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75.他国でもそれぞれやらかしていた
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琥珀が王国の滅亡を宣言している頃……他所も大事件だった。
「私は先代魔王の側近であり、今は琥珀王に仕えるベリアルと申します。我が君の命をお伝えいたしましょう。森人と魔族を従える主は、森への人間の出入りを望んでいません。お分かりですか?」
言葉は丁寧だが、ベリアルの足元には騎士団が一山倒れていた。きっちり山に積んで上に立つ魔族は、くすりと笑う。魔王の恋人は妖艶な仕草で前髪をかき上げた。
「もし踏み入れれば、この程度では済ましませんよ」
この程度と表現された騎士団は、手足を折られて身動きできずに呻く。かなりの重傷だった。ふわりと浮き上がったベリアルがぱちんと指を鳴らす。骨折が強引に治療された。ぐああぁああ! ぎゃぁあああ! 屈強な男達の叫び声が木霊する。
青ざめた宰相や貴族に隠れる国王が、震えながら口を開いた。
「わかった。手は出さん……だから」
「ええ。約束を守っていただく間は、こちらから攻撃する理由はないと思いますよ。もちろん、我が君が機嫌を損ねれば話は別ですが」
遠回しに琥珀王の気分次第と匂わせた。これで嘘を吐かずに済む。この辺の言い回しが、ベリアルの十八番だった。約束したように振舞いながら、実際は抜け道を用意する。ツノの時のように焦っていなければ、ベリアルは有能な交渉担当だった。
「くれぐれも、約束をお忘れなきよう」
悪魔との約束は契約だ。そう言い切って釘を刺し、ベリアルは美しい笑みを残して消えた。残ったのは震える王侯貴族と、無理やり骨折を力技で治された騎士団のみ。手足の骨折は修復されたが、心をべっきり折られた騎士団はしばらく役に立たないだろう。
「新たな魔王かと思ったが……魔王よりマシか」
宰相の呟きが風に攫われ、誰も返事をせぬまま解けて消えた。
「わっはっは! 我は琥珀王の使者であるぞ」
大きな声で琥珀王の名を叫びながら、ドラゴンはその尻尾で王宮を壊していく。まだ新しい新興国家は、建築中の王宮を完膚なきまでに破壊された。ぐしゃぐしゃの瓦礫の上に舞い降りた黒竜は、のそりと身を伏せる。
騎士と並ぶ国王はガタイのいい筋肉男だった。僕がいたら脳筋と評したかもしれない。世の中すべて筋肉で解決するタイプだが、さすがに筋肉でドラゴンに勝てなかった。
「使者殿がなぜ我が城を壊す」
「城? 悪い、積み木を見ると崩したくなるのだ」
まったく悪びれないシェンは、堂々と他人の家を貶した。がははと口を開いて笑い、勢い余ってブレスの炎がちょっと零れ出る。慌てて避ける人間を前に、肩を竦めて口を閉じた。
「琥珀王からの伝言だ。人間は森を切り開くべからず。もし禁を破れば、人間すべてを我らが滅ぼすであろう、と」
「我ら、とは?」
「琥珀王の臣下である森人や魔族だな。古龍である我も同様だ。王は我の力を大きく凌ぐ実力者ゆえ、逆らおうと思うなよ」
壊された建物を見て溜め息を吐き、国王は静かに頷いた。魔王より残虐で子どもっぽい王が君臨したらしい。口に出さなかった本音をもし聞いたなら、シェンは笑っただろう。琥珀王は子どもっぽいのではなく、正真正銘子どもなのだから。
「私は先代魔王の側近であり、今は琥珀王に仕えるベリアルと申します。我が君の命をお伝えいたしましょう。森人と魔族を従える主は、森への人間の出入りを望んでいません。お分かりですか?」
言葉は丁寧だが、ベリアルの足元には騎士団が一山倒れていた。きっちり山に積んで上に立つ魔族は、くすりと笑う。魔王の恋人は妖艶な仕草で前髪をかき上げた。
「もし踏み入れれば、この程度では済ましませんよ」
この程度と表現された騎士団は、手足を折られて身動きできずに呻く。かなりの重傷だった。ふわりと浮き上がったベリアルがぱちんと指を鳴らす。骨折が強引に治療された。ぐああぁああ! ぎゃぁあああ! 屈強な男達の叫び声が木霊する。
青ざめた宰相や貴族に隠れる国王が、震えながら口を開いた。
「わかった。手は出さん……だから」
「ええ。約束を守っていただく間は、こちらから攻撃する理由はないと思いますよ。もちろん、我が君が機嫌を損ねれば話は別ですが」
遠回しに琥珀王の気分次第と匂わせた。これで嘘を吐かずに済む。この辺の言い回しが、ベリアルの十八番だった。約束したように振舞いながら、実際は抜け道を用意する。ツノの時のように焦っていなければ、ベリアルは有能な交渉担当だった。
「くれぐれも、約束をお忘れなきよう」
悪魔との約束は契約だ。そう言い切って釘を刺し、ベリアルは美しい笑みを残して消えた。残ったのは震える王侯貴族と、無理やり骨折を力技で治された騎士団のみ。手足の骨折は修復されたが、心をべっきり折られた騎士団はしばらく役に立たないだろう。
「新たな魔王かと思ったが……魔王よりマシか」
宰相の呟きが風に攫われ、誰も返事をせぬまま解けて消えた。
「わっはっは! 我は琥珀王の使者であるぞ」
大きな声で琥珀王の名を叫びながら、ドラゴンはその尻尾で王宮を壊していく。まだ新しい新興国家は、建築中の王宮を完膚なきまでに破壊された。ぐしゃぐしゃの瓦礫の上に舞い降りた黒竜は、のそりと身を伏せる。
騎士と並ぶ国王はガタイのいい筋肉男だった。僕がいたら脳筋と評したかもしれない。世の中すべて筋肉で解決するタイプだが、さすがに筋肉でドラゴンに勝てなかった。
「使者殿がなぜ我が城を壊す」
「城? 悪い、積み木を見ると崩したくなるのだ」
まったく悪びれないシェンは、堂々と他人の家を貶した。がははと口を開いて笑い、勢い余ってブレスの炎がちょっと零れ出る。慌てて避ける人間を前に、肩を竦めて口を閉じた。
「琥珀王からの伝言だ。人間は森を切り開くべからず。もし禁を破れば、人間すべてを我らが滅ぼすであろう、と」
「我ら、とは?」
「琥珀王の臣下である森人や魔族だな。古龍である我も同様だ。王は我の力を大きく凌ぐ実力者ゆえ、逆らおうと思うなよ」
壊された建物を見て溜め息を吐き、国王は静かに頷いた。魔王より残虐で子どもっぽい王が君臨したらしい。口に出さなかった本音をもし聞いたなら、シェンは笑っただろう。琥珀王は子どもっぽいのではなく、正真正銘子どもなのだから。
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