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29.愚かな女神の自業自得
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剣の攻撃対象の条件付けを忘れた罪――それは想像より重かった。世界の管理を任されることは、出世の一つだ。女神は大喜びで、預かった世界の成長を促した。足りない部分を竜族の協力で補う。ドラゴンは善良で、穏やかな世界を好んだ。先輩の紹介で、竜王を筆頭に数十匹が移住する。
何も試練のない世界は、ある程度育つと成長しなくなる。人族と動物、植物を配置した世界は徐々に成熟し始めた。そろそろ管理のために、試練を与える必要がある。まずは魔獣、動物の形をしているが人を襲う。これを投入することで、人々は女神への信仰を深めた。
気分がよくなり、治癒関連の能力を神職者に与える。聖女や聖人と呼ばれる者が現れ、人々の信仰を集めて宗教の形を作り上げた。ここへ次の試練として魔族を入れる。手元に資料がないので、他の世界から貰ってきた。
思ったより賢く、人族が一気に劣勢に陥った。慌てて武器を与える。偏った戦力を、天秤にかけられる位置まで持ち上げる必要があった。調整するつもりが、失敗した。与えた武器が強力過ぎたのだ。しかも人族から選んで祝福した勇者は、まさかの単純思考だった。
結局魔王城を通り過ぎ、奥で暮らすドラゴンの首を落とした。それも世界の守護者である竜族の王! 慌てて蘇生をかけようとしたが、すでに遅かった。目を離した僅かな隙に、竜王の魂は勝手に移動する。
追いかける前に、先輩にバレた。竜族を紹介してくれた男神は、顔を引き攣らせて怒鳴る。そんなに怒らなくても、すぐに見つけて蘇生すれば……そう告げたら、さらに怒らせてしまった。
「竜に蘇生は効かない!」
彼らは寿命まで魂が死ぬことはない。その寿命は生まれつき決まっており、竜王はそれを知っていると。つまり、勝手に蘇る、そう判断して胸を撫で下ろした。私を見つめる先輩の目は、蔑むような色をしていた。
「お前は降格だ。管理者など早かった。一からやり直せ」
世界の間を漂うエネルギー体まで落とされ、ふわふわと彷徨う。いつか、誰かに拾われて世界に組み込まれるだろう。自我があるのも最初のうちだけ、やがて消えてしまう。足掻くことも、尻拭いも……何もかも手が届かなかった。
こんなことになるなら、竜族の手伝いなんて頼むんじゃなかったわ。そもそも、竜族が最強なら簡単に首を落とされないでよ。そう呟いた自我に、強烈な痛みが走った。全身が濁って汚れていく。吐いた呪詛が跳ね返った、そう理解しても浄化の手立てがなかった。
蝕まれていく意識が遠のき、ぷつんと切れる。
「ったく、あのバカのせいで世界が崩壊寸前じゃないか」
竜族に謝罪したものの、受け入れてもらえなかった。災害が続くため、女神信仰が強くなる。それも忌々しかった。いっそ壊してしまうか。そう考えたが、竜王の眷属に恨まれる危険を犯すのも怖い。
「いっそ竜族が管理してくれたら……」
ぽろりと漏れた本音を「いやいや、それはまずいか」と自分で打ち消す。竜王復活まで世界を維持し、その後は魔族と人族の決着次第で振り分けよう。肘をついて、男神は世界の管理を続けた。
勇者の剣を回収し忘れた元女神が消滅する頃、竜王の卵がようやく安定した。
何も試練のない世界は、ある程度育つと成長しなくなる。人族と動物、植物を配置した世界は徐々に成熟し始めた。そろそろ管理のために、試練を与える必要がある。まずは魔獣、動物の形をしているが人を襲う。これを投入することで、人々は女神への信仰を深めた。
気分がよくなり、治癒関連の能力を神職者に与える。聖女や聖人と呼ばれる者が現れ、人々の信仰を集めて宗教の形を作り上げた。ここへ次の試練として魔族を入れる。手元に資料がないので、他の世界から貰ってきた。
思ったより賢く、人族が一気に劣勢に陥った。慌てて武器を与える。偏った戦力を、天秤にかけられる位置まで持ち上げる必要があった。調整するつもりが、失敗した。与えた武器が強力過ぎたのだ。しかも人族から選んで祝福した勇者は、まさかの単純思考だった。
結局魔王城を通り過ぎ、奥で暮らすドラゴンの首を落とした。それも世界の守護者である竜族の王! 慌てて蘇生をかけようとしたが、すでに遅かった。目を離した僅かな隙に、竜王の魂は勝手に移動する。
追いかける前に、先輩にバレた。竜族を紹介してくれた男神は、顔を引き攣らせて怒鳴る。そんなに怒らなくても、すぐに見つけて蘇生すれば……そう告げたら、さらに怒らせてしまった。
「竜に蘇生は効かない!」
彼らは寿命まで魂が死ぬことはない。その寿命は生まれつき決まっており、竜王はそれを知っていると。つまり、勝手に蘇る、そう判断して胸を撫で下ろした。私を見つめる先輩の目は、蔑むような色をしていた。
「お前は降格だ。管理者など早かった。一からやり直せ」
世界の間を漂うエネルギー体まで落とされ、ふわふわと彷徨う。いつか、誰かに拾われて世界に組み込まれるだろう。自我があるのも最初のうちだけ、やがて消えてしまう。足掻くことも、尻拭いも……何もかも手が届かなかった。
こんなことになるなら、竜族の手伝いなんて頼むんじゃなかったわ。そもそも、竜族が最強なら簡単に首を落とされないでよ。そう呟いた自我に、強烈な痛みが走った。全身が濁って汚れていく。吐いた呪詛が跳ね返った、そう理解しても浄化の手立てがなかった。
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「いっそ竜族が管理してくれたら……」
ぽろりと漏れた本音を「いやいや、それはまずいか」と自分で打ち消す。竜王復活まで世界を維持し、その後は魔族と人族の決着次第で振り分けよう。肘をついて、男神は世界の管理を続けた。
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