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68.天気がいいから処刑日和?
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早朝から起床ラッパのような音で叩き起こされた。何が起きたのかと窓に駆けよれば、馬から降りるお祖父様の姿が見える。後ろに将軍と数人の護衛騎士を連れているから、とんぼ返りで城から走ってきたのかも。挨拶に行こうとしたら、先に扉が開いた。
「まあ、お嬢様。そのままはいけません。未婚の淑女ですからね」
六歳でも未婚の貴族令嬢である事実は同じ。たとえ絶壁まな板の幼女であっても……部屋着はまずい。
「あ、うん。着替える」
エイミーに促され、ローナの用意した服に着替える。国王であるお祖父様がいらしたので、お人形っぽいひらひらのドレスが用意された。あっちを結び、こっちに袖を通し……忙しい。
黒髪だった頃は、赤いドレスが好きだった。用意されたのはローズピンクだ。髪色がピンク系だから同化すると思ったけど、鏡の中の私は悪くない。ううん、意外とイケてる。
赤に近い濃色だからかもね。こうして濃桃色を身に着けると、髪のピンクは目立たなくて金色が強調された。まるでドレスの色が反射した金髪みたい。
用意された赤い靴を履いて、エイミーと手を繋いだ。
「早く行こうよ」
引っ張って階段の上に到着したところで、お祖父様が玄関ホールに入ってきた。目が合うなり大声で「おお! 我が孫娘よ、今参ろうぞ」と叫んだ。びっくりして立ち止まった隙に、三段跳びで階段を駆け上るお祖父様に抱き上げられる。
今、本当に三段ずつ飛ばしながら三歩くらいで到着したよ? 段差を利用して手前で止まり、ひょいっと肩に担がれた。がっちりした筋肉の上に座った私は、お祖父様の頭に抱き着く。
「お父様、折角の愛らしい装いが台無しですわ。グロリアを腕に抱いてください」
食堂から出てきたママが叱り、お祖父様は「煩いのぉ」と文句を言いながら腕に下ろした。L字にした左腕に座ると、本当にお人形みたい。一段飛ばしで降りるお祖父様の抱っこは、迫力があった。そもそも体が大きいから、階段の段差が倍になって感じられる。
がっちりした筋肉に守られてなかったら、ちょっと怖いかも。階段を降りても地上は遠かった。ママやパパと目線が近い。
「おはようございます」
笑顔で挨拶をしたところへ、にぃにがエスコートするメイベルも加わる。夜通し駆けてきたと聞いて、大急ぎで食事の準備が整えられた。将軍達も同席を求めたが、激しく遠慮される。執事スチュアートが別室に用意することで、納得された。
「処刑のクライマックスであろう? わしも立ち会うぞ。そのために書類をすべて片付け、夕方から駆けてきたのだからな」
筋肉ってすごい。ここまで酷使しても平然としているなんて。お祖父様のお膝に座りながら、私はパンを頬張る。向かいに座るママのひょいぱくが素早くて、見惚れてしまう。いつものことながら、本当に早い。
「最後にすり潰してやるわ」
物騒なママの呟きに、誰も反対しないところがホールズワース家だよね、と思う。長引かせた処刑の後、さらに苦しんでもらう予定か。まあ、そのくらいしないと罰と罪の天秤が釣り合わないね。
「いいと思うよ」
賛成を口にして、お祖父様の差し出したオムレツを頬張った。むっ、大きくて頬が膨らむ。詰まらないよう潰しながら、スープで流す。
「義父上、グロリアが窒息してしまいます」
「なんと! これでも大きいのか。わしの半分にしたのだが……」
悩みながら、大きな筋肉の腕はフォークを器用に操る。お祖父様の半分の半分にされたオムレツを、私は再び口に入れる。うん、今度はちょうどよかった。
「さあ、今日も良い天気ね。処刑日和だわ」
ママ、そんな日和初めて聞いた。
「まあ、お嬢様。そのままはいけません。未婚の淑女ですからね」
六歳でも未婚の貴族令嬢である事実は同じ。たとえ絶壁まな板の幼女であっても……部屋着はまずい。
「あ、うん。着替える」
エイミーに促され、ローナの用意した服に着替える。国王であるお祖父様がいらしたので、お人形っぽいひらひらのドレスが用意された。あっちを結び、こっちに袖を通し……忙しい。
黒髪だった頃は、赤いドレスが好きだった。用意されたのはローズピンクだ。髪色がピンク系だから同化すると思ったけど、鏡の中の私は悪くない。ううん、意外とイケてる。
赤に近い濃色だからかもね。こうして濃桃色を身に着けると、髪のピンクは目立たなくて金色が強調された。まるでドレスの色が反射した金髪みたい。
用意された赤い靴を履いて、エイミーと手を繋いだ。
「早く行こうよ」
引っ張って階段の上に到着したところで、お祖父様が玄関ホールに入ってきた。目が合うなり大声で「おお! 我が孫娘よ、今参ろうぞ」と叫んだ。びっくりして立ち止まった隙に、三段跳びで階段を駆け上るお祖父様に抱き上げられる。
今、本当に三段ずつ飛ばしながら三歩くらいで到着したよ? 段差を利用して手前で止まり、ひょいっと肩に担がれた。がっちりした筋肉の上に座った私は、お祖父様の頭に抱き着く。
「お父様、折角の愛らしい装いが台無しですわ。グロリアを腕に抱いてください」
食堂から出てきたママが叱り、お祖父様は「煩いのぉ」と文句を言いながら腕に下ろした。L字にした左腕に座ると、本当にお人形みたい。一段飛ばしで降りるお祖父様の抱っこは、迫力があった。そもそも体が大きいから、階段の段差が倍になって感じられる。
がっちりした筋肉に守られてなかったら、ちょっと怖いかも。階段を降りても地上は遠かった。ママやパパと目線が近い。
「おはようございます」
笑顔で挨拶をしたところへ、にぃにがエスコートするメイベルも加わる。夜通し駆けてきたと聞いて、大急ぎで食事の準備が整えられた。将軍達も同席を求めたが、激しく遠慮される。執事スチュアートが別室に用意することで、納得された。
「処刑のクライマックスであろう? わしも立ち会うぞ。そのために書類をすべて片付け、夕方から駆けてきたのだからな」
筋肉ってすごい。ここまで酷使しても平然としているなんて。お祖父様のお膝に座りながら、私はパンを頬張る。向かいに座るママのひょいぱくが素早くて、見惚れてしまう。いつものことながら、本当に早い。
「最後にすり潰してやるわ」
物騒なママの呟きに、誰も反対しないところがホールズワース家だよね、と思う。長引かせた処刑の後、さらに苦しんでもらう予定か。まあ、そのくらいしないと罰と罪の天秤が釣り合わないね。
「いいと思うよ」
賛成を口にして、お祖父様の差し出したオムレツを頬張った。むっ、大きくて頬が膨らむ。詰まらないよう潰しながら、スープで流す。
「義父上、グロリアが窒息してしまいます」
「なんと! これでも大きいのか。わしの半分にしたのだが……」
悩みながら、大きな筋肉の腕はフォークを器用に操る。お祖父様の半分の半分にされたオムレツを、私は再び口に入れる。うん、今度はちょうどよかった。
「さあ、今日も良い天気ね。処刑日和だわ」
ママ、そんな日和初めて聞いた。
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