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25.幸せになるという復讐もある
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約束した通り、翌日訪ねてきたメイベルと盤ゲームをした。一緒にお昼を食べ、昼寝をして、午後のお茶を楽しむ。夕暮れが近づくと、ひどく寂しそうな顔をした。だから泊まっていくよう促す。
「いいのかしら」
「いいよね、ママ」
不安そうなメイベルを安心させるため、ママに掛け合う。にっこり笑ったママは「当然よ、もううちの娘だもの」と答えてくれた。メイベルが壊れてしまったことは、パパやママも知っている。それでも彼女を引き受けると決めた。
復讐のためと微笑む彼女の意思を尊重したのがひとつ。意外にも、壊れた後の彼女とにぃにの相性が良かったこと。最後に私のためだと付け加えられた。
「もしメイベル嬢が不幸になっていたら、あなたは嘆くでしょう?」
それは嫌なの。ママの言葉に滲んだ、様々な思いが突き刺さる。私一人の死で、何もかも狂ってしまった。誰もが何かを失い、欠けた部分を補おうとしている。
「メイベルは寂しいんだって。もう一緒に暮らしたらダメかな」
「構わないわ。結婚前に、婚家へ入る花嫁は多いのよ」
家のしきたりや作法、交友関係から家計を取り仕切る貴族夫人は、嫁に入る令嬢に引き継ぐ。高位貴族であるほど時間がかかるので、早めに引き継ぎを始める家も少なくなかった。
現在のホールズワースは公爵家である。ブラッドリー国の王女であったお母様が、お祖父様より賜った地位だった。この国ではお父様の侯爵を名乗っていたけれど、実家に戻れば公爵である。国が併合されたため、公爵が適用された。
代わりに、かつての公爵家であったターラントは侯爵になる。ブラッドリー王家の血を引いていないから。貴族は血統主義なので、国の併合や占領が起きれば爵位は変更された。
入浴を終えたメイベルが戻り、私は彼女に抱き付く。嬉しそうに受け止めた親友へ、もうこの家に引っ越して来てよと頼んだ。きっと、メイベルからは言えなかったと思う。私の我が侭のせいにしたら、メイベルも気が楽だよね。
「いいの?」
「うん、ママが許可したわ」
パパはママの決断に口を挟まないから、全然平気。結婚が決まってるなら、同居しても問題ない。
「ありがとう、グロリア」
「ううん。ねぇねが幸せならいいの」
ぎゅっと強く抱きしめる腕に、素直に身を預けた。
私は自分が死んで生き返ったと知った時、復讐を考えた。でも違うんだ。この蘇りのチャンスは、復讐のためじゃなかった。生き残った親しい人達の傷を癒すため……これが私に冤罪をかけた人達への復讐より大切なの。
半壊した王城は今も残っている。あの廃墟を見るたび、人は過去の過ちを思い出すだろう。壊して存在すら忘れさせるのが正しいか、残して語り継ぐのが相応しいか。どちらを選ぶとしても、私は後悔したくなかった。
私の復讐は家族や親友が果たしてくれた。ならば傷ついた彼らや彼女らを救うことが、私の復讐よ。絶対に幸せになって、幸せにしてやるんだから。指を咥えて見てなさい! 砕かれた魂が消滅するまで、羨ましがらせてやる。そう決めたの。
「いいのかしら」
「いいよね、ママ」
不安そうなメイベルを安心させるため、ママに掛け合う。にっこり笑ったママは「当然よ、もううちの娘だもの」と答えてくれた。メイベルが壊れてしまったことは、パパやママも知っている。それでも彼女を引き受けると決めた。
復讐のためと微笑む彼女の意思を尊重したのがひとつ。意外にも、壊れた後の彼女とにぃにの相性が良かったこと。最後に私のためだと付け加えられた。
「もしメイベル嬢が不幸になっていたら、あなたは嘆くでしょう?」
それは嫌なの。ママの言葉に滲んだ、様々な思いが突き刺さる。私一人の死で、何もかも狂ってしまった。誰もが何かを失い、欠けた部分を補おうとしている。
「メイベルは寂しいんだって。もう一緒に暮らしたらダメかな」
「構わないわ。結婚前に、婚家へ入る花嫁は多いのよ」
家のしきたりや作法、交友関係から家計を取り仕切る貴族夫人は、嫁に入る令嬢に引き継ぐ。高位貴族であるほど時間がかかるので、早めに引き継ぎを始める家も少なくなかった。
現在のホールズワースは公爵家である。ブラッドリー国の王女であったお母様が、お祖父様より賜った地位だった。この国ではお父様の侯爵を名乗っていたけれど、実家に戻れば公爵である。国が併合されたため、公爵が適用された。
代わりに、かつての公爵家であったターラントは侯爵になる。ブラッドリー王家の血を引いていないから。貴族は血統主義なので、国の併合や占領が起きれば爵位は変更された。
入浴を終えたメイベルが戻り、私は彼女に抱き付く。嬉しそうに受け止めた親友へ、もうこの家に引っ越して来てよと頼んだ。きっと、メイベルからは言えなかったと思う。私の我が侭のせいにしたら、メイベルも気が楽だよね。
「いいの?」
「うん、ママが許可したわ」
パパはママの決断に口を挟まないから、全然平気。結婚が決まってるなら、同居しても問題ない。
「ありがとう、グロリア」
「ううん。ねぇねが幸せならいいの」
ぎゅっと強く抱きしめる腕に、素直に身を預けた。
私は自分が死んで生き返ったと知った時、復讐を考えた。でも違うんだ。この蘇りのチャンスは、復讐のためじゃなかった。生き残った親しい人達の傷を癒すため……これが私に冤罪をかけた人達への復讐より大切なの。
半壊した王城は今も残っている。あの廃墟を見るたび、人は過去の過ちを思い出すだろう。壊して存在すら忘れさせるのが正しいか、残して語り継ぐのが相応しいか。どちらを選ぶとしても、私は後悔したくなかった。
私の復讐は家族や親友が果たしてくれた。ならば傷ついた彼らや彼女らを救うことが、私の復讐よ。絶対に幸せになって、幸せにしてやるんだから。指を咥えて見てなさい! 砕かれた魂が消滅するまで、羨ましがらせてやる。そう決めたの。
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