【完結】攻略対象×ヒロイン聖女=悪役令嬢

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)

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64.ルールは特例で派手に破られた

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 幼い頃に何度か肩に座らせてもらった。首を跨ぐ方が安定するんだけど、女の子がしていい姿勢ではないと怒られたっけ。左の肩に座らせてもらい、頭を抱えるようにしがみ付く。これで安定するよね。

「さて、クラウディアを迎えて軽く叱るとするか」

「あまり叱らないでね」

「ああ、だから軽くだ。もうあの子を叱ってやれるのは、わしくらいだからな」

 お祖母様は随分前に他界なさった。確かに叱れるのはお祖父様くらいかな。パパもママにベタ惚れで甘やかすことはあっても、叱ることは少ないと思う。メイベルが微笑ましげに私達を見上げ、にぃにが守るように斜め後ろに立つ。

 うん、パパやママと同じだ。にぃにとメイベルも幸せになれるよ。お祖父様が歩き出し、揺れるからしっかり掴まった。途中で、捕獲され縛られた人達とすれ違う。

 アディントン侯爵は金髪のおじさんで、手前の茶髪がラッカム伯爵かな。そこで疑問が生じる。私の髪色は金髪とピンクが混じっていた。ストロベリー・ブロンドと呼ばれる色だけど、聖女リリアンはピンクの髪……もし祖母に当たるリリアンのお母様が赤毛だとしても、ピンクの髪の娘って生まれるのかな。

 赤い髪と金髪より、銀髪の方がピンクの髪になる気がする……けど??

 遺伝について詳しい人に聞いてみよう。ひとまず疑問を横に置いて、走ってきたママに手を振った。

「ママ!」

「グロリア、私の小さなお姫様……無事でよかったわ。あの失礼な男があなたを傷つけていたら、屋敷じゃなく本人に火を付けるところよ」

 物騒だけど、これがママ。私の魂を生み出し、大切に愛してくれた人だ。愛情が重いけど、その重さがないと私は息が出来ないと思うの。

「クラウディア、またやったのか」

「あら、お父様。いいではありませんの。どうせ住人は牢に引っ越すのですから」

 間違ってない。牢に入ることを引っ越すと表現したのは、ママらしい嫌味だな。品がいいよね。やっぱり王女様だったからかも。

「ママのいう通りですわ。長く牢で暮らすこともないんですもの。屋敷は不要ですわね」

 メイベルが相槌を打つ。二人の女性の強気発言に、お祖父様は溜め息を吐いた。

「世の中にはルールがある。わしの好きなゲーム盤と同じだ。だが……今回は特例が適用されても仕方あるまい」

 私を見上げたので、にっこり笑う。そうだよね、孫の私が特例中の特例だもん。多少の誤差はなかったことにしてよ。

「じぃじ、復讐は私がしたい」

「……我が家の女はどうしてこうも好戦的なのか。クリフォードもキースも、苦労が絶えないな」

 嘆く言葉に聞こえるのに、その声は楽しそうだった。さり気なく「我が家の女」にメイベルが入ってるの、好き。お祖父様に抱き付いて頬擦りした。ふさふさした髪を乱して笑う。

「じぃじ、大好きよ。じぃじもそうでしょ?」

 なんだかんだ言っても、そんなママや私達が好きでしょう。問うた私に大声で笑ったお祖父様は、欲しかった許可をくれた。

「よかろう、此度の罪人はグロリアへの土産とする。処分は任せたぞ」

「ありがとう」

 ようやく、私も復讐できる。皆が私のために手を汚したなら、今度は私が皆の分まで血を浴びよう。中途半端な気持ちに区切りをつけて、新しい人生を歩むために。

 それでいいよね、リリアン。
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