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52.崩れた瓦礫に埋まった仲間だね
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にぃにの抱っこから降りたら、すぐにメイベルに捕まった。いいけどね。私達のテーブルにも数人の孤児が座り、お菓子を食べている。お行儀がいいな。がっついてないのは、ちゃんと宿屋でご飯を食べている証拠だ。
アビーのお父さんの宿屋もあるから心配しなかったけど、目に見える形の安心にほっとした。少し離れた場所で、老執事と話し込むにぃには、ちらりと私達の様子を覗った。口にお菓子を入れながら、じっと観察する。用があるなら、合図するよね。
にぃには目を逸らした。大掃除は今日やらないのかも。この時点で何となく理解してしまった。ママが突然孤児院訪問を口にしたのは、今回の騒動を予想していたから。もちろん、建物が崩れたのは想定外だと思うけど。
私やメイベルを連れて行ったのは、周囲に警戒されないためかな? 事前に何か掴んでいて、確証を得るために孤児院へ行った。おそらく、メインはウィルズ夫人ではないよね。他にもいると思う。
もぐもぐと焼き菓子を噛んで飲み込み、メイベルが差し出すカップからお茶を飲む。また目の前に現れたお菓子を齧った。
「あの子、自分で食べないの?」
「貴族はいいの」
小さな子が私を指差し、続いてやや年上の少女が咎めた。その声に聞き覚えがあって、少女をじっと見つめる。
「あっ! あの時の子だわ」
「グロリア? もしかして教会が崩れた時の子?」
状況を知っているメイベルは、察したらしい。区別がついていない様子だけど、あの場面では私しか見てなかったんだろうな。彼女らしい。
「うん、そう。崩れた時に一緒に埋まった子」
物騒な表現をわざと大きな声で吹聴する。にぃに達は、あの事件を大ごとにしたいんだよね。だったら、子どもが大声で話しちゃうのは有りだ。不可抗力だもん。
「あ、あの時はありがとうございました」
ぺこりと頭を下げ、指差した子に「覚えてるでしょう? ちゃんとお礼を言って」と促す。だけど、そんな幼い子に無理だよ。自分の外見年齢を棚に上げて、私は「平気」と笑った。
「もし働くのが嫌でなければ、侍女にならない? ママやパパに話すから」
その程度の決定権はにぃにも持ってるけど、一応両親の顔を立てておこう。聞き耳立ててる貴族に、あれこれ推測してもらう必要もあるし。噂も広めて欲しかった。
「すごく嬉しいです。でも……この子達はまだ手がかかるので」
彼女のスカートにしがみ付く幼子は3人ほど。なるほど、確かに手がかかるよね。もうすぐ寄付金で人を雇えるから大丈夫だけど、どう話すべきかな。迷う私を膝に乗せたメイベルが、先に口を開いた。
「簡単よ。あなた達への寄付金を奪った人は捕まったわ。これから世話をする人も増やすし、食事も洗濯も困らなくなる。そうしたら来てくれたらいいの」
きょとんとした顔の少女に、これは伝わってないなと気づいた。
「あのね、皆のお世話する人が来てからでいいよ。孤児院はこれからも行くから」
もっと短く、直接関係する場所だけを要約する。少女ははいと返事をした。
「ホールズワース公爵夫人のご到着です」
侍従の声に、ざわりと貴族が反応する。ママが来たんだ。やっぱりまだ何かありそう。
アビーのお父さんの宿屋もあるから心配しなかったけど、目に見える形の安心にほっとした。少し離れた場所で、老執事と話し込むにぃには、ちらりと私達の様子を覗った。口にお菓子を入れながら、じっと観察する。用があるなら、合図するよね。
にぃには目を逸らした。大掃除は今日やらないのかも。この時点で何となく理解してしまった。ママが突然孤児院訪問を口にしたのは、今回の騒動を予想していたから。もちろん、建物が崩れたのは想定外だと思うけど。
私やメイベルを連れて行ったのは、周囲に警戒されないためかな? 事前に何か掴んでいて、確証を得るために孤児院へ行った。おそらく、メインはウィルズ夫人ではないよね。他にもいると思う。
もぐもぐと焼き菓子を噛んで飲み込み、メイベルが差し出すカップからお茶を飲む。また目の前に現れたお菓子を齧った。
「あの子、自分で食べないの?」
「貴族はいいの」
小さな子が私を指差し、続いてやや年上の少女が咎めた。その声に聞き覚えがあって、少女をじっと見つめる。
「あっ! あの時の子だわ」
「グロリア? もしかして教会が崩れた時の子?」
状況を知っているメイベルは、察したらしい。区別がついていない様子だけど、あの場面では私しか見てなかったんだろうな。彼女らしい。
「うん、そう。崩れた時に一緒に埋まった子」
物騒な表現をわざと大きな声で吹聴する。にぃに達は、あの事件を大ごとにしたいんだよね。だったら、子どもが大声で話しちゃうのは有りだ。不可抗力だもん。
「あ、あの時はありがとうございました」
ぺこりと頭を下げ、指差した子に「覚えてるでしょう? ちゃんとお礼を言って」と促す。だけど、そんな幼い子に無理だよ。自分の外見年齢を棚に上げて、私は「平気」と笑った。
「もし働くのが嫌でなければ、侍女にならない? ママやパパに話すから」
その程度の決定権はにぃにも持ってるけど、一応両親の顔を立てておこう。聞き耳立ててる貴族に、あれこれ推測してもらう必要もあるし。噂も広めて欲しかった。
「すごく嬉しいです。でも……この子達はまだ手がかかるので」
彼女のスカートにしがみ付く幼子は3人ほど。なるほど、確かに手がかかるよね。もうすぐ寄付金で人を雇えるから大丈夫だけど、どう話すべきかな。迷う私を膝に乗せたメイベルが、先に口を開いた。
「簡単よ。あなた達への寄付金を奪った人は捕まったわ。これから世話をする人も増やすし、食事も洗濯も困らなくなる。そうしたら来てくれたらいいの」
きょとんとした顔の少女に、これは伝わってないなと気づいた。
「あのね、皆のお世話する人が来てからでいいよ。孤児院はこれからも行くから」
もっと短く、直接関係する場所だけを要約する。少女ははいと返事をした。
「ホールズワース公爵夫人のご到着です」
侍従の声に、ざわりと貴族が反応する。ママが来たんだ。やっぱりまだ何かありそう。
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