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03.涙の別れと新しい旅立ち
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政略結婚でも、戦が迫って急いでいても、王女である私の婚約は国の一大行事だ。当然、お父様やお母様は準備のための時間を欲しがった。私はこの身一つでも構わないけれど、国の体面を考えると問題があるわよね。
「必要なものは後から送ってください。アンジェル姫、構わないか?」
「はい」
この婚約が覆ることはない。恋愛結婚を諦めようとしていたけれど、一目惚れしたお方に嫁げるなんて。これで私を愛してくださったら最高ね、でも無理は望まないわ。強欲すぎると幸運が逃げてしまうもの。
三日後に帰るフェルナン殿下に同行し、私はモンターニュ国へ向かう。自分で決めてお父様にお願いした。婚約段階なので、留学生みたいなものよ。そう説得を試みる。渋い顔をしていたけれど、国を守ってもらうための政略結婚よ。お父様も折れるしかなかった。
「今夜は一緒に寝ましょうか」
お姉様の提案に、私は飛びついた。もっと幼い頃は一緒に眠ったけれど、八歳を過ぎてからは一人で眠っている。誕生日などの特別な日にお強請りして、同じ部屋で寝たりした。もうお兄様は一緒というわけにいかないけれど。
夕食はいつもより豪華で、食後のケーキまで美味しく頂いた。フェルナン殿下にご挨拶して、お姉様のお部屋にお邪魔する。私より六歳も年上のお姉様は、先にお風呂に入った私の髪を乾かしてくれた。それから並んでベッドに横になる。
「ねえ、本当に平気なの? あの方、アンの倍以上の歳だわ」
「お姉様、私……フェルナン殿下が好きなんです。恋したと話してくれたお姉様の気持ちが、やっとわかりました。家族も好きですが、あの方と一緒に生きていきたいの」
ずっと隣にいて好きだと伝えたい。可能なら、あの方にも大切にされたい。伝えた私に、目を見開いたお姉様は「ふふっ」と笑った。そのまま、豊満なお胸に抱き寄せられる。私も腕を背中に回しました。
「もう立派なレディね。アルトワン王国のためではなく、あなた自身のために幸せになりなさい。愛してるわ、アン」
「ありがとう、お姉様。私も大好きです」
その後、どんなところが好きか。お互いの伴侶になる殿方の話で盛り上がり、侍女に叱られて声をひそめる。やがて私が眠ってしまうまで、お姉様は微笑んで話を聞いてくれた。
翌朝から、城中が大騒ぎになる。私の私物を分類して箱詰めし、馬車に積み込む。すぐ必要な物以外は、後で送ってもらうことにした。侍女や侍従など、付き従う使用人が決まる。姉妹のように一緒に育ったクロエが同行すると聞いて、ほっとした。
準備が着々と進む中、お兄様やお父様と過ごす時間を作る。並んでお話をしたり、庭の散歩をしたり。お母様は刺繍したハンカチをくださった。王家を示す紋章が美しいハンカチは、私の宝物よ。お父様は金貨のネックレスを私に差し出した。この金貨、アルトワンの初代国王陛下のお顔が刻まれた記念金貨だわ。
お兄様は素敵な栞と一冊の本を、素敵なショールをくれたのはお姉様だった。すべてをトランクにしまい、同じ馬車で大切に運ぶことにする。新しいドレスや宝飾品も用意され、結婚式前に改めて結納の品を交わす約束もなされた。
あくまでも今回の品は個人の所有物扱いみたい。豪華すぎるけれど、いいのかしら。準備で奔走する間に、三日は過ぎてしまった。あまりの早さに、私も驚いたわ。
「では……アンジェル姫。こちらの馬車へ」
フェルナン殿下のエスコートで、豪華な馬車に乗り込んだ。国境近くまで、アルトワン王国の紋章が入ったこの馬車で移動する。その先は、モンターニュ国の馬車に乗り換えて、フェルナン殿下が所有する公爵家の城へ。どうしても涙が止まらず、湿っぽい旅立ちとなった。
「必要なものは後から送ってください。アンジェル姫、構わないか?」
「はい」
この婚約が覆ることはない。恋愛結婚を諦めようとしていたけれど、一目惚れしたお方に嫁げるなんて。これで私を愛してくださったら最高ね、でも無理は望まないわ。強欲すぎると幸運が逃げてしまうもの。
三日後に帰るフェルナン殿下に同行し、私はモンターニュ国へ向かう。自分で決めてお父様にお願いした。婚約段階なので、留学生みたいなものよ。そう説得を試みる。渋い顔をしていたけれど、国を守ってもらうための政略結婚よ。お父様も折れるしかなかった。
「今夜は一緒に寝ましょうか」
お姉様の提案に、私は飛びついた。もっと幼い頃は一緒に眠ったけれど、八歳を過ぎてからは一人で眠っている。誕生日などの特別な日にお強請りして、同じ部屋で寝たりした。もうお兄様は一緒というわけにいかないけれど。
夕食はいつもより豪華で、食後のケーキまで美味しく頂いた。フェルナン殿下にご挨拶して、お姉様のお部屋にお邪魔する。私より六歳も年上のお姉様は、先にお風呂に入った私の髪を乾かしてくれた。それから並んでベッドに横になる。
「ねえ、本当に平気なの? あの方、アンの倍以上の歳だわ」
「お姉様、私……フェルナン殿下が好きなんです。恋したと話してくれたお姉様の気持ちが、やっとわかりました。家族も好きですが、あの方と一緒に生きていきたいの」
ずっと隣にいて好きだと伝えたい。可能なら、あの方にも大切にされたい。伝えた私に、目を見開いたお姉様は「ふふっ」と笑った。そのまま、豊満なお胸に抱き寄せられる。私も腕を背中に回しました。
「もう立派なレディね。アルトワン王国のためではなく、あなた自身のために幸せになりなさい。愛してるわ、アン」
「ありがとう、お姉様。私も大好きです」
その後、どんなところが好きか。お互いの伴侶になる殿方の話で盛り上がり、侍女に叱られて声をひそめる。やがて私が眠ってしまうまで、お姉様は微笑んで話を聞いてくれた。
翌朝から、城中が大騒ぎになる。私の私物を分類して箱詰めし、馬車に積み込む。すぐ必要な物以外は、後で送ってもらうことにした。侍女や侍従など、付き従う使用人が決まる。姉妹のように一緒に育ったクロエが同行すると聞いて、ほっとした。
準備が着々と進む中、お兄様やお父様と過ごす時間を作る。並んでお話をしたり、庭の散歩をしたり。お母様は刺繍したハンカチをくださった。王家を示す紋章が美しいハンカチは、私の宝物よ。お父様は金貨のネックレスを私に差し出した。この金貨、アルトワンの初代国王陛下のお顔が刻まれた記念金貨だわ。
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あくまでも今回の品は個人の所有物扱いみたい。豪華すぎるけれど、いいのかしら。準備で奔走する間に、三日は過ぎてしまった。あまりの早さに、私も驚いたわ。
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フェルナン殿下のエスコートで、豪華な馬車に乗り込んだ。国境近くまで、アルトワン王国の紋章が入ったこの馬車で移動する。その先は、モンターニュ国の馬車に乗り換えて、フェルナン殿下が所有する公爵家の城へ。どうしても涙が止まらず、湿っぽい旅立ちとなった。
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