとしがみ付いた。
ベル様……背中に翼がある。鳥みたいだけど青く光る黒い翼だよ。その翼を傾けると方角が変わる。下から吹いて来る風に乗って、僕を抱いたベル様はお祖母ちゃん家の方へ向かった。
お祖母ちゃん、元気かな!
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