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04.伴侶に貰い受けたい
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お父さんとお母さん、その間に僕が座る。お父さん達は人間みたいな姿になった。肌は鱗があるし、尻尾もあるけど。頭一個分くらい高くて、お父さんはがっちりしていた。
お母さんはすらりとして、お胸が膨らむ。ドラゴンは服を着ないけど、鱗は顔や手の先以外を覆っていた。僕はまだこの人化はできない。魔法なんだけど、難しいんだ。練習した時は頭だけ人っぽくなったりしたよ。
ベル様は用意された絨毯の上に足を組んで座った。あれ、お祖父ちゃんやお父さんがしてるやつ! 僕も真似したけど、後ろに転がっちゃう。大人になって足が長くなったら、僕もやってみたい。
「ウェパルを俺の伴侶に貰い受けたい。了承してもらえるか」
「……え?」
「はい?」
二人揃って変な声が出た。左右をきょろきょろ見て、正面のベル様に向き直る。手招きするから、お尻を上げてぺたぺたと近づいた。慌てたお父さんが「こら」と手を伸ばすけど、もうベル様のお膝だよ。
近づいた僕のお腹の脇を持って、お膝に乗せてくれた。向きがくるんと逆になって、今度はお父さん達と向かい合う。組んだ足の真ん中はくぼんで、座りやすいの。
「えっと……嫁に、ですか?」
「男の子ですが……」
困惑したお母さんは確認し、お父さんは当たり前のことを言った。そうだよ、僕は雄だから男の子なんだ。
「知っている。だが俺をこの世界に呼んだのは、ウェパルだ」
名前を呼ばれると、ぞくっとする。背中の真ん中の棘がある鱗の下が、ざわざわと揺れる感じ。お父さん達が呼んでも平気なのに、ベル様が呼ぶとゾクゾクしちゃう。気持ちいいのと、困る感じと、あとは嬉しい?
自分でもよくわからないけど、僕はベル様が特別なんだと思う。だって、すごく強くて綺麗で黒くて……えっと、強くて偉いんだもん。絶対に特別な人なんだよ。お父さんやお母さんも頭を下げて挨拶していたし。
「ベル様」
「なんだ?」
「はいりょって何?」
「配慮……伴侶のことか」
「うん」
ちょっと違ったみたい。もじもじと指を弄っていると、くすっと笑って額にキスをくれた。上からだよ? 嬉しくて笑う。
「……まさか、もう……手を?」
「いや。さすがに両親の許しなく手を出したりはせぬ。そもそも幼すぎるゆえ」
ベル様は僕と話す時以外、難しい言い方をする。半分くらいわからないので、首を傾げたら横に倒れた。すぐに手が伸びて、支えてくれたけど。その手がひんやりしてて、でも触れていると温かくなってくる。気持ちいい。
頬をすりすりしていると、お母さんが「あらまあ」と笑った。
「あなた、ウェパル自身が選ぶことですわ」
「分かっている! が、さすがに早すぎる」
「あなたも私が幼竜だった頃に、攫いに来たではありませんか」
お母さん、お父さんに攫われてたの? げほっと変な咳をして、お父さんが赤くなった。鱗の隙間も全部赤いの、照れたのかな。
「そんなに早くなかったぞ」
文句を言うお父さんだけど、いつもみたいな迫力がなかった。お母さんの勝ちっぽい。ベル様の手に撫でてもらいながら、僕は目を細めた。そう、その目の横の辺りが気持ちいいの。丁寧に指で撫でられると、尻尾がゆらゆらと動いた。
「手離し難く思うのも当然よ、これほど愛らしいのだからな。良ければ、俺がこの世界に留まろう。未来は分からぬが、それで手を打て」
「「はい」」
眠くなった僕の目が閉じていく。ベル様は一緒にいてくれるの? お父さんやお母さんも一緒? その後、お祖父ちゃんの名前が出てきたり、お祖母ちゃんの家の位置を話したり。ぼんやりと聞いた。
目が覚めてもベル様といたいから、ぎゅっと指を掴んで眠る。離さないようにしなくちゃ。
お母さんはすらりとして、お胸が膨らむ。ドラゴンは服を着ないけど、鱗は顔や手の先以外を覆っていた。僕はまだこの人化はできない。魔法なんだけど、難しいんだ。練習した時は頭だけ人っぽくなったりしたよ。
ベル様は用意された絨毯の上に足を組んで座った。あれ、お祖父ちゃんやお父さんがしてるやつ! 僕も真似したけど、後ろに転がっちゃう。大人になって足が長くなったら、僕もやってみたい。
「ウェパルを俺の伴侶に貰い受けたい。了承してもらえるか」
「……え?」
「はい?」
二人揃って変な声が出た。左右をきょろきょろ見て、正面のベル様に向き直る。手招きするから、お尻を上げてぺたぺたと近づいた。慌てたお父さんが「こら」と手を伸ばすけど、もうベル様のお膝だよ。
近づいた僕のお腹の脇を持って、お膝に乗せてくれた。向きがくるんと逆になって、今度はお父さん達と向かい合う。組んだ足の真ん中はくぼんで、座りやすいの。
「えっと……嫁に、ですか?」
「男の子ですが……」
困惑したお母さんは確認し、お父さんは当たり前のことを言った。そうだよ、僕は雄だから男の子なんだ。
「知っている。だが俺をこの世界に呼んだのは、ウェパルだ」
名前を呼ばれると、ぞくっとする。背中の真ん中の棘がある鱗の下が、ざわざわと揺れる感じ。お父さん達が呼んでも平気なのに、ベル様が呼ぶとゾクゾクしちゃう。気持ちいいのと、困る感じと、あとは嬉しい?
自分でもよくわからないけど、僕はベル様が特別なんだと思う。だって、すごく強くて綺麗で黒くて……えっと、強くて偉いんだもん。絶対に特別な人なんだよ。お父さんやお母さんも頭を下げて挨拶していたし。
「ベル様」
「なんだ?」
「はいりょって何?」
「配慮……伴侶のことか」
「うん」
ちょっと違ったみたい。もじもじと指を弄っていると、くすっと笑って額にキスをくれた。上からだよ? 嬉しくて笑う。
「……まさか、もう……手を?」
「いや。さすがに両親の許しなく手を出したりはせぬ。そもそも幼すぎるゆえ」
ベル様は僕と話す時以外、難しい言い方をする。半分くらいわからないので、首を傾げたら横に倒れた。すぐに手が伸びて、支えてくれたけど。その手がひんやりしてて、でも触れていると温かくなってくる。気持ちいい。
頬をすりすりしていると、お母さんが「あらまあ」と笑った。
「あなた、ウェパル自身が選ぶことですわ」
「分かっている! が、さすがに早すぎる」
「あなたも私が幼竜だった頃に、攫いに来たではありませんか」
お母さん、お父さんに攫われてたの? げほっと変な咳をして、お父さんが赤くなった。鱗の隙間も全部赤いの、照れたのかな。
「そんなに早くなかったぞ」
文句を言うお父さんだけど、いつもみたいな迫力がなかった。お母さんの勝ちっぽい。ベル様の手に撫でてもらいながら、僕は目を細めた。そう、その目の横の辺りが気持ちいいの。丁寧に指で撫でられると、尻尾がゆらゆらと動いた。
「手離し難く思うのも当然よ、これほど愛らしいのだからな。良ければ、俺がこの世界に留まろう。未来は分からぬが、それで手を打て」
「「はい」」
眠くなった僕の目が閉じていく。ベル様は一緒にいてくれるの? お父さんやお母さんも一緒? その後、お祖父ちゃんの名前が出てきたり、お祖母ちゃんの家の位置を話したり。ぼんやりと聞いた。
目が覚めてもベル様といたいから、ぎゅっと指を掴んで眠る。離さないようにしなくちゃ。
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