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15.謎はほぼ解けた! と思う

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「お父様に呼び出されていたの」

 ママは疲れた表情を見せた。全体に雰囲気が暗くなり、きょろきょろと家族の顔を見回す。それから、こてりと首を傾げた。

「隣国まで呼びつけられ、滅茶苦茶叱られたわ。しばらく魔力は封じられるし、説教が毎日だったのよ」

 王家の秘術を勝手に使ったこと、隣国の王族を処刑してしまい混乱を招いたこと。さらに孫である私の魂を動かそうとしたこと。

 王家の秘術を使えば、魂の移動は可能だ。しかし当然だけど、普通は動かないものを動かせば、代償が発生する。それをママは王族の魂で支払おうとした。今回はそれで足りたが、もし不足すれば……私の魂が削られたらしい。その危険をお祖父様は叱ったのだ。

 血筋云々は重要だけど、魂が砕けたら取り返しがつかない。元に戻る間、私が苦しむのも許せなかったと。お祖父様は常識人だから、有難いわ。ぜひお会いしてお礼を言わなくちゃね。

 呼び出された際、パパとにぃにが厳しい訓練を課せられた。文官なのに、軍事国家である隣国の騎士並みの訓練をこなしたのよ。立派だわ。

「本当にお屋敷は火が消えたように寂しくなりました」

 ここで執事スチュアートが、しょんぼりと言葉を挟んだ。胸焼けするほどお肉を食べた後のシャーベットみたいで、とても落ち着くわ。

「私達が留守の間、罪人のリリアンを殺されないようにするため、監視と護衛を付けたの。塔にホールズワースの騎士がいたでしょう?」

 ああ、なるほど。紺色の騎士服はそのせいか。納得した。

「リリアンはどうちたの?」

 噛んでしまった。恥ずかしいと両手で顔を覆ったら、ママが満面の笑みを浮かべる。

「処刑したわ。あなたを産んだ翌日よ」

 妊婦だから処刑を延期した。生まれてしまえば、もう配慮する必要はない。それがお祖父様とママの判断だった。

「乳母があなたを連れて逃げたのは、驚いたけど」

 私を産んだ翌日、元聖女リリアンが処刑されたのを見て、エイミーは慌てた。この子も殺されるかも。不安が高じて、夜中に脱出したのだ。その後、帰国した家族は私を探した。

「すぐに見つけたが、乳母の事情が気の毒でな」

 パパは途中から説明を引き継ぐ。エイミーが席を外していて良かった。彼女は産んだばかりの我が子を亡くしていたのだ。だから殺されるくらいなら、私を自分の子にしようと考えた。頼る先が実家だからすぐに発見されたけど、ホールズワース家はしばらく静観した。

 護衛と監視の騎士を配置し、街中にホールズワースの息がかかった者を配置して。

「え? パン屋のおばさんって、ホールズワースなの?」

「ええ、我が家で料理人をしている人よ」

 言われてみれば、パン屋の営業は週の半分くらいだった。体が弱いと聞いていたが、屋敷と掛け持ちだったのかも。

 がっちり周囲を固めていたので、私の言動はすべて報告されていた。だいぶ謎が解けたわ。

「さあ行きましょう」

「どこへ?」

「朝食の後は忙しくなると言ったでしょう!」

 気合いを入れたママに抱き抱えられ、私はパパやにぃにを従えて屋敷を出た。
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