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84.大急ぎで準備を進める

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 心配していた屋敷の皆に祝われて、すぐに準備が整えられた。結婚式は来月の末、満月の日に決まる。すぐに遠いお客様から通知が出された。私も大急ぎで実家に手紙を書く。

 カトリーヌお姉様にも手紙を書き、早馬で送ってもらった。国王陛下にはエル様が知らせを送り、国内の貴族にも執事が代筆した通知が発送された。署名はエル様が担当するので、しばらくは机仕事が増える。

 袖にインクが滲んでることもあり、お互いに指摘して笑った。お祝い事には、すぐ返信するのが礼儀だ。次々と返ってくる手紙を確認し、参加の有無をリストに書き写す。この辺は執事に任せてしまった。

 急遽決まった結婚式だけれど、結婚そのものは五年も前から確定している。来年だと思っていたお式が前倒しになり、仮縫いだった衣装を大急ぎで仕立てる。会場となる広間は、執事や侍従が担当だった。

 エル様が予算をふんだんに用意してくれたので、準備は順調だ。酒類は地下室にあるものを、すべて吐き出すことにした。これで式の後は購入すれば、消費も回るんですって。殿方は政の心配もあって大変だわ。

 実家からの手紙は、護衛付きだった。お母様が宝飾品を贈ってくれたの。お父様との結婚式で使った首飾りや耳飾り、どちらも素敵だわ。大きな真珠と金剛石で作られたお飾りは、私の憧れだった。幼い頃に、お母様に欲しいと強請ったのを覚えている。

 お母様は、その時の約束を果たしてくれた。大きくなって、あなたが幸せな結婚をするときに譲るわ。その言葉が現実になったのだ。感動して宝石箱を抱きしめた。自然と口からありがとうが零れ落ちる。

 国が空になるから、と結婚式にはお兄様だけが顔を見せる予定だった。でもエル様のお言葉に甘えて、結婚式は二度行うの。アルドワンの民や家族にも、私達の幸せな姿を見てほしいから。願いを叶えるエル様の言葉は、本当に嬉しかった。

 庭師さんは白い薔薇を管理している。これは結婚式のために育てられた。結婚式が早まったので、開花を促すために温室へ移動したそうよ。ありがたいわ。街でもお祭りの準備が始まった。あちこちに花の鉢が並べられ、家の二階の窓は旗が揺れる。

 華やかになった風景は、砦の窓からも確認できた。浮かれる街の様子は、私の心も明るくしてくれる。白いドレスの試着をして、少しだけ胸元を緩めてもらった。もしかして大きくなるのかしら。期待しながら、サイズ直しを手配する。

 この段階でサイズ変更は申し訳ないけれど、お針子さん達は喜んで受け入れてくれた。振る舞う食材の手配も済み、あとはお天気の心配くらい?

 王族に生まれて、政略結婚は当たり前だと教わった。カトリーヌお姉様の恋愛結婚に続き、私も一目惚れしたエル様と結ばれる。なんて幸せなのかしら。あと一ヶ月、何も起きませんように。祈りながら、エル様と飲むお茶の準備を始めた。
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