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第124話 明日のための我慢

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 数時間様子を見ながら、こっそり街へ降りた。目立つので、白い契約獣達は置いていく。三人で出向いた先は、ごく普通の生活が営まれていた。

 地震で誰かが犠牲になった話はなく、驚くほど被害が少ない。あんなに揺れたのに、と首を傾げながらも三姉妹は安堵した。不思議な状況だが、誰かが傷ついていればいいと願うわけじゃない。犠牲がないのはいいことだ。

 いくつかの店を冷やかし、珍しい焼き菓子などを購入する。生ものは危険なのでやめておいた。代わりに入った喫茶店で、しっかり甘い生菓子を堪能する。

「アオイ姉様、こっち美味しいわ」

「一口ちょうだい、リン」

「あら、私も」

 二人の姉と生菓子を堪能し、紅茶で喉を潤す。全員が違うお茶と菓子を選び、互いに味見し合った。こういう経験は今までにないので、異国で羽を伸ばすには最適な過ごし方だ。

 姉二人との仲も深まった、とアイリーンは頬を緩めた。お土産も得たし、夕食に間に合うよう帰らなければ……と屋敷へ足を向けた三姉妹の脇を、伝令が走っていく。すぐ近くにいた衛兵を捕まえ、ひそひそと話をした。

 危険、ドラゴン、第二王子、そんな単語が聞こえて、足を止める。同じようにアオイとヒスイも立ち止まった。ヒスイはフルール大陸の言語を習得していないが、不穏な様子と声の響きが気になったようだ。アオイは皇太子補佐を務める立場なので、会話ができる程度に習得済みだった。

 その点、末姫はずるい。陰陽術の応用で言語を変換していた。ルイが魔法で倭国での会話をこなしたのと、よく似ている。ある意味、力で押し切った形だった。

「近くで聞きましょう」

 アオイの提案で、わざと倭国の言葉で話しながら近づく。フルール大陸の公用語が話せない地方の民族は多く、それゆえに警戒対象から外れた。急ぐ伝令は声をひそめているものの、息が切れているため、途切れ途切れに声が弾んだ。それを聞き取る。

 第二王子殿下より、魔法による伝令があって? 応援要請……王宮へ……。かなり聞き取れたところで、そっと離れた。見つけた小物の店に入るフリで、入り口脇に固まる。

「何か不穏な感じじゃない?」

「聞いた感じだと、ルイが応援を求めたって」

 ヒスイの問いに、慌てるアイリーンが告げる。何かが起きた、それは間違いない。だがここで冷静な人物がいた。

「落ち着いて、アイリーン。明日はシンが同行するのだから、その時に身分を明かして王城へ行きなさい。今日はダメよ」

 解決案を提示しながら、アオイは空を指差す。日が暮れ始めた空は綺麗な夕焼けに染まっていた。約束した時間に帰らなければ、明日以降に差し支える。緊急事態だからこそ、動けない状態になるのは避けましょう。

 姉の説得に頷き、アイリーンは屋敷へ足を向ける。後ろ髪を引かれる思いで、何度も振り返り……覚悟を決めて東開大陸へ飛んだ。明日、必ず助けになるため。いまは問題を起こせなかった。








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新作
【過保護な竜王による未来の魔王の育て方】

https://www.alphapolis.co.jp/novel/470462601/152890747

子育て系ほのぼのファンタジー、長編。ハッピーエンド確定です。両親を失った子を拾った竜王の、ドタバタ子育て物語_( _*´ ꒳ `*)_
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