87 / 100
87.ご都合主義でもいいわ
しおりを挟む
皆で結婚式? 話を聞いたビオラは大喜びした。神官のルピナスと結婚後は、神殿の仕事を手伝う予定だ。男爵家の養女でも、貴族社会から一線を引いた生活になるだろう。最後に華やかな舞台に上がりたい。ごく自然な感情だった。
カレンデュラにしても、本来の結婚式はセントーレア帝国だ。家族はともかく、友人達を呼ぶのは難しかった。ティアレラは国防の要であるカージナリス辺境伯家の跡取りでもあり、国外への招待は断られるだろう。リクニスで披露宴としての式を挙げ、誓いは帝国で立てればいいのでは? と考えた。
隣国エキナセア神聖国がきな臭いのも手伝い、この際だから早めに結婚して子を産みたい。ティアレラは、今回の提案を前向きに捉えていた。それに親友の花嫁姿も見られるなら、万々歳だ。
義妹リッピアの愛らしさにメロメロのクレチマスは、反対する理由がない。結婚式は一日でも早く、すぐにでもリッピアを囲い込みたかった。妻という響きもいい。にやりと緩む口元を引き締めた。
「誰も反対しないのか」
国王フィゲリウスは溜め息を吐く。デルフィニューム公爵オスヴァルドまで、賛成に回ったと聞いて抵抗を諦めた。
リクニス国の風習では、結婚式に贈答品を用意する。花嫁花婿が揃って使うもの、カトラリーや揃いのカップ、対になった宝飾品など。二つでひとセットになった品を贈るのだ。高価でなくても構わないが、贈る品は限定された。
ここで問題が発生する。民にまで話が広まり、あちこちで結婚式ブームが巻き起こったのだ。このまま行くと、贈答品が枯渇する。お揃いならリボンでもいいのだが、貴族や王族となれば、話はややこしかった。
「贈答品なしでいいじゃありませんの」
相談したカレンデュラに一刀両断され。話はとんとん拍子に進んだ。花嫁花婿が、祝いに駆けつけた民と区別できるように。ただそれだけの目的で、花嫁花婿の衣装は白に決まった。当然だが、日本でのウエディングドレスの概念が持ち込まれている。
純白のドレスと薄グレーのタキシード。ここが確定すれば、集まる友人達は華やかな色を纏う。準備は思わぬ形で着々と詰められていった。
「コルジリネを借りてくる方法を考えなくては……」
カレンデュラは皇帝陛下の説得のために手紙を書き、その隣でクレチマスもタンジー公爵夫妻に伝令を出した。ティラレラは両親を迎えに馬に跨り、ビオラも純白の布を手に入れてドレスを縫う。
思いつきから溢れでた話は、周辺国を巻き込む形で広がり続けた。ホスタ王国でも日をずらして、同様の結婚式を企画している。
話が盛り上がったところで、エキナセア神聖国に動きがあった。新しい教皇が決まったのだ。前教皇と関わりのない、新興派から選ばれた。教皇派も聖女派も、さまざまな悪事がバレて動きが取れない。そのタイミングで、強引に推し進めた。
「ご都合主義って、こういうのを言うのよね」
カレンデュラの呟きに、友人達は口々に同意する。都合が良くても、強制力のお陰でもいいわ。平和が一番。そう締めくくり、顔を見合わせて笑った。
カレンデュラにしても、本来の結婚式はセントーレア帝国だ。家族はともかく、友人達を呼ぶのは難しかった。ティアレラは国防の要であるカージナリス辺境伯家の跡取りでもあり、国外への招待は断られるだろう。リクニスで披露宴としての式を挙げ、誓いは帝国で立てればいいのでは? と考えた。
隣国エキナセア神聖国がきな臭いのも手伝い、この際だから早めに結婚して子を産みたい。ティアレラは、今回の提案を前向きに捉えていた。それに親友の花嫁姿も見られるなら、万々歳だ。
義妹リッピアの愛らしさにメロメロのクレチマスは、反対する理由がない。結婚式は一日でも早く、すぐにでもリッピアを囲い込みたかった。妻という響きもいい。にやりと緩む口元を引き締めた。
「誰も反対しないのか」
国王フィゲリウスは溜め息を吐く。デルフィニューム公爵オスヴァルドまで、賛成に回ったと聞いて抵抗を諦めた。
リクニス国の風習では、結婚式に贈答品を用意する。花嫁花婿が揃って使うもの、カトラリーや揃いのカップ、対になった宝飾品など。二つでひとセットになった品を贈るのだ。高価でなくても構わないが、贈る品は限定された。
ここで問題が発生する。民にまで話が広まり、あちこちで結婚式ブームが巻き起こったのだ。このまま行くと、贈答品が枯渇する。お揃いならリボンでもいいのだが、貴族や王族となれば、話はややこしかった。
「贈答品なしでいいじゃありませんの」
相談したカレンデュラに一刀両断され。話はとんとん拍子に進んだ。花嫁花婿が、祝いに駆けつけた民と区別できるように。ただそれだけの目的で、花嫁花婿の衣装は白に決まった。当然だが、日本でのウエディングドレスの概念が持ち込まれている。
純白のドレスと薄グレーのタキシード。ここが確定すれば、集まる友人達は華やかな色を纏う。準備は思わぬ形で着々と詰められていった。
「コルジリネを借りてくる方法を考えなくては……」
カレンデュラは皇帝陛下の説得のために手紙を書き、その隣でクレチマスもタンジー公爵夫妻に伝令を出した。ティラレラは両親を迎えに馬に跨り、ビオラも純白の布を手に入れてドレスを縫う。
思いつきから溢れでた話は、周辺国を巻き込む形で広がり続けた。ホスタ王国でも日をずらして、同様の結婚式を企画している。
話が盛り上がったところで、エキナセア神聖国に動きがあった。新しい教皇が決まったのだ。前教皇と関わりのない、新興派から選ばれた。教皇派も聖女派も、さまざまな悪事がバレて動きが取れない。そのタイミングで、強引に推し進めた。
「ご都合主義って、こういうのを言うのよね」
カレンデュラの呟きに、友人達は口々に同意する。都合が良くても、強制力のお陰でもいいわ。平和が一番。そう締めくくり、顔を見合わせて笑った。
141
お気に入りに追加
695
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
その聖女、娼婦につき ~何もかもが遅すぎた~
ノ木瀬 優
恋愛
卒業パーティーにて、ライル王太子は、レイチェルに婚約破棄を突き付ける。それを受けたレイチェルは……。
「――あー、はい。もう、そういうのいいです。もうどうしようもないので」
あっけらかんとそう言い放った。実は、この国の聖女システムには、ある秘密が隠されていたのだ。
思い付きで書いてみました。全2話、本日中に完結予定です。
設定ガバガバなところもありますが、気楽に楽しんで頂けたら幸いです。
R15は保険ですので、安心してお楽しみ下さい。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。
112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。
目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。
死にたくない。あんな最期になりたくない。
そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。
ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)
青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。
父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。
断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。
ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。
慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。
お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが
この小説は、同じ世界観で
1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について
2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら
3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。
全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。
続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。
本来は、章として区切るべきだったとは、思います。
コンテンツを分けずに章として連載することにしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる