【完結】神狐の巫女姫☆妖奇譚 ~封印された妖を逃がした陰陽の巫女姫、追いかけた隣大陸で仮面王子に恋しました~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

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第126話 まだ早すぎるので妨害を

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 倭国への転移は一瞬で、迎える白蛇神の姿に首を傾げる。眠る時や夕食時にいなかったかも? 普段からちょくちょく姿を消すため、白蛇がいなくてもアイリーンはさほど気にしなかった。

「ずっとこっちにいたの?」

『なんじゃ、忘れたのか。ドラゴンと話をつけると言うで、我を繋ぎに残したのかと思っておった』

「うん、それでお願い」

 忘れていたことを肯定し、言い訳部分もミミの言葉を採用します。全面降伏のアイリーンへ、白蛇神はからりと笑った。やはり面白い巫女だ。この子と契約して正解だった。昨夜の出来事をかいつまんで説明し始めた白蛇神を、腕に巻いて部屋を歩く。

 一緒に転移した護衛が周囲を見回り、侍従達は忙しくお茶の支度を始めた。大量の資料を抱えた文官達はまだ状況が理解できない様子で、窓から外を見て何か叫んでいる。いきなり異国、それも海の向こうにいる状況に、感覚が付いてこないのね。わかるわ。

 アイリーンはうんうんと頷いた。絶対に理解できていないと確信する兄は、微妙な顔で用意された席についた。隣に座るアイリーンは、連れてきたココを膝に乗せた。今回、ネネは国の守護でお留守番である。

「えええ?! ドラゴンにそんな事情があったの?」

 声を上げたアイリーンに、シンも同意の頷きを重ねる。昨夜、フルール大陸に残った白蛇神の元へ、フクロウ神が訪れた。夜を支配する美しい白い鳥と共に、ドラゴンのいる山へ飛ぶ。事前に話が通してあったらしく、スムーズに決まったらしい。

「あれ? それなら、途中でルイを見かけなかった? ドラゴンを追っていったと聞いてるんだけど」

 アイリーンの指摘に、ふむ……と白蛇神ミミは考え込んだ。思い返してみるが、途中で人間をみた記憶がない。

『わからん』

「まあ、神様ですし……些末に気を取られる必要はありません」

 さらりとルイを些末事と片付けたシンは、白蛇神の前にお神酒を供えた。匂ったあと満足そうに口をつけるミミの尻尾が、ふりふりと動く。気に入ったようだ。

「シン兄様、王宮へ行く前にルイを探した方が」

「潜伏しているのだろう。そんな人物を探すのは大変だし、範囲も広すぎる。きっと王家で話をすれば、連絡手段があるはずだ」

 正論を吐きながら、さりげなく妹を男から遠ざける。兄シンが、父セイランに命じられたのは二つ。一つは国交を結ぶこと、もう一つはルイとアイリーンの婚約を阻止すること。政治的には結びつきが強くなるため、婚約はありだ。だが心情面で二人は結託した。

 ――彼女の結婚はまだ早すぎる、と。

 アイリーンとの婚約以外の方法で、王家と繋がってこい。そう告げられたシンは、人畜無害そうな笑顔の裏で策を練っていた。ある意味、策を練る間が一番幸せなのだ。もし、アイリーンがどうしてもと願ったら、父に歯向かって叶えてしまうだろうから。

 妹にベタ甘の自覚があるシンは、複雑な感情を噛み殺して笑みを浮かべ続ける。その腹黒さを好ましく思う白蛇神は、ぽつりと呟いた。

『巫女ではないが、こっちも良かったのぉ』

 契約しそびれたと思えば、なおさら惜しくなるのが不思議だ。お神酒を味わうミミは、長い舌で鱗に零れた酒を拭った。
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