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100.勘違いではなくて?(最終話)
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エキナセア女神の象徴色であるピンクを纏った教皇猊下、彼の出現で場が華やかになる。
「どうして、エキナセア女神様はあのピンクを好まれたのかしらね」
苦笑いするカレンデュラも、マーメイドラインのドレスで一礼した。この姿では足を引いてのカーテシーはできない。両手を広げて優雅に頭を下げた。己が信仰する女神でなくても、神々の一柱である。その代理人であり、神聖国の頂点に立つ教皇に敬意を示すのは当然だった。
コルジリネも会釈し、周囲の貴族も一斉に敬意を込めて頭を下げる。教皇の合図で、挨拶が終了した。フランネル神を信仰するルピナスも、他国の女神を蔑ろにはしない。互いにいい関係が築けていた。
「皆に愛の女神のご加護と祝福があらんことを」
決まり文句ではなく自分の言葉を口にした教皇に、人々は親近感を持った。一番危険な隣国だったエキナセア神聖国が変わった。この話は、民の間にも広まっていくのだろう。
「世界って平和に向かうようにできているのね」
「神々のご加護でしょう」
ピンクの髪を持つがゆえに、新興派に大切にされたリクニスの聖女ビオラが呟く。夫となったルピナスは、穏やかに答えた。これが世界の在るべき姿で、平和こそ真実だ。そう宣言するように、人々は幸福に酔った。
*********************
十五年後。日本人同士が集まる機会は滅多に訪れない。皇位を継いだコルジリネと皇妃カレンデュラの治世は安定していた。王子二人に王女一人、跡取りにも恵まれている。ティアレラは辺境伯家当主となり、夫シオンとの間に五人の子を産んだ。
ビオラは驚くほどの多産で、なんと二桁の子供を作った。孤児院の運営に協力しているが、子育てに追われているとか。タンジー公爵家はまさかの代替わり前である。公爵夫人が元気で、息子クレチマスをまだ鍛え続けているらしい。リッピアが公爵夫人になるのは、まだ数年先と手紙に綴られていた。
コルジリネの侍従になったアスカは、最近長期休暇を取った。可愛い妻を見つけると意気込み、なぜか海辺へ向かったらしい。この世界で海水浴の習慣はないのだが、水着美女を探してうろつく姿が目撃された。
セントーレア帝国、謁見の間――玉座でコルジリネとカレンデュラは、若い少女と向き合っていた。隣には自国の公爵令息、婚約破棄された侯爵令嬢がいる。
「私は予言の巫女なの、だから……この世界を救うために日本から来ました。私を信じてください」
日本、予言の巫女……ああ、また誰か転移や転生をしちゃったのね。カレンデュラは口元を緩め、ちらりと隣の夫を見やる。コルジリネは厳しい表情で、溜め息を吐いた。どの時代も愚かな王侯貴族はいるわ。そこにつけ込む異世界からの訪問者も。
唯一の救いは、日本から来た小娘に引っかかったのが息子でなかったこと。馴染む気がない子は要らないわね。私の微笑みを正確に読み解いた夫は、自由にしていいと目配せを寄越した。なら、言わせていただきましょう。カレンデュラの声は朗々と響き渡った。
「異世界だの、予言の巫女だの……あなたの思い違いではありませんの?」
終わり
*********************
お付き合いありがとうございました。完結になります。あちこちに飛び火して纏まらない小説になった気もしますが、こういうのが好きなんですよねぇ_( _*´ ꒳ `*)_少しでも楽しんでいただけたなら、幸いです。
明日、新作を公開します。ぜひ読みにお寄りくださいね。
*********************
11/20追記
リアルのお仕事が忙しく、月末まで新作は延期します。ごめんなさい(o´-ω-)o)ペコッ
「どうして、エキナセア女神様はあのピンクを好まれたのかしらね」
苦笑いするカレンデュラも、マーメイドラインのドレスで一礼した。この姿では足を引いてのカーテシーはできない。両手を広げて優雅に頭を下げた。己が信仰する女神でなくても、神々の一柱である。その代理人であり、神聖国の頂点に立つ教皇に敬意を示すのは当然だった。
コルジリネも会釈し、周囲の貴族も一斉に敬意を込めて頭を下げる。教皇の合図で、挨拶が終了した。フランネル神を信仰するルピナスも、他国の女神を蔑ろにはしない。互いにいい関係が築けていた。
「皆に愛の女神のご加護と祝福があらんことを」
決まり文句ではなく自分の言葉を口にした教皇に、人々は親近感を持った。一番危険な隣国だったエキナセア神聖国が変わった。この話は、民の間にも広まっていくのだろう。
「世界って平和に向かうようにできているのね」
「神々のご加護でしょう」
ピンクの髪を持つがゆえに、新興派に大切にされたリクニスの聖女ビオラが呟く。夫となったルピナスは、穏やかに答えた。これが世界の在るべき姿で、平和こそ真実だ。そう宣言するように、人々は幸福に酔った。
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十五年後。日本人同士が集まる機会は滅多に訪れない。皇位を継いだコルジリネと皇妃カレンデュラの治世は安定していた。王子二人に王女一人、跡取りにも恵まれている。ティアレラは辺境伯家当主となり、夫シオンとの間に五人の子を産んだ。
ビオラは驚くほどの多産で、なんと二桁の子供を作った。孤児院の運営に協力しているが、子育てに追われているとか。タンジー公爵家はまさかの代替わり前である。公爵夫人が元気で、息子クレチマスをまだ鍛え続けているらしい。リッピアが公爵夫人になるのは、まだ数年先と手紙に綴られていた。
コルジリネの侍従になったアスカは、最近長期休暇を取った。可愛い妻を見つけると意気込み、なぜか海辺へ向かったらしい。この世界で海水浴の習慣はないのだが、水着美女を探してうろつく姿が目撃された。
セントーレア帝国、謁見の間――玉座でコルジリネとカレンデュラは、若い少女と向き合っていた。隣には自国の公爵令息、婚約破棄された侯爵令嬢がいる。
「私は予言の巫女なの、だから……この世界を救うために日本から来ました。私を信じてください」
日本、予言の巫女……ああ、また誰か転移や転生をしちゃったのね。カレンデュラは口元を緩め、ちらりと隣の夫を見やる。コルジリネは厳しい表情で、溜め息を吐いた。どの時代も愚かな王侯貴族はいるわ。そこにつけ込む異世界からの訪問者も。
唯一の救いは、日本から来た小娘に引っかかったのが息子でなかったこと。馴染む気がない子は要らないわね。私の微笑みを正確に読み解いた夫は、自由にしていいと目配せを寄越した。なら、言わせていただきましょう。カレンデュラの声は朗々と響き渡った。
「異世界だの、予言の巫女だの……あなたの思い違いではありませんの?」
終わり
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お付き合いありがとうございました。完結になります。あちこちに飛び火して纏まらない小説になった気もしますが、こういうのが好きなんですよねぇ_( _*´ ꒳ `*)_少しでも楽しんでいただけたなら、幸いです。
明日、新作を公開します。ぜひ読みにお寄りくださいね。
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11/20追記
リアルのお仕事が忙しく、月末まで新作は延期します。ごめんなさい(o´-ω-)o)ペコッ
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