【完結】攻略対象×ヒロイン聖女=悪役令嬢

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)

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46.失礼と無礼のオンパレードだった

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 何が起きてるのか、不思議なんだけど。いや違う。何が起きてるか分かるけど、理由が不明が正しいかも。

 お茶会はアクロイド伯爵家の名前で行われたのに、何故かウィルズ夫人が取り仕切っていた。まあ、一応まだ伯爵夫人……? 未亡人か。だけど、跡取りがいないので養子を貰わないと、ウィルズ伯爵家はお取り潰しだろうな。

 問題はそのウィルズ夫人が、お茶会の主役になっていることだった。アクロイド伯爵夫人は斜め後ろに控えて、まるで侍女のように扱われている。夫のアクロイド伯爵に至っては、お茶会が行われる広間にいなかった。

「絶対にグロリアの手を離さないでくれ」

「分かったわ」

 頭上で交わされる会話に、そうじゃないでしょと思う。私に「メイベルと手を離さないように」と言い含める場面じゃない? まあいいか、どっちでも結果は一緒だし。素直にメイベルと手を繋ぎ、案内された席に落ち着いた。

 この国の貴族は爵位を落としているから、一番偉いのは公爵家のにぃにと私。続いて元公爵で現侯爵であるメイベル。他は伯爵位以下だった。にも関わらず、案内された席が会場の端なのはなぜだろう。

「ねぇね、この席おかしくない?」

「おかしいわよ。さらに歓待役が違う上、挨拶に来ないのも無礼ね」

 失礼を通り越してるわ。メイベルは容赦ない毒舌だが、表情は微笑んでいる。同じ席についたご夫人方が青ざめた。

「これは我がターラント侯爵家だけでなく、ホールズワース公爵家も貶める意図があるのかしら」

 口元の笑みは変わらぬまま、メイベルの毒舌が炸裂する。昔の彼女は、もっと穏やかだった気がするわ。記憶が美化されていなければ、だけど。

「あら、あちらは未婚の殿方ばかりなのね」

 ウィルズ夫人がべったり張り付くテーブルは、男性ばかり。それも若い。私の知る貴族名鑑は古いけど、確かに結婚してない人や跡取りだった人ばかりだった。

「夫が亡くなったら、家を守らず男漁りだなんて……ね」

 ずばっとメイベルが言い切ったことで、夫人達は大きく頷いた。彼女らにしたら、見苦しいことこの上ない状況よね。でも伯爵の未亡人で、主催のアクロイド伯爵夫人が何も言わないから、好きに振る舞っても文句が言えなかった。

 物言いたげな侍女達の給仕を待って、メイベルは立ち上がった。

「帰らせていただくわ。男漁りの場に立ち会うほど、奔放ではないの」

 はしたないと言い捨て、彼女は私の手をしっかり握る。これは何かあるんだな。見回した先で、にぃにが手招きしている。何かあったんだ。

「ターラント、誤解があったようですわ。彼らは……」

「夫が死んだから、若い男を物色しているのでしょう? なんて見苦しく、はしたない」

 それってつまり、その……お見合い的な? オブラートに包んでみても、あまり変わらない。席で接待を受けていた若い未婚男性は青ざめ、一斉に立ち上がった。そのまま座っていたら、認めたことになる。ご夫人の間で噂になれば、婚期を逃すのは間違いない。

 数人は逃げ出した。賢明な判断だわ。それより、ウィルズ夫人の言い訳に首を傾げた。おかしいよね。

「っ、なんて失礼な!」

 いきなり騒いだウィルズ夫人の甲高い声に、私の注意が逸れた。びくっと肩が震える。驚いた。

「メイベル、あまり厳しいことを言ってはいけないよ」

 にぃにが仲裁するフリで介入する。憤慨したウィルズ夫人から遠い位置を歩いて、空いている私の左手を繋いだ。にぃにの発言が常識人だわ。そう思ったのに、次の瞬間思い切り裏切られた。

「いくら本当のことでも、逆恨みされるからね」
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