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第122話 三姉妹、異国に降り立つ
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「行ってきます」
舞台の上で笑って手を振り、消えていく妹達。見送るシンは複雑な思いで長い息を吐いた。そんな簡単に遊びに行くような場所ではないのに。末姫アイリーンの霊力や契約獣の力は信じている。だが隣大陸までひょいひょい転移するのは、過去に事例がなかった。
今までも移動していたのだから、危険はないとキエは言うが。やっぱり不安なのは仕方ない。一緒に行きたかったが、まだ処理前の書類があった。明日は同行すると約束したのだから、今日中に処理しなくてはならない。気合を入れ、シンは執務室へ向かった。
「……力を過信しなければいいけれど」
先ほどまで安全を強調していたキエだが、不安は感じている。生まれてからずっと面倒を見てきた。乳母とは違う立場だが、躾けて叱り愛してきたつもりだ。可愛い外見と無邪気な性格、純粋な本質。そして何より調子に乗りやすい気分屋な部分が、溜め息を生み出す。
そもそも封印を解いたのも、禁足地を休憩場所にしていた彼女の不手際だ。調子に乗って走り回り、封印の札を割った。あの時は教育もかねて送り出したが、今になれば、大きな騒動を起こされなくて良かったと胸を撫で下ろすばかり。
今度も何事もなく、楽しかったと言いながら帰ってきてほしい。そう願いながら、使い終えた舞台の掃除を始めた。アイリーンだけでなく、アオイやヒスイも一緒に無事で。願掛けのように磨いた床を見つめ、キエは気持ちを落ち着けた。大丈夫よ。
ふわふわした時間がいつもより少し長くて、着地した時はほっとした。アイリーンが目を開けた部屋は、見慣れた屋敷の一室だ。以前より埃が少ないのは、管理している倭国の人が掃除してくれたのかも。
「ついたの?」
「本当に?」
姉二人の疑問に応えるように、末姫は窓を開け放った。まだ明るい時間なので、高台にある屋敷から街が一望できる。倭国を呑み込みそうな大きさの王都は、今日も賑やかだった。
「ほら、姉様。びじぇるべるにゃーん王国よ」
「ビュシェルベルジェールでしょう。ちゃんと覚えてちょうだい」
政に詳しいアオイに訂正を入れられ、ぺろっと舌を出して誤魔化す。だって舌を噛みそうなんだもの、そう付け加えたらヒスイが大笑いした。冷たい雰囲気で仲が良くない姉二人だけど、最近は歩み寄っている気がする。仲良しには届かなくても、毛嫌いする感じは消えた。
ルイと知り合ってからいいことばかりかも。ふふっと笑い、クローゼットの扉を開く。用意してもらった服が並んでいた。姉も一緒だから、キエに手配してもらったのよね。こちらに住む協力者のセンスなのか、明るい色のワンピースばかり。
「この裾丈、問題ないの?」
「……文献で読む限りは大丈夫だと思うわ」
ヒスイの心配に、アオイが答える。二人が手にしたスカートは膝下丈だった。カーテンを引いてさっさと着替えるアイリーンは、お気に入りの和風ドレスだ。膝丈なのだが、動きやすくて好きだった。鶯茶のワンピースは、下にふわふわのパニエを入れて。
お気に入りの髪飾りでツインテールを飾った。それから姉二人の着替えを手伝う。出来るだけ裾が長いワンピースを選んだアオイは、水色だった。ヒスイは短い丈に挑戦すると言いだし、膝上丈の淡いオレンジを纏う。
着替え終えた二人はお互いを確認し、鏡を覗いて頷き合った。倭国では許されないけれど、この国に来たからには冒険しよう、と。
舞台の上で笑って手を振り、消えていく妹達。見送るシンは複雑な思いで長い息を吐いた。そんな簡単に遊びに行くような場所ではないのに。末姫アイリーンの霊力や契約獣の力は信じている。だが隣大陸までひょいひょい転移するのは、過去に事例がなかった。
今までも移動していたのだから、危険はないとキエは言うが。やっぱり不安なのは仕方ない。一緒に行きたかったが、まだ処理前の書類があった。明日は同行すると約束したのだから、今日中に処理しなくてはならない。気合を入れ、シンは執務室へ向かった。
「……力を過信しなければいいけれど」
先ほどまで安全を強調していたキエだが、不安は感じている。生まれてからずっと面倒を見てきた。乳母とは違う立場だが、躾けて叱り愛してきたつもりだ。可愛い外見と無邪気な性格、純粋な本質。そして何より調子に乗りやすい気分屋な部分が、溜め息を生み出す。
そもそも封印を解いたのも、禁足地を休憩場所にしていた彼女の不手際だ。調子に乗って走り回り、封印の札を割った。あの時は教育もかねて送り出したが、今になれば、大きな騒動を起こされなくて良かったと胸を撫で下ろすばかり。
今度も何事もなく、楽しかったと言いながら帰ってきてほしい。そう願いながら、使い終えた舞台の掃除を始めた。アイリーンだけでなく、アオイやヒスイも一緒に無事で。願掛けのように磨いた床を見つめ、キエは気持ちを落ち着けた。大丈夫よ。
ふわふわした時間がいつもより少し長くて、着地した時はほっとした。アイリーンが目を開けた部屋は、見慣れた屋敷の一室だ。以前より埃が少ないのは、管理している倭国の人が掃除してくれたのかも。
「ついたの?」
「本当に?」
姉二人の疑問に応えるように、末姫は窓を開け放った。まだ明るい時間なので、高台にある屋敷から街が一望できる。倭国を呑み込みそうな大きさの王都は、今日も賑やかだった。
「ほら、姉様。びじぇるべるにゃーん王国よ」
「ビュシェルベルジェールでしょう。ちゃんと覚えてちょうだい」
政に詳しいアオイに訂正を入れられ、ぺろっと舌を出して誤魔化す。だって舌を噛みそうなんだもの、そう付け加えたらヒスイが大笑いした。冷たい雰囲気で仲が良くない姉二人だけど、最近は歩み寄っている気がする。仲良しには届かなくても、毛嫌いする感じは消えた。
ルイと知り合ってからいいことばかりかも。ふふっと笑い、クローゼットの扉を開く。用意してもらった服が並んでいた。姉も一緒だから、キエに手配してもらったのよね。こちらに住む協力者のセンスなのか、明るい色のワンピースばかり。
「この裾丈、問題ないの?」
「……文献で読む限りは大丈夫だと思うわ」
ヒスイの心配に、アオイが答える。二人が手にしたスカートは膝下丈だった。カーテンを引いてさっさと着替えるアイリーンは、お気に入りの和風ドレスだ。膝丈なのだが、動きやすくて好きだった。鶯茶のワンピースは、下にふわふわのパニエを入れて。
お気に入りの髪飾りでツインテールを飾った。それから姉二人の着替えを手伝う。出来るだけ裾が長いワンピースを選んだアオイは、水色だった。ヒスイは短い丈に挑戦すると言いだし、膝上丈の淡いオレンジを纏う。
着替え終えた二人はお互いを確認し、鏡を覗いて頷き合った。倭国では許されないけれど、この国に来たからには冒険しよう、と。
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