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63.前向きで適当で容赦のないお祖父様
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もっと接戦になると踏んでいたけど、パパの報告を受けたお祖父様が参戦――あっという間に勝敗は喫した。というか、国王に刃向かったら貴族はお取り潰しだもん。騎士だって命令違反して投降する。
何よりお祖父様が連れてきた騎士団が強かった。人数も100人規模だし、もしかして親衛隊も入ってない? 豪華な騎士の顔触れは、各国で名の知れた将軍や団長まで含まれる。逆に国の防衛が心配になるレベルだった。全員出て来ちゃったってこと、ないよね? 王太子殿下がいないから平気かな。
「久しぶりだ、我が孫娘よ……髪色が変わったか?」
「じぃじ、その前に体が小さくなったのよ」
正確には生まれ変わったんだけどね。体が違うんだよ。
「それは重畳、より長く膝に乗せて可愛がれるということだな」
前向きというか、適当すぎる人だよね。でもこれが私の祖父であるブラッドリー国王アレキサンドル3世だ。ちなみに三代続けてアレキサンドルなんだよ。本当はアレキサンダーだったのに、ブラッドリーの語尾も伸ばす響きだから変化させたとか。
「首を飛ばされたと聞いたが……元気そうで何よりだ」
「あ、うん」
これってブラックジョーク? 話している間に、見えていた屋敷から火の手が上がった。顎に蓄えた髭を撫で、お祖父様は唸る。
「クラウディアの奴、またやりおったか」
許可を得ないでママが屋敷を燃やしたことは理解した。いつの間にか乳母のエイミーが、コップに水を用意している。差し出されて受け取り、首を傾げた。
「一度口をゆすいで下さい」
ほら、と思い出させるエイミーの言葉に、苦笑いした。そうだったわ。派手に昼食を馬の背にぶちまけたんだっけ。にぃにの腕に座ったまま、コップの水でぶくぶくと口をゆすぐ。ぺっと吐き出し、ほんのり香るミントに気づいた。エイミーらしい気遣いだな。
「ああ、グロリア。無事でよかったわ。心配したじゃない。もう囮作戦なんてダメよ」
抱き付いて、にぃにから私を奪おうとするメイベル。素直に渡すにぃにから、メイベルのお胸にダイブした。両手でぎゅっと抱き締められて、少し苦しいのが嬉しい。と思ったら、後ろでお祖父様がいじけていた。
「ここは助けたわしに抱きつく場面だと思うが」
「じぃじは後で」
約束してメイベルに頬擦りする。しばらくすると安心したのか、降ろしてくれた。そこで両手を伸ばす。お祖父様は軽々と抱き上げた。がっちりした筋肉は、にぃにより安定している。
「アディントン侯爵を捕まえました」
「ラッカム伯爵が自首しています。いかがしますか」
次々と届く報告に、お祖父様は立派な顎髭を指先でゆっくり撫でた。
「まとめて牢へ放り込め。逃がせば牢番の手足も家族も首も……すべて晒してくれようぞ」
うん、間違いなくママのお父さんだわ。牢へ入れろと命じた直後に、地元の貴族や兵が裏切る懸念を潰す。こういう詰将棋みたいなところ、間違いなくお祖父様だった。ゲーム盤で遊んでも、絶対に手加減しない。幼子相手に本気で攻めてくる人だから。
「じぃじ、肩がいい」
肩に座らせろと無邪気に強請る。私は昔から容赦ないお祖父様が大好きよ。
何よりお祖父様が連れてきた騎士団が強かった。人数も100人規模だし、もしかして親衛隊も入ってない? 豪華な騎士の顔触れは、各国で名の知れた将軍や団長まで含まれる。逆に国の防衛が心配になるレベルだった。全員出て来ちゃったってこと、ないよね? 王太子殿下がいないから平気かな。
「久しぶりだ、我が孫娘よ……髪色が変わったか?」
「じぃじ、その前に体が小さくなったのよ」
正確には生まれ変わったんだけどね。体が違うんだよ。
「それは重畳、より長く膝に乗せて可愛がれるということだな」
前向きというか、適当すぎる人だよね。でもこれが私の祖父であるブラッドリー国王アレキサンドル3世だ。ちなみに三代続けてアレキサンドルなんだよ。本当はアレキサンダーだったのに、ブラッドリーの語尾も伸ばす響きだから変化させたとか。
「首を飛ばされたと聞いたが……元気そうで何よりだ」
「あ、うん」
これってブラックジョーク? 話している間に、見えていた屋敷から火の手が上がった。顎に蓄えた髭を撫で、お祖父様は唸る。
「クラウディアの奴、またやりおったか」
許可を得ないでママが屋敷を燃やしたことは理解した。いつの間にか乳母のエイミーが、コップに水を用意している。差し出されて受け取り、首を傾げた。
「一度口をゆすいで下さい」
ほら、と思い出させるエイミーの言葉に、苦笑いした。そうだったわ。派手に昼食を馬の背にぶちまけたんだっけ。にぃにの腕に座ったまま、コップの水でぶくぶくと口をゆすぐ。ぺっと吐き出し、ほんのり香るミントに気づいた。エイミーらしい気遣いだな。
「ああ、グロリア。無事でよかったわ。心配したじゃない。もう囮作戦なんてダメよ」
抱き付いて、にぃにから私を奪おうとするメイベル。素直に渡すにぃにから、メイベルのお胸にダイブした。両手でぎゅっと抱き締められて、少し苦しいのが嬉しい。と思ったら、後ろでお祖父様がいじけていた。
「ここは助けたわしに抱きつく場面だと思うが」
「じぃじは後で」
約束してメイベルに頬擦りする。しばらくすると安心したのか、降ろしてくれた。そこで両手を伸ばす。お祖父様は軽々と抱き上げた。がっちりした筋肉は、にぃにより安定している。
「アディントン侯爵を捕まえました」
「ラッカム伯爵が自首しています。いかがしますか」
次々と届く報告に、お祖父様は立派な顎髭を指先でゆっくり撫でた。
「まとめて牢へ放り込め。逃がせば牢番の手足も家族も首も……すべて晒してくれようぞ」
うん、間違いなくママのお父さんだわ。牢へ入れろと命じた直後に、地元の貴族や兵が裏切る懸念を潰す。こういう詰将棋みたいなところ、間違いなくお祖父様だった。ゲーム盤で遊んでも、絶対に手加減しない。幼子相手に本気で攻めてくる人だから。
「じぃじ、肩がいい」
肩に座らせろと無邪気に強請る。私は昔から容赦ないお祖父様が大好きよ。
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