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19.婚約者の下着を選ぶのは当然?

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 レースやフリルがたくさん使われた可愛い日常着から、ちょっと大人びたドレスまで。お店では下着の取り扱いがなく、近くにある専門店が出張してきた。

 領主様の威光ってすごいのね。驚きながら、並べられた下着を選ぶ。カトリーヌお姉様が持っている下着に似た、とてもセクシーな上下セットを見つけた。欲しいけれど、背伸びしすぎかしら。

「気に入ったようだ、それも」

「はい、公爵閣下」

 お店のお姉さんは笑顔で応じる。採寸が終わった私は、相変わらずエル様のお膝にいた。そう、下着を選んでいるんだけど、後ろにエル様がいる。

 恥ずかしいと訴えたら、婚約者なのだから一緒に選ぶのは当然だと言われた。それに弁償する義務があるから、同席させてほしいと。お金を払うのはエル様なので、何を買ったのか確かめたいのかも。そう思って同意しましたが、やっぱり恥ずかしい。

「そちらのも見せてくれ、その黒いレースの」

 見られるどころか、エル様が積極的に選び始めた。私が鈍臭くて決断できずにいるから? だって、お金を払っていただくならきちんと選びたいし、何より変な趣味とか思われたくない。

 いろいろ乙女の葛藤が発生した私の前に、下着店のお姉さんが黒いレース下着を広げた。大人っぽいというか、これ……透けてない? 服の下に着るから問題ないの? でも肌がかなり見えている気がする。

 ところどころにピンクのリボンがあしらわれ、それが絶妙に可愛い。子どもっぽい部分を残しながら、でもレースで透けて色っぽかった。次はお店に出向いて、他の下着も見てみたいわ。

「あの」

「これももらおう。ピンク主体の可愛いデザインはあるか?」

 エル様の指示で、数人が外へ走り出した。もしかして、近くにあるお店に取りに行ったのかも。

「エル様、下着は後でお店に見に行ってからでも」

「ああ、そうか。焦ってしまった」

 採寸したドレス店の奥は、若いお針子さん達が大急ぎで着替えていた。アルドワン王国では、本人が試着して選ぶ。そのため一日で試着できるのは、数枚が限度だった。ワンピースならともかく、ドレスは脱ぎ着に時間がかかるから。

 モンターニュは考え方が違い、店のお針子さんや試着専門の女性がいた。高級店だけのサービスだけれど、見本を着た女性が何人も並んで、購入者が選んだものを採寸通りに仕立てるそうで。そのため、現在は試着の方の準備待ちだった。

 下着を取りに戻った方が紙袋を手渡し、お姉さんが中からピンクの下着を引っ張り出す。さっと広げてエル様に見せると、満足そうに「買おう」と購入決定。ちらりと確認した先には、下着が十数着並んでいる。

「あの、エル様。下着は一度に買わなくても」

「今日はこのくらいにしよう。屋敷に届けさせてくれ」

 持って帰らないみたい。量が多いから、お店の人も笑顔で承諾して戻っていった。ここでようやくドレスを着た人が現れ、立体見本のように動いて見せてくれる。エル様は即断即決で購入を決め、数の多さに私がストップを掛けた。

 このあと、実家から届く服もあるので、その程度に。それと……私は十二歳なので、まだ成長するはず。お胸も身長も大きくなるんです。だから、たくさん買っても着られなくなっちゃうわ。
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