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第140話 ドラゴンは不在です
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朝食の席で、ドラゴンの今後について話し合う。予想通り、胃もたれする食事となった。うーんと悩む兄と父の手は止まり、そのたびに王妃や側妃から注意が飛ぶ。ルイ自身は、自分へ飛んで来る火の粉を被ってくれる二人に、内心で感謝していた。
一方的に四人に詰められたら四面楚歌だが、この状況なら男性陣と女性陣の攻防だ。なんとかなる。行儀悪くパンを千切らぬまま齧り、笑顔で誤魔化した。と思ったが、母は見ていた。王妃に叱られ、行儀作法がなっていないので習い直してはどうかと嫌味をもらう。
素直になれない女性だが、そこがいいと父上は笑って受け止めていたが……さすがに今朝は顔を引きつらせて、我が子らに助けを求める。満面の笑みで、ルイは切り捨てた。昨日の仕返しである。
「ドラゴン……様? は平和に暮らしたいのよね」
前提条件を確認され、当人がいないのでルイが返答する。一番近くで対応して、希望を知っているだろうと判断された。実際、ある程度性格は掴んでいると思う。
「暮らすというか、また眠りたいと口にしていましたよ」
化けの皮が剥がれたルイは、取り繕う口調をやめた。いい子の病弱王子はもう通用しない。ドラゴン退治に真っ先に駆け付け、竜と正面から向かい合って生きて帰った。その事実は、いままでの演技を台無しにする。いつまでも隠し通せないので、仕方ないのだが。
今後の貴族の動きが厄介だな、とは思う。兄アンリが王太子に立っているが、利権争いは諦めを知らない。アンリが王になるまで、争いは水面下で続くだろう。抑える方法も考えなくては……。
「聞いているのか? ルイ」
「いいえ」
父の問いかけに、すっぱりと否を突きつける。実際、聞いていなかった。何の話かもわからないのに返答して、貧乏くじを引くのはご免だ。
「ドラゴン殿と会えるかと聞いたんだ」
「しばらく無理だと思います」
正直に話していいか迷うが、なぜだと問う視線に負けて口を開いた。
「倭国のアイリーン姫と、東開大陸へ渡りましたから」
「は?」
「なぜ」
口々に疑問や驚きを伝える家族の手から、カトラリーやらパンが落ちる。驚いて立ち上がったアンリは、倒してしまったカップに大慌てだった。ナプキンで吸い取っているが、紅茶なのでシミになるだろう。
「昨日話した通り、倭国の神々がドラゴンを止めてくれました。その上で、契約があるから出掛けてくると言われたら、断れません。我々フルール大陸の者がドラゴンに勝つことは不可能ですので」
変な気遣いは要らない。現状をしっかり把握させなくては、とルイは言い切った。ドラコニクスは大陸を沈める気はないし、白蛇の神様も同じ意見だろう。アイリーンがお願いすれば、彼らは大人しく従う。アイリーンからミミ、ミミからドラゴンと繋がる命令系統は生きていた。
この部分は話さずに呑み込む。アイリーンを有用と判断し、家族から引き離そうとしたり操ろうとしたりすれば、国どころか大陸が沈む危険性があった。王族が大人しく従っても、貴族も同じとは限らない。彼女を得て、王族の上に立とうと考える馬鹿が……出そうな気がした。
まあ、全部俺が潰すけどな。にやりと笑う末っ子に、四人は不思議そうな顔をしたものの……それ以上問い詰めることはしなかった。
一方的に四人に詰められたら四面楚歌だが、この状況なら男性陣と女性陣の攻防だ。なんとかなる。行儀悪くパンを千切らぬまま齧り、笑顔で誤魔化した。と思ったが、母は見ていた。王妃に叱られ、行儀作法がなっていないので習い直してはどうかと嫌味をもらう。
素直になれない女性だが、そこがいいと父上は笑って受け止めていたが……さすがに今朝は顔を引きつらせて、我が子らに助けを求める。満面の笑みで、ルイは切り捨てた。昨日の仕返しである。
「ドラゴン……様? は平和に暮らしたいのよね」
前提条件を確認され、当人がいないのでルイが返答する。一番近くで対応して、希望を知っているだろうと判断された。実際、ある程度性格は掴んでいると思う。
「暮らすというか、また眠りたいと口にしていましたよ」
化けの皮が剥がれたルイは、取り繕う口調をやめた。いい子の病弱王子はもう通用しない。ドラゴン退治に真っ先に駆け付け、竜と正面から向かい合って生きて帰った。その事実は、いままでの演技を台無しにする。いつまでも隠し通せないので、仕方ないのだが。
今後の貴族の動きが厄介だな、とは思う。兄アンリが王太子に立っているが、利権争いは諦めを知らない。アンリが王になるまで、争いは水面下で続くだろう。抑える方法も考えなくては……。
「聞いているのか? ルイ」
「いいえ」
父の問いかけに、すっぱりと否を突きつける。実際、聞いていなかった。何の話かもわからないのに返答して、貧乏くじを引くのはご免だ。
「ドラゴン殿と会えるかと聞いたんだ」
「しばらく無理だと思います」
正直に話していいか迷うが、なぜだと問う視線に負けて口を開いた。
「倭国のアイリーン姫と、東開大陸へ渡りましたから」
「は?」
「なぜ」
口々に疑問や驚きを伝える家族の手から、カトラリーやらパンが落ちる。驚いて立ち上がったアンリは、倒してしまったカップに大慌てだった。ナプキンで吸い取っているが、紅茶なのでシミになるだろう。
「昨日話した通り、倭国の神々がドラゴンを止めてくれました。その上で、契約があるから出掛けてくると言われたら、断れません。我々フルール大陸の者がドラゴンに勝つことは不可能ですので」
変な気遣いは要らない。現状をしっかり把握させなくては、とルイは言い切った。ドラコニクスは大陸を沈める気はないし、白蛇の神様も同じ意見だろう。アイリーンがお願いすれば、彼らは大人しく従う。アイリーンからミミ、ミミからドラゴンと繋がる命令系統は生きていた。
この部分は話さずに呑み込む。アイリーンを有用と判断し、家族から引き離そうとしたり操ろうとしたりすれば、国どころか大陸が沈む危険性があった。王族が大人しく従っても、貴族も同じとは限らない。彼女を得て、王族の上に立とうと考える馬鹿が……出そうな気がした。
まあ、全部俺が潰すけどな。にやりと笑う末っ子に、四人は不思議そうな顔をしたものの……それ以上問い詰めることはしなかった。
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