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第121話 梅のおにぎり必須よ

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 夕食を食べて、翌日また隣大陸へ向かうつもりで早く休んだ。巫女として三柱の神と契約するアイリーンの霊力は桁違いで、次に向かう際は姉達を連れていく約束をさせられた。というのも、この際だから視察をしたいアオイはもちろん、ヒスイも興味深々なのだ。

 船に半月揺られて到着するフルール大陸は遠い。皇族が簡単に許される外出距離ではなかった。さらに翌日は、皇太子シンも行くつもりで仕事を片付けている。兄や姉を連れていても霊力の消費は大きくないので、アイリーンはさほど気にしなかった。

 あの頃の私と一緒で、新しい街や国を見たいのよね。東開大陸の国々は交流があり、交易も盛んだった。外交官を置いている国もあるくらいだ。お姉様達にお土産を買う予定だったけれど、案内だけでいいかな。家族で食べるお菓子でも買って帰ろう。

 この時点でアイリーンは、まだ遠足気分だった。フルール大陸まで追いかけた瘴気問題は解決し、封印を解いたことも結果を見れば解決済みだ。ルイに会う方法だけ考えないと……うちほど緩くないわよね。以前に王城の門前を通った時は、すごく警備が厳重だったもの。

 お稲荷さんを食べて満足のココが丸くなり、そのお尻に頭を預けるようにしてネネも転がる。二匹が布団から落ちないよう枕でガードして、ふと気づいた。

「ミミはどうしているのかしら」

『呼ばれれば、すぐに参じるぞ』

 天井付近から声が聞こえ、ぼとっと布団の上に白蛇が降ってくる。もし蛇が嫌いなら悲鳴を上げるところだが、幼い頃から見慣れたアイリーンは無邪気に手を伸ばした。するすると腕を這いあがるミミは、頬ずりをして巻き付く。腕に絡まる蛇を撫でて、やっと横になった。

「明日は一緒に行く?」

『ふむ、ドラゴンも気になるゆえ……向かうとしよう』

 ミミの同行も決まり、アイリーンは大きな欠伸をして目を閉じる。朝になったら禊をして、神様の祭壇にお祈りを捧げる。その後食事をして、出掛けるのは午後かな。おにぎりを頼んでおいて持っていこう。ルイは梅も平気だったよね。

 考え事の途中で、意識が落ちる。じっと見つめる白蛇神は、申し訳なさそうに聞こえない言葉を吐いた。

『フクロウに任せたのが失敗であった。すまぬな』

 面倒事が待ち受けると知っている白蛇の謝罪に、ちらっとココが視線を向ける。だが何も言わずに、ふすんと鼻から大きな息を吐いた。何もなかったように眠る神狐に、白蛇神はきょとんとした様子で固まる。三匹は契約主に寄り添いながら、朝を迎えた。

 アイリーンが口にした通り、夜明け直前から起こされる。まだ朝日を浴びぬうちに禊を済ませ、明るくなり始めた祭壇に榊を飾った。神々との契約が色濃く残る倭国では、この儀式は月に一度行われる。巫女としての能力が高いアオイも参加した。

 舞いが必要ない儀式なので、ヒスイは端で見つめるだけ。巫女の大半は参加し、一様に頭を下げて一カ月の無事と繁栄を祈る。一段落したところで、アイリーンはぐっと体を伸ばした。

「よし! アオイ姉様も、ヒスイ姉様も準備して」

 キエにおにぎりを頼み、急いで部屋に引き上げた。食事の前に、巫女の衣装を脱がなくちゃ。父や兄も同席する朝食を楽しみに、彼女は廊下を走った。見つけた侍女長に叱られるところまでがセットなのは、言うまでもない。
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