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45.お人形のように着飾って主役を狙う
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目がしぱしぱする。眠いし、瞬きすると沁みる感じ。目薬をした直後に似てるかな、じわっと涙が滲んだ。それを堪えたら、今度は欠伸が口からひとつ。
「眠そうね」
「昨日のお話をいろいろ考えていたら、眠れなかったの」
メイベルと一緒にお出かけだ。アクロイド伯爵家の夫人がお茶会をするらしい。今回の孤児院の復旧費用を集めるチャリティーなので、現ターラント女侯爵であるメイベルに声がかかった。過去に孤児院へ寄付した貴族は軒並み連絡があったのだとか。
もちろん我が家も参加する。にぃにと私だ。にぃにとメイベルが婚約者なので、子どもの私が同行していいか迷った。でもメイベルが「可愛く着飾ったグロリアと一緒がいいわ」と主張して、ママがそれを許可した。寄付金はすでに用意されており、お茶会直後に搬入される予定だ。
お陰で馬車の警護がすごかった。まあ大金を積んでる馬車が追走してるからね。ターラントとホールズワース、どちらも家格が高いので金額もそれなりにお高く積んでいる。当然馬車を狙う不心得者が現れると踏んで、騎士団が一つ付いてきた。
おかしい。騎士団を私物化してない?
「このドレス、本当に可愛い。作らせて正解だったわ」
嬉しそうなメイベルの膝に座る私は、見事なビスクドールだった。ひらっひらのスカートは、内側に膨らますパニエを入れていない。なのにびっくりするほど膨らんでいるのは、表地に使う高価な絹でフリルを大量生産して詰め込んだからだった。
解いて紡ぎ直したら、ドレス数着分あると思う。質のいい絹はさほど重さを感じない。スカート表面は愛らしい苺の柄で、ピンクに赤い実が並ぶ。ところどころに緑の蔦部分や白い花が刺繍されていた。可愛いけど、まさにお人形って感じだわ。
コートのように羽織る上着は、スカートの裾まで届く。ブラウスの裾をうんと長くして、正面がボタン綴じなの。珍しいよね。貴族は後ろにボタンが多いのに、と思ったら……ウエスト部分からボタンを留めずにスカートをチラ見せする。
さらにベストみたいな飾りを羽織って、頭にはボンネットの帽子。全部苺柄で統一され、ふんだんに絹と刺繍が踊っていた。ベルトもなくて、着ていて締め付けは感じない。着心地はいいかも。
「気に入った?」
「うん」
裾やベストを指先で弄った私は、胸元の大きな苺飾りを撫でる。ぬいぐるみみたいに綿が入ってて、ふっくらしたブローチ? これは可愛い。あと、上着のスカート部分にも同じ苺飾りの小さいのがいくつかついていた。
「今日は可愛いグロリアを自慢するお茶会なのよ」
「「たぶん、違う」」
にぃにとハモってしまった。メインはアクロイド伯爵家の状態を確認すること。孤児院への寄付も大事だけどね。お金を出すだけなら、別に参加しなくていいんだし。折角お呼ばれしたなら、ウィルズ夫人の様子も見ておきたい。
「あら……ほかに何かあったかしら」
メイベルはもうこれでいいや。にぃにが探れば済むし、私はお茶会を楽しもう。
「眠そうね」
「昨日のお話をいろいろ考えていたら、眠れなかったの」
メイベルと一緒にお出かけだ。アクロイド伯爵家の夫人がお茶会をするらしい。今回の孤児院の復旧費用を集めるチャリティーなので、現ターラント女侯爵であるメイベルに声がかかった。過去に孤児院へ寄付した貴族は軒並み連絡があったのだとか。
もちろん我が家も参加する。にぃにと私だ。にぃにとメイベルが婚約者なので、子どもの私が同行していいか迷った。でもメイベルが「可愛く着飾ったグロリアと一緒がいいわ」と主張して、ママがそれを許可した。寄付金はすでに用意されており、お茶会直後に搬入される予定だ。
お陰で馬車の警護がすごかった。まあ大金を積んでる馬車が追走してるからね。ターラントとホールズワース、どちらも家格が高いので金額もそれなりにお高く積んでいる。当然馬車を狙う不心得者が現れると踏んで、騎士団が一つ付いてきた。
おかしい。騎士団を私物化してない?
「このドレス、本当に可愛い。作らせて正解だったわ」
嬉しそうなメイベルの膝に座る私は、見事なビスクドールだった。ひらっひらのスカートは、内側に膨らますパニエを入れていない。なのにびっくりするほど膨らんでいるのは、表地に使う高価な絹でフリルを大量生産して詰め込んだからだった。
解いて紡ぎ直したら、ドレス数着分あると思う。質のいい絹はさほど重さを感じない。スカート表面は愛らしい苺の柄で、ピンクに赤い実が並ぶ。ところどころに緑の蔦部分や白い花が刺繍されていた。可愛いけど、まさにお人形って感じだわ。
コートのように羽織る上着は、スカートの裾まで届く。ブラウスの裾をうんと長くして、正面がボタン綴じなの。珍しいよね。貴族は後ろにボタンが多いのに、と思ったら……ウエスト部分からボタンを留めずにスカートをチラ見せする。
さらにベストみたいな飾りを羽織って、頭にはボンネットの帽子。全部苺柄で統一され、ふんだんに絹と刺繍が踊っていた。ベルトもなくて、着ていて締め付けは感じない。着心地はいいかも。
「気に入った?」
「うん」
裾やベストを指先で弄った私は、胸元の大きな苺飾りを撫でる。ぬいぐるみみたいに綿が入ってて、ふっくらしたブローチ? これは可愛い。あと、上着のスカート部分にも同じ苺飾りの小さいのがいくつかついていた。
「今日は可愛いグロリアを自慢するお茶会なのよ」
「「たぶん、違う」」
にぃにとハモってしまった。メインはアクロイド伯爵家の状態を確認すること。孤児院への寄付も大事だけどね。お金を出すだけなら、別に参加しなくていいんだし。折角お呼ばれしたなら、ウィルズ夫人の様子も見ておきたい。
「あら……ほかに何かあったかしら」
メイベルはもうこれでいいや。にぃにが探れば済むし、私はお茶会を楽しもう。
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