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第131話 ドラゴンはまだ眠い

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 白蛇神ミミによれば、ドラゴンはフルール大陸を維持している。ドラゴンが住むことで、大陸に魔力が満ちた。その魔力が大地を結束させ、浮力を与えたという。

「えっと、下は浮いているってこと?」

『魔力で固定されておるが、元は浮島だ』

 こんなに大きな浮島があるなんて、と驚く。ミミは浮島がもっと小さい頃から知っているらしい。ドラゴンとも顔見知りというか、その話では複雑そうな顔で言い淀んだ。因縁があるわけじゃなさそうだけど、苦手なのかも。

 ミミの頭を撫でておく。無理そうなら話さなくていいよ? アイリーンの気遣いに、白蛇神はゆらりと身をくねらせた。手首に巻き付くようにして、頭を持ち上げる。もう一度丁寧に撫でておいた。

「ドラゴンが死ぬと、魔力が供給されずに沈む?」

 ルイが簡単に話をまとめる。ミミはあっさりと頷いた。その通りだと肯定する。その上で、さらに追加情報がもたらされた。

『目覚める気はなかったようじゃ。近々また眠ると言っておった』

「言ってた?」

 それって話をしてきたという意味かしら。アイリーンの繰り返しに、白蛇はなんでもないことのように、そうだと首を縦に振る。少し前にこちらに残った際、フクロウ神と一緒に出向いて話した。

 うっかり目が覚めたものの、数百年は寝ていたいこと。人間を殺す気はないこと。でも攻めてきたら反撃すること。以上がミミの持っている情報だった。それ以外にも話したそうだが、内容は秘密のようだ。私的な話と言われると、逆に気になるけれど。

「退治しなくていいのか」

 ほっとした表情のルイは、この話を将軍や兵士と共有するためテントを出た。拍子抜けしたアイリーンは、テント内の椅子に腰掛ける。戦わなくていいなら、明日のお昼には終わりそう。地揺れで被害がなかったのも、ドラゴンが気を遣ってくれたのかな。

 いきなり気が楽になり、思いついて兄に式紙を送った。手紙にした式紙を鳥に変えて送る。どこにいても、相手を特定して届けてくれるので便利な術だった。ただし、相手の霊力や記憶した姿形を参考にするため、知らない人には届けられない。

 王城に滞在しているのか、屋敷に戻ったのか。はたまた商人バローが持て成している? 膝に乗せたココと話しながら、ルイが戻るのを待つ。ミミは左腕に巻きついて、うとうとしているようで。まったく動かなくなった。

 蛇って眠る時に目を閉じないから、動かなくなると怖いのよね。ひんやり冷たいから、寝てるだけなのか確認したくなる。

「リン、相談なんだが」

 戻ってきたルイは、将軍と一緒だった。今回派遣された兵士の纏め役である彼によれば、本当に安全か確かめたい、と。気持ちはわかる。王都からさほど離れていない山なので、数百年の安全の担保が欲しいのよね。

「じゃあ、ルイと私で確かめてくる?」

「将軍が一緒は無理か」

 じっと見つめて、アイリーンは首を横に振った。

「無理よ、だってただの人だもの。私みたいに神と契約してる巫女じゃないし、ルイほど魔法が使えるわけじゃない。危ないわ」

 主に、同行する私たちが……隠されたニュアンスを察したルイが苦笑いする。将軍が危険なのは自業自得だけど、巻き込まれるのはごめんなの。
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