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番外編
1-2.エル様を迎える準備を
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大好きな姉にべったりくっ付いて離れないマリユスは、着替えや風呂だと言われても納得しなかった。嫌だと泣いてごねる。一緒がいいと騒ぐ弟に折れたのは、姉ミレイユだった。
「一緒でいいわ」
まだ一歳半の弟とお風呂に入ったからって、問題ない。四歳を過ぎた娘の判断に、私はなんだか申し訳ない気持ちになった。有難いけれど、この子に頼りすぎてはいけないわね。自分の時間をしっかり取ってあげないと、疲れてしまうわ。
末っ子の私も、カトリーヌお姉様やディオンお兄様に同じことをしたのかしら。気になったので、今度お母様が訪ねてきた時に聞いてみましょう。初孫のミレイユが生まれたのを機に、よく訪ねてきてくれるのだ。
結婚前は私がアルドワン王国へ出向いていたが、子連れでは身動きが取れない。お父様とお母様は、連れ立って孫に会いに来るのを楽しみにしていた。たぶん、その間に仕事を押し付けられるのは、ディオンお兄様だわ。帰りのお土産をたくさん持たせますから、お願いしますね。
あと半月もすれば、両親が顔を見せてくれる。ミレイユはいいけれど、またマリユスが泣くわね。人見知りの激しいマリユスは、すぐに姉の後ろに隠れてしまう。それでいて、負けん気は強いようで。ミレイユを独占しようと、お父様を押し除ける姿には笑ったわ。
懐く頃に離れたから、またやり直しね。ふふっと笑い、セリアとクロエに身支度を手伝ってもらう。コレットはミレイユ、デジレはマリユス。それぞれに専属となった。これも見越して侍女を増やしてくれたのだとしたら、もう一人くらい産んでも平気そう。
今回のエル様の王城滞在は、一カ月ほどだった。半分は公爵としての社交、残りは騎士団の訓練に参加する。一応、まだ騎士団の団長なのよね。普段いないのに、いいのかしら。誰か常駐の騎士団長を選べばいいのに。エル様も同じことを溜め息混じりに呟き、出かけて行った。
陛下は久しぶりに会うので、以前好きと言っていた茶葉を用意させた。ふわふわのケーキを焼いたのは、街のパン屋の女将さん。いつもながら見事な出来栄えで、陛下もお気に入りなのよ。王妃様がご一緒でなければ、お土産も焼いてもらう約束をした。
「れたぁ!」
お風呂を出たと言いながら、裸で逃げてくる我が子に吹き出す。化粧中のクロエが「奥様!」と叱るけれど、彼女も振り返ったら顔が綻んだ。セリアに捕まり、デジレに引き渡される。身支度を整えてもらいなさい。
ミレイユの呼ぶ声に、マリユスは元気に返事をしながら走って戻った。仲が良くて助かるわ。先ほどの乱入で歪んだ化粧を直し、ドレスに着替える。最近、胸焼けがするのでコルセットは控えた。ゆったりしたエンパイア風のドレスに袖を通し、髪を結う。
私の準備が整えば、子供達の支度だ。侍女がいても、あの様子では手が足りないでしょう。いそいそと続き部屋へ向かえば、二人は着替え終えたところだった。
ミレイユは濃いピンクのワンピース、紺色の半ズボンに水色のシャツはマリユスだ。髪を乾かすマリユスは、座った椅子の上で足をぶらぶらと揺らす。お行儀が悪いけれど、躾はもっと先なので大人しく座っているだけ偉かった。
私と同じ銀髪のミレイユは、上部を髪留めで飾っただけで流した。ワンピースは銀の刺繍が入り、きらきらと美しい。鏡の前でくるりと回る彼女は、四歳ながら立派な令嬢だった。
「お母様、お父様はもうすぐですか?」
「ええ。連絡が入ったわ」
執事によれば、あと半刻で着くらしい。楽しみだと頬を緩める娘に同意した。
*********************
新作
【過保護な竜王による未来の魔王の育て方】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/470462601/152890747
子育て系ほのぼのファンタジー、長編。ハッピーエンド確定です。両親を失った子を拾った竜王の、ドタバタ子育て物語_( _*´ ꒳ `*)_
「一緒でいいわ」
まだ一歳半の弟とお風呂に入ったからって、問題ない。四歳を過ぎた娘の判断に、私はなんだか申し訳ない気持ちになった。有難いけれど、この子に頼りすぎてはいけないわね。自分の時間をしっかり取ってあげないと、疲れてしまうわ。
末っ子の私も、カトリーヌお姉様やディオンお兄様に同じことをしたのかしら。気になったので、今度お母様が訪ねてきた時に聞いてみましょう。初孫のミレイユが生まれたのを機に、よく訪ねてきてくれるのだ。
結婚前は私がアルドワン王国へ出向いていたが、子連れでは身動きが取れない。お父様とお母様は、連れ立って孫に会いに来るのを楽しみにしていた。たぶん、その間に仕事を押し付けられるのは、ディオンお兄様だわ。帰りのお土産をたくさん持たせますから、お願いしますね。
あと半月もすれば、両親が顔を見せてくれる。ミレイユはいいけれど、またマリユスが泣くわね。人見知りの激しいマリユスは、すぐに姉の後ろに隠れてしまう。それでいて、負けん気は強いようで。ミレイユを独占しようと、お父様を押し除ける姿には笑ったわ。
懐く頃に離れたから、またやり直しね。ふふっと笑い、セリアとクロエに身支度を手伝ってもらう。コレットはミレイユ、デジレはマリユス。それぞれに専属となった。これも見越して侍女を増やしてくれたのだとしたら、もう一人くらい産んでも平気そう。
今回のエル様の王城滞在は、一カ月ほどだった。半分は公爵としての社交、残りは騎士団の訓練に参加する。一応、まだ騎士団の団長なのよね。普段いないのに、いいのかしら。誰か常駐の騎士団長を選べばいいのに。エル様も同じことを溜め息混じりに呟き、出かけて行った。
陛下は久しぶりに会うので、以前好きと言っていた茶葉を用意させた。ふわふわのケーキを焼いたのは、街のパン屋の女将さん。いつもながら見事な出来栄えで、陛下もお気に入りなのよ。王妃様がご一緒でなければ、お土産も焼いてもらう約束をした。
「れたぁ!」
お風呂を出たと言いながら、裸で逃げてくる我が子に吹き出す。化粧中のクロエが「奥様!」と叱るけれど、彼女も振り返ったら顔が綻んだ。セリアに捕まり、デジレに引き渡される。身支度を整えてもらいなさい。
ミレイユの呼ぶ声に、マリユスは元気に返事をしながら走って戻った。仲が良くて助かるわ。先ほどの乱入で歪んだ化粧を直し、ドレスに着替える。最近、胸焼けがするのでコルセットは控えた。ゆったりしたエンパイア風のドレスに袖を通し、髪を結う。
私の準備が整えば、子供達の支度だ。侍女がいても、あの様子では手が足りないでしょう。いそいそと続き部屋へ向かえば、二人は着替え終えたところだった。
ミレイユは濃いピンクのワンピース、紺色の半ズボンに水色のシャツはマリユスだ。髪を乾かすマリユスは、座った椅子の上で足をぶらぶらと揺らす。お行儀が悪いけれど、躾はもっと先なので大人しく座っているだけ偉かった。
私と同じ銀髪のミレイユは、上部を髪留めで飾っただけで流した。ワンピースは銀の刺繍が入り、きらきらと美しい。鏡の前でくるりと回る彼女は、四歳ながら立派な令嬢だった。
「お母様、お父様はもうすぐですか?」
「ええ。連絡が入ったわ」
執事によれば、あと半刻で着くらしい。楽しみだと頬を緩める娘に同意した。
*********************
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https://www.alphapolis.co.jp/novel/470462601/152890747
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