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20.新しい専属侍女が増えました
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大量買いした服は、すべて後から届けられる。当然だけれど、お店に並んだ服と私のサイズが合わないからよ。淑女のためのお店だから、私より大きめなのよね。十八歳くらいなら、そのまま着られたかもしれないわ。
「王弟殿下、届いた服の管理ですが」
クロエが相談の声をあげる。
「ああ。もちろん対策をする」
また同じようにイカ墨と内臓をぶちまけられたら大変だ。ちなみに私がイカ墨に興味を示したところ、エル様は渋い顔で「後日にしてくれ」と延期の申し出をされた。イカ墨、お嫌いなのかしら? 確かに生臭いですが、ちゃんと調理すれば美味しいと聞いたのに。
エル様のお城で働く侍女のうち、三人が私の専属になる。セリア、コレット、デジレで全員黒髪なのよ。エル様とお揃いで羨ましいと口にしたら、透き通る銀髪や金髪の方が羨ましいと返された。まさにない物ねだりね。
「服は私どもが交代で管理いたします」
私が頂いたお部屋の隣に、衣裳部屋を作るそうです。今回買った服も、今後届く服もすべて衣裳部屋に運び込む。廊下から入れないよう、扉を施錠して対応する予定だとか。将来的には廊下に繋がる扉を封鎖するみたい。
大事になってきたわ。侍女が見張る間は、扉の施錠が出来なかった。トイレとか困るもの。人が見張るのが一番安全だと決まったようで、セリアから順番に数時間交代で待機する。私の部屋の入口に護衛が立つから、見える位置に扉のある隣室が選ばれたのね。
将来的に扉を潰してお部屋を繋ぐなら、隣の方が都合がいいのも頷けた。数着だけ、ワンピースや下着を持ち帰っている。それを置いた衣裳部屋で深夜に見張り……棚や服もほとんどないから、眠くなりそうだわ。
クロエにそう話したら、笑いながら「お茶や本の持ち込みは出来ます」と教えてくれた。それなら安心だわ。読書用の灯りは贅沢品だけど、遠慮なく使ってほしい。それに灯りが消えたら、騎士が飛び込む手筈と聞いた。皆に迷惑が掛かってしまう。
「何も心配しなくていい。アンは私の大事な婚約者で、モンターニュ国の公爵夫人になる人だ。何より、今は国賓待遇だからね」
いつの間にそんなお話に? 戦争を防ぐための抑止力として、隣国の王子様と政略結婚だった気がする。うーんと考え込む間に抱っこされ、私は食堂へ運び込まれた。椅子ではなく、エル様のお膝に座る。ここもいつも通りだわ。
まだ数日なのに、いつも通りなんて……ふふっ、おかしい。自分で考えて笑ってしまい、何を笑ったのか白状させようとするエル様と攻防を繰り広げた。デザートが運ばれる前に、私が降参して話す。そのやり取りも楽しくて、時間を忘れて過ごした。
普段ベッドに入る時間より少しだけ、大人の時間まで起きている。目が重くなり、欠伸が出た。気持ちはまだ起きていたいのに、体は眠ると宣言したようで。なんだか悔しい。うとうとしながら運ばれ、ベッドに優しく下ろされた。
運ばれているときは夢見心地だったのに、背中がシーツに触れたら目が覚める。ぱちりと目を開いた私に、エル様は笑顔で大きな手を差し出した。目蓋どころか額まで覆う形で、私の目を塞ぐ。
「おやすみ、私の小さな天使」
お父様と同じ……そう思ったのを最後に、意識が吸い込まれていった。
「王弟殿下、届いた服の管理ですが」
クロエが相談の声をあげる。
「ああ。もちろん対策をする」
また同じようにイカ墨と内臓をぶちまけられたら大変だ。ちなみに私がイカ墨に興味を示したところ、エル様は渋い顔で「後日にしてくれ」と延期の申し出をされた。イカ墨、お嫌いなのかしら? 確かに生臭いですが、ちゃんと調理すれば美味しいと聞いたのに。
エル様のお城で働く侍女のうち、三人が私の専属になる。セリア、コレット、デジレで全員黒髪なのよ。エル様とお揃いで羨ましいと口にしたら、透き通る銀髪や金髪の方が羨ましいと返された。まさにない物ねだりね。
「服は私どもが交代で管理いたします」
私が頂いたお部屋の隣に、衣裳部屋を作るそうです。今回買った服も、今後届く服もすべて衣裳部屋に運び込む。廊下から入れないよう、扉を施錠して対応する予定だとか。将来的には廊下に繋がる扉を封鎖するみたい。
大事になってきたわ。侍女が見張る間は、扉の施錠が出来なかった。トイレとか困るもの。人が見張るのが一番安全だと決まったようで、セリアから順番に数時間交代で待機する。私の部屋の入口に護衛が立つから、見える位置に扉のある隣室が選ばれたのね。
将来的に扉を潰してお部屋を繋ぐなら、隣の方が都合がいいのも頷けた。数着だけ、ワンピースや下着を持ち帰っている。それを置いた衣裳部屋で深夜に見張り……棚や服もほとんどないから、眠くなりそうだわ。
クロエにそう話したら、笑いながら「お茶や本の持ち込みは出来ます」と教えてくれた。それなら安心だわ。読書用の灯りは贅沢品だけど、遠慮なく使ってほしい。それに灯りが消えたら、騎士が飛び込む手筈と聞いた。皆に迷惑が掛かってしまう。
「何も心配しなくていい。アンは私の大事な婚約者で、モンターニュ国の公爵夫人になる人だ。何より、今は国賓待遇だからね」
いつの間にそんなお話に? 戦争を防ぐための抑止力として、隣国の王子様と政略結婚だった気がする。うーんと考え込む間に抱っこされ、私は食堂へ運び込まれた。椅子ではなく、エル様のお膝に座る。ここもいつも通りだわ。
まだ数日なのに、いつも通りなんて……ふふっ、おかしい。自分で考えて笑ってしまい、何を笑ったのか白状させようとするエル様と攻防を繰り広げた。デザートが運ばれる前に、私が降参して話す。そのやり取りも楽しくて、時間を忘れて過ごした。
普段ベッドに入る時間より少しだけ、大人の時間まで起きている。目が重くなり、欠伸が出た。気持ちはまだ起きていたいのに、体は眠ると宣言したようで。なんだか悔しい。うとうとしながら運ばれ、ベッドに優しく下ろされた。
運ばれているときは夢見心地だったのに、背中がシーツに触れたら目が覚める。ぱちりと目を開いた私に、エル様は笑顔で大きな手を差し出した。目蓋どころか額まで覆う形で、私の目を塞ぐ。
「おやすみ、私の小さな天使」
お父様と同じ……そう思ったのを最後に、意識が吸い込まれていった。
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